グレースケールが「傑出した成功事例」と高評価|ハイパーリキッド(HYPE)を中級者向けに徹底分析

分散型永久先物取引所(DEX)のハイパーリキッド(Hyperliquid)が、いま暗号資産業界で最も注目されるプロジェクトの一つになっている。ネイティブトークンのHYPEは2026年5月31日に最高値となる約69.97ドルを記録し、時価総額は170億ドルを超える水準まで拡大した。背景には、米資産運用大手グレースケールがハイパーリキッドを「現代のデジタル資産業界における傑出した成功事例」と高く評価したリサーチレポートの公開、そして米国における永久先物(パーペチュアル)解禁という規制面の追い風がある。

本記事では、ある程度の暗号資産知識を持つ中級者の読者に向けて、グレースケールのレポート内容を起点に、ハイパーリキッドが急成長を遂げた構造的な要因、HYPEトークンの経済モデル、総合金融プラットフォームへの進化、そして見落としてはならないリスク要因までを掘り下げて解説する。

グレースケールが指摘したハイパーリキッドの実力

グレースケール・リサーチは2026年5月27日に公開したレポート「Hyperliquid Breaks the Mold(ハイパーリキッドは既存の枠組みを打ち破る)」のなかで、ハイパーリキッドを「ブロックチェーンベース金融の未来像」と位置づけた。

同レポートが示した具体的な数字は、その評価の根拠を裏付けている。ハイパーリキッドは2025年に約2.9兆ドルもの永久先物取引高を記録し、年間で約8億ドルの手数料収益を生み出した。建玉(オープンインタレスト、OI)は現在約70億ドルに達しており、これは永久先物取引所として世界の上位3〜4位に相当する規模だ。中央集権型取引所(CEX)も含めたランキングのなかで、分散型のDEXがこの位置につけているという事実そのものが、業界にとって画期的な出来事といえる。

注目すべきは手数料の低さだ。グレースケールの試算によると、ハイパーリキッドの取引手数料はスポットで約5ベーシスポイント(bp、0.05%)、先物で約2bp。これに対し中央集権型取引所の平均はスポットで約15bp、先物で約4bpとされる。低コストでありながらCEXに匹敵する執行速度と流動性を提供している点が、トレーダーを惹きつける大きな理由になっている。

ハイパーリキッドとは何か

ハイパーリキッドは2023年8月にパブリックローンチした、永久先物取引に特化した分散型取引所であり、独自のレイヤー1ブロックチェーンでもある。最大の特徴は、大手CEXと遜色のない高速な注文執行、厚い流動性、24時間取引環境、洗練されたユーザーインターフェースを実現しながら、同時にDeFi(分散型金融)の基本原則であるセルフカストディ(資産の自己管理)と高い透明性を維持している点にある。

従来のDEXは「ユーザーが自分の資産を管理できる代わりに、取引体験はCEXに劣る」というトレードオフを抱えてきた。ハイパーリキッドはオンチェーンのオーダーブック方式を採用することで、このトレードオフを大きく縮小し、「CEX並みの使い勝手とDeFiの非中央集権性」を両立させた。ローンチからわずか3年足らずで業界最上位クラスへと駆け上がった背景には、この設計思想がある。

急成長を支えた5つの構造的要因

グレースケールは、ハイパーリキッドが急成長した背景として主に5つの要因を挙げている。重要なのは、これらが個別に機能したのではなく、互いに連動して強力なネットワーク効果を生み出した点だ。

  1. プロダクトの特化:永久先物取引を中核に設計し、トレーダーの需要を最優先することで明確な差別化を実現した。
  2. 市場選定の的確さ:トレーダー視点で、取引量の少ないニッチな資産や勢いの強い資産をいち早く提供してきた。
  3. プラットフォームの柔軟性:「HIP-3」フレームワークを通じて、サードパーティが独自の永久先物市場を構築できるオープンな市場創造モデルを採用した。
  4. 普及のインセンティブ:ビルダーコードとフロントエンドモデルにより、外部サービスが同一の流動性基盤へユーザーを誘導するインセンティブを設計した。例えばPhantomウォレットはこの仕組みを活用し、累計1,970万ドルの手数料収入を獲得している。
  5. コミュニティ重視:HYPEトークンを実際の利用者を中心に配布することで、ユーザーや開発者との強固な信頼関係を築いた。

グレースケールはこの好循環を、「流動性は流通を促し、流通は取引量を増加させ、取引量はプロトコルの経済基盤を強化する」と表現している。流動性・流通・開発者インセンティブが三位一体となって競争優位性を維持している構造こそが、ハイパーリキッドの本質的な強みといえる。

HYPEトークンの経済モデル

近年の大型暗号資産プロジェクトとしては極めて異例なことに、ハイパーリキッドはベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を一切行っていない。ネイティブトークンのHYPEは、総供給量の約30%が初期ユーザーやエコシステム貢献者に直接エアドロップされた。その結果、初期保有者層は製品を理解しているトレーダーやコミュニティメンバーで構成され、コミュニティとの信頼関係の構築につながった。VCの大量保有分が後から市場に放出される(売り圧力になる)という、多くのプロジェクトが抱える構造的な弱点を回避できたことの意味は大きい。

「アシスタンスファンド」によるバイバック&バーン

HYPEの価値は、取引手数料と機能的な有用性から生じる。ハイパーリキッドは、DEXにおける取引手数料の大部分を自動的にHYPEの買い戻し(バイバック)に充てる「アシスタンスファンド」という仕組みを採用している。手数料が同ファンドに充てられると、その資金でHYPEが買い戻され、買い戻されたHYPEはバーン(焼却)される。バーン量が新規発行量を上回るため、HYPEの流通量は時間とともに減少する傾向にある。取引が活発になるほど買い戻し圧力が高まり、供給が絞られるという、収益と価格を結びつける設計になっている。

エコシステム内でのHYPEの主な用途は以下の通りだ。

  • ステーキング:ネットワークセキュリティ(バリデータ)への貢献と手数料割引
  • ガス代の支払い:スマートコントラクト環境「HyperEVM」での手数料
  • 担保:HIP-3市場を展開する際の担保(最低50万HYPEのステーキングが必要)

HIP-3が拓く「総合金融プラットフォーム」への進化

現在のハイパーリキッドの収益は依然として取引手数料が大半を占めるが、グレースケールは同プラットフォームが複数分野で競争力を持つ「総合金融サービスプラットフォーム」へと進化しつつある点を最も有望な要素として挙げている。

新機能は通常、ハイパーリキッド改善提案(HIP)を通じて導入される。特徴的なのは、実際の製品開発を担うのがハイパーリキッドのコアチームではなく、サードパーティの開発者だという点だ。HIP-3では、開発者が株式、商品(コモディティ)、インデックスといった暗号資産以外の資産を含む新たな永久市場を構築できる。

その存在感は実データにも表れている。2026年2月の銀価格急騰時には1日あたりの出来高が40億ドルを超え、中東情勢が緊迫した4月9日にはHIP-3の原油永久先物の24時間取引高が40億ドルを突破し、一時的にビットコイン(BTC)先物を上回った。さらに公式ライセンスを取得したS&P 500の先物契約も、週末を含むリアルタイムで取引できるようになっている。レポートによれば、HIP-3の累計取引高はローンチ以来2,300億ドルを超え、現在は140種類以上の取引ペアが稼働している。加えてHIP-4では、予測市場に類似した「アウトカム市場」への展開も進む。

規制・機関投資家の追い風

HYPEの直近の急騰は、グレースケールの評価だけが理由ではない。複数の規制・機関面の好材料が重なった。

まず米商品先物取引委員会(CFTC)が2026年5月、KalshiEXのビットコイン無期限先物を先物契約として承認し、Coinbaseに対しても一定の永久先物提供を認める姿勢を示した。これにより米国内でのパーペチュアル取引が事実上解禁され、永久先物に特化したハイパーリキッドの追い風になるとの期待が高まった。また、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)のスプレッチャーCEOが、ハイパーリキッドと双方向で協議中であり「ナスダックより大規模」と評価したことも話題を呼んだ。さらにグレースケール自身が、HYPEを対象とした投資ファンドの立ち上げに向けて約1.15億ドル規模の出資を交渉中と報じられている。規制と伝統金融の双方からの接近が、機関投資家マネーの流入期待を支えている。

見落としてはならないリスク要因

一方で、グレースケールのレポートはHYPEへの投資に関して明確なリスク要因も指摘している。強気材料が並ぶなかでも、これらを冷静に把握しておくことが重要だ。

  • 高いボラティリティ:HYPEの年率換算ボラティリティは約80%と、ビットコイン(約40%程度)を大きく上回る。値動きの激しさは相応のリスクを伴う。
  • バリデータの集中:ネットワークは比較的中央集権的な構造を残しており、クローズドソースのソフトウェアで運用されている点が分散性の観点で懸念される。
  • 規制に左右される成長余地:特に米国で規制緩和が進まない場合、利用できる地域が限定され、成長が抑制される可能性がある。直近の追い風が逆風に転じるシナリオも想定しておく必要がある。

まとめ

ハイパーリキッドは、「CEX並みの取引体験」と「DeFiの非中央集権性」という、これまで両立が難しいとされてきた二つの価値を高い次元で実現し、ローンチから3年足らずで永久先物取引所として世界最上位クラスへと成長した。VCに頼らないコミュニティ主導のトークン配布、手数料をHYPEの買い戻し・バーンに還元する経済モデル、そしてHIP-3による外部開発者へのオープンな市場創造——これらが連動して生み出すネットワーク効果が、競争優位の源泉になっている。

グレースケールが「ブロックチェーンベース金融の未来像」と評価し、CFTCの規制緩和やICEとの協議、機関投資家ファンドの組成といった追い風も重なるなか、ハイパーリキッドは単なるDEXの枠を超えた「総合金融プラットフォーム」へと進化しつつある。ただし、高いボラティリティやバリデータの集中、規制依存といったリスクは依然として残る。今後の成長を見極めるうえでは、HIP-3を通じた新市場の拡大ペースと、米国を中心とした規制環境の行方が重要な観察ポイントになるだろう。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言や特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、投資判断はご自身の責任で行ってください。記載のデータは2026年6月1日時点の情報に基づいています。

参考:グレースケール・リサーチ「Hyperliquid Breaks the Mold」、CoinPost

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