9月2日夜、ビットコイン(BTC)は7万6,000〜7万7,000ドル台(約1,230万円)で軟調に推移している。相場を直撃したのは、日中のアジア時間に一段と鮮明になった「地政学ショック」だ。米国が前日にイランへ大規模な空爆を実施し、イランがヨルダン・UAE・クウェートの米同盟国へミサイルとドローンで報復。原油はブレント原油が1バレル95ドル台と5週間ぶりの高値に急伸し、米10年債利回りは約3年ぶりの高水準へ駆け上がった。この逆風でアジア株は総崩れとなり、日経平均は2.9%安、韓国KOSPIは約4%安と急落した。暗号資産も株安・金利高・原油高の三重苦から逃れられず、8万ドル回復シナリオは一段と後退している。夜の今日は、日中のアジア市場の急落と、本日発表された米ISM製造業指数、そして世界の大手金融機関が動いたステーブルコイン新構想を軸に整理する。
主要マーケット動向:イラン報復でアジア株総崩れ、BTCは7万6,000ドル台へ
ビットコインは9月2日、上値の重い展開が続いている。米東部時間9月2日の寄り付きは7万7,395.89ドルと前日比1.5%安で始まり、午前7時13分(日本時間9月2日20時13分)時点では7万6,597.13ドルまで水準を切り下げた(出典:Yahoo Finance)。1ドル=約160円で換算すると1BTCはおよそ1,225万円となる。国内報道でもBTCは7万6,829ドル前後、24時間で約1.1%安と伝えられており、水準はおおむね一致している(出典:JinaCoin)。
イーサリアム(ETH)は2,370〜2,420ドル前後(約38万円)で推移した。9月2日の寄り付きは2,417.66ドルで前日比2.0%安、その後2,373.76ドルまで下落し、BTC以上に下げ幅を広げている(出典:Yahoo Finance)。年初来ではBTCが前年同月比約29%安、ETHが約44%安と、依然として大きな調整の途上にある一方、直近1カ月ではBTCが約23%高、ETHが約31%高と、8月の戻り局面の貯金は残っている。
背景にあるのは、日中のアジア市場を覆った売りだ。MSCIのアジア太平洋株指数(日本を除く)は2%安、日経平均株価は2.9%安、韓国KOSPIは約4%安と軒並み急落した(出典:Yahoo Finance)。米国のイラン空爆と、これに対するイランの報復攻撃を受け、ブレント原油は95ドル台、米WTI原油は90ドル台へ上昇。ホルムズ海峡の原油輸送への懸念が、インフレ・金利の上振れ観測を再燃させた。リスク資産全般に売りが波及するなか、暗号資産も連れ安となった。
重要ヘッドライン
①米国のイラン空爆で原油95ドル・米長期金利は約3年ぶり高水準
前日、米国がイランへ大規模な空爆を実施し、イランはヨルダン・アラブ首長国連邦(UAE)・クウェートの米同盟国へミサイルとドローンで報復した。ブレント原油は0.9%高の1バレル95.45ドルと5週間ぶりの高値をつけ、米10年債利回りはほぼ3年ぶりの高水準へ上昇した(出典:Yahoo Finance、TheStreet)。エネルギー価格の上昇は供給側からインフレを押し上げる典型的な要因であり、利上げ観測を一段と補強する。金利を生まない暗号資産にとっては、原油高・金利高の組み合わせが直接的な逆風となる。米株先物も軟調に推移し、夜の米国市場の重い滑り出しが見込まれる。
②米ISM製造業景況指数は54.6、価格指数71.1で高止まり
朝の記事で予習した米8月のISM製造業景況指数(PMI)が発表された。結果は54.6%で、7月の55.6%から1ポイント低下したものの、8カ月連続で好不況の境目となる50を上回り、製造業の拡大が続いていることを示した(出典:PR Newswire(ISM公式リリース)、FXStreet)。注目は価格指数(Prices Index)で、7月と同じ71.1%と高止まりが続き、原材料コストの上昇圧力が根強いことを裏づけた。新規受注指数は53.7%(前月56.7%)、雇用指数は51.2%(同52.8%)といずれも鈍化。景気は底堅い一方でインフレ圧力が残るという内容は、9月利上げ観測を後押しする材料と受け止められた。
③米ビットコイン現物ETF、9月1日に約2.4億ドルの純流出
米国の現物ビットコインETFは9月1日、合計で約2億3,650万ドル(236.5百万ドル)の純流出を計上し、前営業日の約2億1,670万ドルの純流入から一転してマイナスとなった。内訳はブラックロックのIBITが約2億120万ドルの流出と売り越しを主導し、フィデリティのFBTCが約4,370万ドルの流出、ビットワイズのBITBのみが約840万ドルの純流入だった(出典:HedgeCo(Farside Investorsデータ)、Farside Investors)。8月は月間で約30億ドルの純流入と好調だっただけに、月替わりで資金が流出に振れた点は、金利上昇局面での機関投資家の慎重姿勢を映している。ETFフローは9月相場の方向感を占う重要なバロメーターだ。
④リミックスポイントがアルトコイン全売却、保有をBTCに集中
国内では上場企業の動きが目立った。東証スタンダード上場のリミックスポイント(3825)は9月2日、保有していたアルトコイン4銘柄(ETH・SOL・XRP・DOGE)を前日9月1日にすべて売却したと発表した。売却総額は約8億7,881万円で、約1億1,778万円の売却益が発生。これにより同社の保有暗号資産はビットコインのみ(約1,506BTC)となった(出典:CoinPost、あたらしい経済)。同社は市場環境や各資産のリスク・リターンを踏まえ、今後はBTCを中心とした保有・運用方針に転換するとしている。企業の暗号資産保有が「選択と集中」へ向かう象徴的な事例として注目される。
テーマ深堀り:世界21金融機関がドル建てステーブルコイン新会社へ ─ MUFGも参画
地政学リスクで市場が揺れる裏側で、暗号資産の「制度化」を象徴する大きな一手が打たれた。9月1日、世界の大手金融機関21社が、ドル建てステーブルコインの発行を支える新会社を2026年後半に設立することで合意したと発表した(出典:CoinDesk、Blockhead)。
参加するのは、北米ではバンク・オブ・アメリカ、シティ、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、フィデリティ、キャピタル・ワン、PNC、カナダのスコシアバンクとTDバンク、資産運用のウィズダムツリー。欧州ではサンタンデール、BBVA、コメルツ銀行、クレディ・アグリコル、ドイツ銀行、ロイズ、ラボバンク、UBSが名を連ねる。そしてアジアからは日本のMUFG(三菱UFJ銀行)が、中東からはシリウス、アフリカからはスタンダード銀行が加わる、まさにグローバル連合だ。
新会社は世界規模で事業を展開し、まずドル建てステーブルコインを2027年前半に市場投入することを目指す。その後はユーロを最優先に、G7通貨へと対応を広げる計画で、米国のGENIUS Act(ステーブルコイン法)とEUのMiCAへの準拠を前提とする。用途は国境を越えた送金やデジタル資産の決済など、ホールセール・機関・リテールの幅広い領域を想定している。
日本の読者にとって重要なのは、国内最大の金融グループであるMUFGがこの枠組みに名を連ねた点だ。金融庁が「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設し、円建てステーブルコインの制度整備を進めるなか、邦銀がグローバルなドルステーブルコイン構想の当事者となる意義は小さくない。銀行主導の規制準拠型ステーブルコインが実現すれば、既存のUSDT・USDCが握る市場に、伝統的金融の信用力を武器にした新たな競合が加わることになる。地政学ショックで足元の価格が揺れる一方、暗号資産インフラの土台は着実に厚みを増している。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派は、8月に約30億ドルの資金を集めた米ETFの実績や、大手21行によるステーブルコイン参入を「機関投資家マネーの本格流入の前触れ」と評価する。地政学リスクによる調整はむしろ健全な押し目であり、金利の逆風が和らげば、制度整備を追い風に再び水準を切り上げられるとの見方だ。
一方の弱気派は、目先のリスクを重く見る。9月16日のFOMCで利上げが決まれば、金利を生まない暗号資産の相対的な魅力はさらに低下する。原油高がインフレを押し上げ、米長期金利が3年ぶりの高水準にある現状では、株式との連動を通じた売り圧力が続きやすい。ETFが流出に転じた点も、短期的な需給の弱さを示すと警戒する。強弱双方が指標とFOMCの結果を見極めようとしており、当面は方向感の出にくい神経質な相場が続きそうだ。
今後の注目イベント・指標
目先の最大の焦点は、9月4日発表の米8月雇用統計だ。労働市場の強さはFedの利上げ判断を左右する。続く中旬にはCPI(消費者物価指数)、そして9月16日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が控える。FedWatchは9月利上げ確率を約66%と織り込んでおり、結果次第で相場が大きく振れる可能性がある。加えて、米国とイランの軍事衝突の行方と原油価格、米ビットコインETFの資金フローの動向も引き続き注視したい。
まとめ
本日夜は、米国のイラン空爆と報復でアジア株が急落し、原油高・金利高を背景にBTCが7万6,000ドル台へ軟化した。米ISM製造業指数は価格指数の高止まりで利上げ観測を補強し、ETFは9月1日に純流出へ転換。一方、MUFGを含む21行のステーブルコイン新構想やリミックスポイントのBTC集中など、制度・企業の動きは前進を続けている。地政学とマクロ指標に警戒しつつ、9月4日の雇用統計とFOMCを見極めたい。
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免責事項:本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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