「ビットコインは買いました。次はイーサリアムですか」
30代の会社員の方から、そう聞かれたことがあります。ランキングの2位だから次はこれ、という順番の発想でした。
気持ちはわかります。ただ、この2つは順位が隣というだけで、そもそも違うものを目指して作られています。同じ「暗号資産」という箱に入っているせいで、つい並べて比べてしまうのですが。
ビットコインは「お金」、イーサリアムは「土台」
ざっくり言うと、ビットコインは価値を運ぶことに特化しています。送る、受け取る、保管する。それ以上のことは、あまりできません。できないように作られている、という言い方のほうが正確かもしれません。シンプルさが安全性につながるという設計思想です。
イーサリアムは違います。2015年に動き始めたこのネットワークは、プログラムを動かせる土台として作られました。「スマートコントラクト」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。契約の条件をプログラムとして書いておくと、条件が満たされた瞬間に自動で実行される。人を介さずに、です。
この上に、取引所やら貸し借りの仕組みやらNFTやらが載っています。イーサリアムそのものというより、その上で動くものの総体が価値の源泉になっている。OSとアプリの関係に近いでしょうか。
だからETHという通貨は、「土台を使うための手数料を払う燃料」という性格を持っています。実際、ネットワーク上でガス代と呼ばれる手数料はETHで支払われます。
ビットコインそのものの仕組みについては、こちらで詳しく整理しています。
▶ ビットコイン(BTC)とは|仕組み・2,100万枚の上限・2026年10月時点の市場データをCFPが解説
発行上限が、ない
ここは、ビットコインとの大きな違いです。
ビットコインには2,100万枚という上限があります。イーサリアムにはありません。2026年10月4日時点の発行済み枚数は約1億2,210万枚ですが、これ以上増えないという保証はない。
では無制限に薄まるのかというと、そう単純でもないんです。2021年以降、手数料の一部が消却(バーン)される仕組みが入りました。ネットワークがよく使われる時期には、新規発行より消却のほうが多くなることもあります。
結果として、発行量は使われ方次第で増えたり減ったりする。固定ではないけれど、無節操に増えるわけでもない。この「条件次第」という性質をどう評価するかは、人によって割れるところです。
私自身は、上限がないことを一方的な欠点とは見ていません。ただ、「2,100万枚で固定」というビットコインのわかりやすさに比べると、説明が一段ややこしくなるのは確かです。
いまの数字(2026年10月4日時点)
| 項目 | イーサリアム | (参考)ビットコイン |
|---|---|---|
| 価格 | 約2,694ドル | 約85,046ドル |
| 時価総額 | 約3,290億ドル | 約1兆7,088億ドル |
| 市場シェア | 約11.3% | 約59.0% |
| 発行上限 | なし | 2,100万枚 |
| 過去30日 | +7.5% | +5.3% |
| 過去1年 | −40.3% | −30.6% |
直近30日ではイーサリアムのほうが強い。けれど1年で見ると、下げ幅はビットコインより大きい。
これは偶然ではなく、構造的な傾向です。市場にお金が流れ込む局面ではイーサリアムのほうが伸びやすく、お金が引く局面ではより深く下げる。値動きの振れ幅が大きい、ということです。ビットコインより「よく動く」資産だと思っておいたほうがいいでしょう。
ステーキングという、もうひとつの顔
イーサリアムには、保有しているだけで報酬が受け取れる仕組みがあります。ステーキングです。
ネットワークの維持にETHを預けて協力すると、その対価として新たなETHが配られる。預金の利息に似ていますが、中身はかなり違います。
違いとして、相談の場でお伝えしているのは次のあたりです。
まず、元本にあたるETH自体の価格が動きます。年に数%の報酬を受け取っても、ETHが3割下げれば全体ではマイナスです。利回りの数字だけを見て判断すると、見誤ります。
それから、預けている間は自由に引き出せない期間が生じることがあります。急に現金が必要になったときに動かせない、という事態は想定しておきたい。
そして税金です。ステーキング報酬を受け取った時点で、その時価が所得として認識されるのが原則の扱いとされています。売っていないのに課税される。ここは見落とされやすく、確定申告の時期になって慌てる方を何人も見てきました。
仕組みとしては面白いのですが、「利回りが付くからお得」という理解だけで始めるのは、おすすめしません。
ETFの差が、そのまま立ち位置の差かもしれません
米国の現物ETFの純資産総額を比べると、ビットコインが約1,111億ドルなのに対し、イーサリアムは約146億ドル。およそ7.6倍の開きがあります。
時価総額の差が約5.2倍であることを考えると、ETFでの差はそれよりさらに大きい。機関投資家のお金は、まだビットコインに偏っているということでしょう。
この差が今後縮まるのか、それとも「ビットコインは資産、イーサリアムは技術」という住み分けで固定するのか。正直、私にもわかりません。わからないことは、わからないと言っておきたいと思います。
税制は、ビットコインと同じ道を進みます
2028年1月1日以後の取引から、申告分離課税20.315%が適用される見込みです。イーサリアムも国内の登録取引所で広く扱われていますから、対象となる「特定暗号資産」に含まれると見ていいでしょう。
ただし、ひとつ注意があります。イーサリアムはDeFiやステーキングで使われることが多い銘柄です。DEX(分散型取引所)で直接売却・交換した場合は分離課税の対象外とされる見通しなので、使い方によっては20%の恩恵を受けられないケースが出てきます。
「改正を待って売ろう」と考えるなら、どこで売るかまで含めて設計しないと意味がない。この点はビットコイン以上に効いてきます。
▶ 【2026年9月最新】暗号資産の分離課税20%はいつから?特定暗号資産の要件と改正の全体像
おわりに
冒頭の方には、「2位だから次」ではなく「何に投資したいのか」で決めましょう、とお伝えしました。
価値の保存手段としての通貨に賭けたいのか、プログラムが動く土台の将来性に賭けたいのか。この2つは、同じ資産クラスに見えて、期待していることがまるで違います。両方持つという選択ももちろんありますが、だとしても「なぜ両方なのか」は自分の言葉で言えたほうがいい。
順位表を上から順に買っていくのは、投資というより収集に近いのかもしれません。少し厳しい言い方になりましたが、そう感じています。
情報の出典(2026年10月4日確認)
- 価格・時価総額・流通枚数・市場シェア・ETF純資産総額:CoinMarketCap
- 税制:金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(2026年7月15日成立、7月23日公布)、所得税法等の一部を改正する法律(2026年3月31日成立)
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証されない資産です。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。ステーキング報酬の課税関係および税制改正の取り扱いについては、今後の政省令等により変更される可能性があります。個別の税務判断については税理士にご相談ください。


