「ビットコインって、結局なんなんですか」
先日の相談で、60代の男性からそう聞かれました。お孫さんに勧められて口座だけは開いた、でも中身がわからないまま放置している、と。
私は逆に質問を返しました。何がいちばん気持ち悪いですか、と。しばらく考えて、こう返ってきました。「誰が価値を保証しているのか、わからない」
いい質問だと思いました。たぶん、ここがいちばんの入口です。
ビットコインには「発行する人」がいない
円には日本銀行があります。ドルにはFRBがある。発行量を決める主体がいて、その主体の信用が通貨の価値を支えています。
ビットコインには、それがありません。2008年に「サトシ・ナカモト」という名義で公開された論文があり、翌2009年に動き始めた。設計図は公開されていて、誰でも読めます。運営会社もなければ、本社もない。
では何が価値を支えているのか。ひとことで言えば、ルールが変えられないという事実です。
世界中のコンピュータが同じ台帳を共有していて、取引はその台帳に書き込まれます。書き換えようとすれば、参加者の過半数を押さえる必要がある。理論上は可能ですが、それだけの計算資源を集めるコストが、得られる利益を上回るように設計されています。「誰も信用しなくていい仕組み」を、信用の代わりに置いた。そういう発想です。
これが腑に落ちるかどうかで、ビットコインへの感じ方はかなり変わると思います。
2,100万枚という、動かせない上限
ビットコインの発行上限は2,100万枚と決められています。これ以上は、どうやっても増えません。
2026年10月4日時点で、すでに20,093,128枚が発行済みです。上限に対して、およそ95.7%。残りは90万枚ほどしかありません。
ただし、残りが数年で出尽くすわけではないんです。新規発行のペースはおよそ4年ごとに半分になる仕組み(半減期)になっていて、最後の1枚が掘り出されるのは2140年ごろと計算されています。あと100年以上かけて、ちびちび出てくる。
この「増やせない」という性質が、金(ゴールド)になぞらえられる理由です。中央銀行が刷ろうと思えば刷れる法定通貨とは、そこが違う。
もっとも、希少だから値上がりするとは限りません。欲しい人がいなくなれば、希少なまま値下がりします。このあたり、「限定品だから価値がある」という感覚とは少し違う話だと、私は説明するようにしています。
いまの数字を、いちど置いておきます
2026年10月4日時点のデータです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 価格 | 約85,046ドル |
| 時価総額 | 約1兆7,088億ドル |
| 暗号資産全体でのシェア(ドミナンス) | 約59.0% |
| 流通枚数 | 20,093,128枚 / 上限2,100万枚 |
| 過去30日の騰落 | +5.3% |
| 過去1年の騰落 | −30.6% |
目を引くのは、30日ではプラスなのに1年ではマイナスという点でしょうか。2025年秋の高値から見れば、まだ戻りきっていない。短い期間の数字だけを見ていると、この手の「どこから見るか」で印象がひっくり返ります。
暗号資産市場全体の時価総額は約2兆9,000億ドル。そのうちの6割近くがビットコインひとつで占められています。数千種類あると言われる銘柄のなかで、これは相当に偏った構造です。
ETFが変えたこと、変えなかったこと
米国の現物ビットコインETFの純資産総額は、2026年10月4日時点で約1,111億ドルに達しています。
この数字の意味は、単に「お金が入った」ことだけではありません。年金基金や保険会社のように、規約上ETF以外は買えない投資家が、ビットコインに触れられるようになった。入口が制度的に開いた、ということです。
ただ、過度な期待も禁物だと思っています。ETFに資金が入れば必ず上がるわけではなく、実際に流出が続いた局面も何度もありました。ETFは需要の蛇口を増やしただけで、蛇口から出る量を保証するものではない。
それと、ETFを通じて買う場合と現物を自分で保有する場合では、税金の扱いも、手数料の構造も変わります。ここは混同されやすいところです。
日本の税金は、2028年に大きく変わる見込みです
現在、国内の個人が暗号資産で得た利益は雑所得・総合課税で、住民税を含めると最大55.945%の税率がかかります。株式の20.315%と比べると、かなり重い。
これが変わります。2026年7月15日に成立した金商法等改正法を受けて、申告分離課税20.315%が適用される見込みです。適用開始は2028年1月1日以後の取引から、というのが現時点の有力な見通しです。
ただし「すべての暗号資産が20%になる」という話ではありません。対象は「特定暗号資産」に限られ、海外取引所にしかない銘柄やDEXでの直接売却は、引き続き総合課税のままとなる見通しです。ビットコインは国内の登録取引所で広く扱われていますから、まず対象に入ると見ていいでしょう。ただ、どこで売るかによって扱いが変わる点は押さえておいてください。
詳しくはこちらで整理しています。
▶ 【2026年9月最新】暗号資産の分離課税20%はいつから?特定暗号資産の要件と改正の全体像
買う前に、ひとつだけ考えてほしいこと
相談の場でよく使う問いかけがあります。
「半分になっても、生活は変わりませんか」
ビットコインは、1年で3割下げることも、2倍になることもある資産です。過去1年で−30.6%という数字が、まさにそれを示しています。この値動きに耐えられる金額かどうかが、銘柄選びより先に来る話だと思っています。
資産全体の何%までなら、と聞かれることもあります。正解はありませんが、「なくなっても人生設計が崩れない範囲」というのが、私の答えです。人によってそれは3%かもしれないし、15%かもしれない。年齢や家族構成、収入の安定度で変わります。
もうひとつ。生活防衛資金と教育資金には手をつけないこと。これは何度でも言います。
おわりに
冒頭の男性には、こうお伝えしました。「わからないまま持っているのがいちばん怖いので、わかってから、持つかどうか決めましょう」と。
結局その方は、ごく少額だけ残して、あとは解約されました。それでいいと思っています。理解したうえで降りるのは、立派な判断です。
逆に、仕組みが腑に落ちて、値動きの幅も受け入れられるなら、ポートフォリオの一部に入れることは十分あり得ます。大事なのは、どちらを選ぶにしても、自分で決めたという感覚を持てることではないでしょうか。
もし次にイーサリアムが気になっているなら、こちらもあわせてどうぞ。同じ暗号資産でも、設計思想がまるで違う資産です。
▶ イーサリアム(ETH)とは|ビットコインとの違い・ステーキング・2026年10月時点の立ち位置をCFPが解説
情報の出典(2026年10月4日確認)
- 価格・時価総額・流通枚数・ドミナンス・ETF純資産総額:CoinMarketCap
- 税制:金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(2026年7月15日成立、7月23日公布)、所得税法等の一部を改正する法律(2026年3月31日成立)
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証されない資産です。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。また、税制の取り扱いについては今後の政省令等により変更される可能性があります。個別の税務判断については税理士にご相談ください。


