暗号資産の年内やることリスト|居住地国の届出は12月31日まで、2026年分の損失は繰り越せない【CFP解説】

暗号資産の年内やることリスト|居住地国の届出は12月31日まで、2026年分の損失は繰り越せない【CFP解説】 税金・確定申告

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先月の相談で、50代の会社員の方からこう聞かれました。「取引所から居住地国を届け出てくださいってメールが来たんですが、あれ無視したらどうなるんですか」。正直に言うと、その場では「期限が今年いっぱいなので出しておいたほうがいい」としか答えられませんでした。帰ってから調べ直して、思ったより重い話だと気づきました。

10月に入りました。暗号資産を持っている人にとって、今年の残り3か月は少しだけ特別です。理由は3つあって、どれも「年を越すと取り返しがつかない」種類のものだからです。順に見ていきます。

① 居住地国の届出書は2026年12月31日まで

いちばん見落とされやすいのがこれです。OECDが策定した暗号資産等報告枠組み(CARF)に対応するため、日本では2026年1月1日以後の取引から、暗号資産交換業者が利用者の居住地国などの情報を税務署に報告する制度が始まっています。国税庁の資料では、2026年分の取引を2027年4月30日までに報告し、外国税務当局との初回情報交換は2027年に行うとされています。

ここで利用者側に発生するのが「新規届出書」の提出義務です。氏名・住所・居住地国、そして外国の納税者番号(日本のマイナンバーは含みません)を、取引している交換業者に出す。日本に住んでいる人も対象です。「非居住者の情報交換のための制度」という名前なので自分は関係ないと思いがちですが、居住地国が日本であることを届け出る、という形で全員が関わります。

期限は、2025年12月31日時点ですでに口座を持っていた人は2026年12月31日まで。2026年以降に新しく口座を作る人は、口座開設の過程で提出することになります。

出さないとどうなるか。国税庁のFAQには、提出しない場合や偽りの記載をした場合は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と書かれています。もっとも現実的に効いてくるのは実務面でしょう。たとえばbitFlyerは、期間中に提出がない場合、2027年1月1日よりサービスの利用に制限が生じる可能性がある、と案内しています。Coincheckも新規口座については、届出書が出されないと口座開設が完了せず取引を始められないとしています。

年末年始に売買したくなったとき口座が動かない、という事態は避けたいところです。取引所からのお知らせメールを探して、まだ出していなければ今週のうちに済ませてしまうのが無難だと思います。所要時間は数分です。複数の取引所を使っている人は、全部に出す必要がある点に注意してください。

② 2026年分の損益は、年内に固まってしまう

次に損益の話です。ここは少し込み入っているので、結論から書きます。2026年分の暗号資産の利益は、今のルール(雑所得・総合課税)で課税されます。よく話題になる「20%の分離課税」は、まだ始まっていません。

整理しておくと、所得税法等の一部を改正する法律は2026年3月31日に成立・公布され、暗号資産を金融商品取引法に移す改正法も2026年7月15日に成立、7月23日に公布されました。ただし分離課税が適用されるのは「金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後」の取引です。金商法改正の施行は公布から1年以内に政令で定める日とされており、2027年中の施行が見込まれています。そこから逆算すると、分離課税の適用は2028年1月1日以後の取引から、というのが現時点の見通しです。施行日の政令が出るまでは確定ではありません。くわしくは分離課税20%はいつから?特定暗号資産の要件と改正の全体像に書きました。

つまり2026年分と2027年分は、従来どおり雑所得です。これが何を意味するか。雑所得の損失は、国税庁タックスアンサーNo.2250のとおり他の所得と損益通算できません。翌年への繰越控除もありません。今年出した損失は、今年の利益とぶつけるしか使い道がないということです。

相場を見ると、この点は他人事ではありません。10月8日時点でビットコインは約8万3,065ドル(1ドル158円換算で約1,312万円)、1年前比で約32%下落しています。イーサリアムは約2,566ドルで1年前比約43%下落。昨年の高値圏で買った人には含み損が残っている一方、年前半に利益を確定した人もいるはずです。後者で、かつ含み損を抱えた銘柄がある人にとっては、年内に損失を実現して同じ年の利益と相殺する、という選択肢が理論上は存在します。

ただ、ここは慎重に書きます。税金のために売る判断は、しばしば投資判断としては最悪になります。売った直後に戻って買い直せなくなる人を何人も見てきました。そもそも含み損の銘柄を本当に持ち続けたいのかという問いが先で、税効果はその次の話です。逆に言えば、もともと手放すつもりだった銘柄なら、年内に整理したほうが税務上は有利になる場合がある、という程度の話にすぎません。

もう一点だけ。2028年以降は特定暗号資産の譲渡損失について3年間の繰越控除が認められる見込みです。制度移行前の損失を移行後の利益にぶつけられるとは考えにくいので、「来年以降に持ち越せばいい」という前提は置けません。このあたりは正直、省令が出るまで断言できない部分が残ります。

なお、給与所得者で年末調整が済んでいる人は、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告は不要です(国税庁No.1900)。ただし住民税の申告は別途必要になる点をよく誤解されます。基礎的な流れは仮想通貨にかかる税金と確定申告の基本にまとめています。

③ 取得価額の計算方法と、取引履歴の確保

3つ目は地味ですが、後で詰まるのはほぼここです。

暗号資産の取得価額は、総平均法か移動平均法のどちらかで計算します。個人が何も届け出なければ総平均法が適用されます。移動平均法を使いたい場合は「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」が必要で、提出期限は初めてその種類の暗号資産を取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)です。つまり2026年に初めてある銘柄を買った人は、2027年3月16日(15日が日曜のため翌営業日)までに判断すればよい。年内の宿題ではありませんが、計算を始める前に決めておかないと二度手間になります。

そして履歴です。国内取引所は年間取引報告書を出してくれますが、海外取引所やDEX、レンディング、ステーキング報酬については自分で記録を揃えるしかありません。暗号資産同士の交換も、決済に使った分も、受け取った報酬も課税対象になります。この業界はサービス終了やAPI仕様変更が日常的に起きるので、使っている取引所の履歴CSVは今のうちに全部落としておくことをおすすめします。去年のデータが取れなくなってから相談に来られても、できることは限られます。

取引件数が数百を超えてくると手作業はもう現実的ではありません。私が相談の場でよく名前を挙げるのは損益計算ツールです。国内外の取引所やDeFiの履歴を取り込んで、総平均法・移動平均法のどちらでも計算してくれるタイプのものがあります。無料枠で足りる人もいますし、件数が多ければ有料プランのほうが結局安く済みます。

ツールを入れても、最後の数字は自分で検算してください。取引所からの入出金が抜けていたり、エアドロップの評価額が空欄になっていたりすることはよくあります。ツールは集計を速くするだけで、正しさを保証してくれるわけではありません。

2028年の分離課税で、何が変わり何が変わらないか

先の話ですが、今の整理の仕方に影響するので触れておきます。

分離課税の対象は「特定暗号資産」に限られます。金商法上の暗号資産のうち金融商品取引業者登録簿に登録されたものなど、という定め方で、具体的な範囲は財務省令が出るまで確定しません。そして対象となる取引も、暗号資産取引業者への売委託による譲渡(取引所取引)か、業者に対する譲渡(販売所取引)に限られると整理されています。海外取引所での売買、DEX、プライベートウォレットからの譲渡、ステーキングやレンディングの所得は対象外とされています。

ここは誤解が多いところです。「2028年から暗号資産の税金は一律20%」ではありません。海外取引所やDeFiを主戦場にしている人の課税関係は、今とそれほど変わらない可能性があります。国内取引所の選び方を今から考えておく意味は、そこにもあります。

一方で、特定暗号資産以外の譲渡についても所得税法33条3項などの改正で譲渡所得に該当しうることが法令上明確になりました。ただし50万円の特別控除や長期譲渡所得の2分の1課税、他の所得との損益通算は認められないとされています。有利になる部分と、そうでもない部分が混在しています。

番外編:年内に売るかどうかで迷っているなら

年末が近づくと、「利益は乗っているけれど、今年売ると税金が重い」という相談が増えます。では来年に回せばいいかというと、そう単純でもありません。申告分離課税は2028年からの予定なので、2027年分までは今の総合課税のままという見込みです。

売らずに資金が必要なだけなら、暗号資産を担保に日本円を借りるという手もあります。大和証券グループ本社とクレディセゾンの合弁会社であるFintertechの「デジタルアセット担保ローン」(貸金業登録:東京都知事(3)第31772号)が代表例で、BTC・ETHを担保に実質年率4.0〜8.0%、返済期日までは月々の返済も利払いもありません。借入そのものは売却ではないので、その時点で課税は発生しません。

ただし借入は500万円から、担保掛目は50%です。相応の残高がある人向けの選択肢だと思ってください。そして価格が下がって担保が処分されれば、その時点で売却とみなされて課税されます。年内の資金繰りのつもりが翌年の納税を重くする、ということも起こりえます。使うなら担保にかなり余裕を持たせることが前提です。

デジタルアセット担保ローン(ビットコイン・イーサリアムを担保に日本円を借りる)

相談の現場から

CFPとして相談を受けていて感じるのは、暗号資産の税金で困る人の大半が「計算が難しいから困っている」のではなく「記録が残っていないから困っている」ということです。税率が55%か20%かという議論は注目されますが、実務で詰まるのはもっと手前です。

その意味で、今年の残り3か月にやるべきことは拍子抜けするほど地味です。届出書を出す。履歴を落とす。保有している銘柄と取得価額をリスト化する。それだけで、来年2〜3月の作業量はかなり変わります。ビットコインの基本的な仕組みから整理したい方は、そちらも併せてご覧ください。

逆に、相場観を税制に引っ張られるのは避けたほうがいいと思っています。2028年に税率が下がるかもしれないから今は売らない、という判断が合理的なのかどうか、私にはわかりません。2年先の価格のほうが税率より振れ幅は大きいはずです。制度は制度として織り込み、投資判断は投資判断として分けて考える。身も蓋もない結論ですが、それ以上のことは言えません。

情報の出典(2026年10月8日確認)

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産・金融商品・サービスの購入や売却を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されていません。投資による損失が生じる可能性があります。

記載した制度・税制の内容は2026年10月8日時点で確認できた情報に基づくものです。暗号資産に関する税制および金融商品取引法の改正は、施行日を定める政令や財務省令が未公表の部分を含み、今後内容が変わる可能性があります。最新の情報は国税庁および金融庁の公式発表でご確認ください。

個別の税務判断、取得価額の計算方法の選択、申告の要否については、必ず税理士にご相談ください。本記事の情報に基づく判断および行動の結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。

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