暗号資産市場は、前夜の米国市場でビットコイン(BTC)が6万3,000ドル台を回復し、下値固めから反発の兆しを見せている。注目された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比4.2%とおよそ2年ぶりの高水準だったが、コア指数が市場予想を下回り、相場は売り一巡後に切り返した。日本では11日、暗号資産を「金融商品」に位置づける法案が衆議院を通過し、ETF解禁と税負担軽減に向けた制度の歯車が大きく動いた。本稿(朝刊)では、前夜の米国市場と来週のFOMC(米連邦公開市場委員会)を見据えた論点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは6.3万ドル台へ反発、アルトも上昇
ビットコインは6月11日の米国市場で6万3,000ドル台を回復し、一時6万3,600ドル前後(24時間で約2.8%高)まで戻した。前日に6万1,400ドル台まで沈んだ水準からの切り返しで、月初来の安値圏からはいったん距離を置いた形だ(CryptoTimes、Fortune)。為替は1ドル=約160円で推移しており(Trading Economics)、円換算ではおおむね1,018万円前後の水準となる。
イーサリアム(ETH)は1,684ドル前後(約27万円、24時間で約3.5%高)まで上昇。主要アルトコインも総じて堅調で、ソラナ(SOL)が66.95ドル(同約5.4%高)、XRPが1.14ドル(同約4.3%高)と、BTCを上回る上昇率を記録した銘柄も目立った(CryptoTimes)。一方で、米国の現物ETFからは資金流出が続いており、相場の反発と機関投資家の資金フローが逆方向を向く「ねじれ」が残っている点には留意が必要だ。
重要ヘッドライン
① 5月CPIは4.2%と2年ぶり高水準、ただしコアは予想下回る
米労働統計局が10日に発表した5月のCPIは、前月比0.5%上昇、前年同月比では4.2%とおよそ2年ぶりの高い伸びとなった。一方、変動の大きい食品・エネルギーを除くコアCPIは前月比0.2%・前年比2.9%にとどまり、市場予想を下回った。月間の上昇分の6割超をガソリンなどエネルギーが占めた(crypto.news/CoinDesk、BeInCrypto)。ヘッドラインの高止まりとコアの鈍化という強弱混在の内容を受け、BTCは発表直後こそ6万1,000ドル台で小動きにとどまったが、その後に6万3,000ドル方向へ水準を切り上げた。
② 米現物ビットコインETF、資金流出が継続
米国の現物ビットコインETFは11日も約2億1,385万ドルの純流出、イーサリアムETFも約3,559万ドルの純流出を記録した(Analytics Insight)。6月6日までの1週間では純流出額が約17.2億ドルと2025年2月以来の大きさに達し、流出基調は数週間続いている。ブラックロックのIBITが流出の中心となった(Farside Investors、BitcoinFoundation)。強い米雇用統計を背景に利下げ期待が後退し、利回りを生まない資産であるBTCの相対的な魅力が低下したことが、流出の一因と指摘されている。
③ イーサリアムのアドレス数が2億件に接近
オンチェーン指標では、イーサリアムの累計アドレス数が11日時点で2億件に迫り、ビットコインのおよそ3倍に達したと伝えられた(CoinMarketCap)。ネットワーク利用の裾野拡大を示す数値として注目される。なお、アドレス数は1人が複数保有できるため利用者数そのものを意味しない点には注意したい。
④ ステーキング報酬「非証券」の整理が追い風
米SEC・CFTCが3月17日に示した共同見解で、ステーキング報酬が「証券に当たらない」と整理されたことが、ステーキング機能付きETHのETF組成を後押ししている。ブラックロックのステーキング型ETH ETF(ETHB)などが制度面の裏付けを得た形だ(CoinMarketCap)。
テーマ深堀り:日本、暗号資産を「金融商品」へ——法案が衆院通過
11日、日本の制度設計が大きく前進した。暗号資産を現行の資金決済法による「決済手段」から、金融商品取引法(金商法)上の「金融商品」へと位置づけ直す改正法案が衆議院を通過した。法案は今後、参議院での審議に移る(crypto.news、FinanceFeeds)。
この制度転換が持つ意味は大きく二つある。第一に税制だ。現在、個人の暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象となり、住民税を含めた税率は最大で約55%に達する。改正が実現すれば、株式や投資信託と同様の申告分離課税(税率20%)が適用され、3年間の損失繰越控除も導入される見通しだ。適用開始は金商法改正の施行翌年とされ、2028年からとなる可能性が高い(日本経済新聞、CoinDesk JAPAN)。
第二にETFだ。暗号資産が金商法の枠組みに入ることで、ビットコインやイーサリアムの現物ETFを国内で組成・上場する法的な道筋が開ける。日本取引所グループ(JPX)は、上院(参院)での可決を経て枠組みが整えば、暗号資産関連ETFを早ければ来年にも上場できるとの見方を示している(FinanceFeeds)。対象は当面、金融庁の登録業者で取り扱われる「国民の資産形成に資する」銘柄に限られ、BTC・ETHを含む約105銘柄が想定されるという。
もっとも、法案はまだ参院審議という関門が残り、施行までには相応の時間を要する。税制の適用開始も2028年が有力で、即座に市場環境が変わるわけではない。それでも、税負担の重さとETF不在という日本の二大ボトルネックに同時に手が入ることの象徴的な意義は小さくない。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派は、CPI通過で目先の不透明感が一つ晴れたうえ、コアの鈍化が将来の利下げ余地を残した点を評価する。日本の制度前進も、中長期で国内資金の流入を促す構造変化として前向きに受け止める。一方で弱気派は、ヘッドラインCPIが4.2%と高止まりするなかでFRBの利下げは当面見込みにくく、ETFからの資金流出が続く限り上値は重いと指摘する。価格の反発が「実需を伴う上昇」か「売られ過ぎの反動」かを見極めるには、来週のFOMC通過を待つ必要があるとの慎重論も根強い。
今後の注目イベント・指標
最大の焦点は6月16〜17日のFOMCだ。市場は据え置きをほぼ確実視(CMEのFedWatchで約98%)しており、ケビン・ウォーシュ新議長にとって初の会合となる(CoinGape)。声明と記者会見で、高止まりするインフレと利下げ時期への姿勢がどう示されるかが相場を左右する。国内では、衆院を通過した金商法改正法案の参院審議の行方が引き続き注目される。
まとめ
前夜の米国市場はCPI通過とコア鈍化を支えにBTCが6万3,000ドル台を回復したが、現物ETFの資金流出は続いており、反発の持続力は見極めが必要だ。国内では暗号資産の「金融商品」化法案が衆院を通過し、分離課税とETF解禁という制度の地殻変動が一歩前進した。目先は来週のFOMCが最大の関門となる。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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