アジア株が半導体ショックに揺れた1日となった。中国勢の追い上げを嫌気して韓国KOSPIが10%を超える急落となり、日経平均も約4%安と大きく崩れた。リスク回避の連鎖は暗号資産にも波及し、ビットコイン(BTC)は米国市場の引け後に上値を消して6万3,000ドル台前半へ下落。前日夜に描いた「FOMC前の様子見」というムードは、株安を起点とした調整色へと塗り替わった。夕方時点の要点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは6万3,000ドル台へ、株安の逆風で約3%安
BTCは7月28日夕方時点(JST)で約6万3,300ドル前後で推移している。米CoinDeskによると、月曜(27日)の米株引け後から水準を切り下げ、6万5,000ドル近辺から約2.7%下げて6万3,200ドル程度まで沈んだ(CoinDesk)。米Yahoo Financeのリアルタイム値でもBTCは6万3,274ドル(24時間で約3.0%安)と、ほぼ同水準を示した(Yahoo Finance)。1ドル=約163.6円で換算すると、1BTCは約1,036万円にあたる。
イーサリアム(ETH)は約1,850ドル(約30万円)と、24時間で軟調。ここ数日は1,850〜1,960ドルのレンジでもみ合っており、株安局面でレンジ下限を試す形となった(CaptainAltcoin)。主要アルトコインも総じて弱含みで、ソラナ(SOL)が約73ドル、リップル(XRP)が約1.06ドルで取引された(CaptainAltcoin)。
市場心理を映すCrypto Fear & Greed Indexは28前後の「恐怖(Fear)」圏にとどまる(CoinNess、Fear & Greed Meter)。30日未明のFOMC(米連邦公開市場委員会)金利発表を控え、株安局面ではポジションを軽くする動きが優勢だ。
重要ヘッドライン
アジア株が半導体ショックで急落、KOSPIは10%超安・日経は約4%安
この日の主役はアジア株だった。韓国KOSPIは10%を超えて急落し、4月以来の安値をつけた(AP/Yahoo Finance)。指数は一時6,000近辺まで沈み、6月中旬のピークからは約25%下落した(CoinDesk)。サムスン電子が約13%安、SKハイニックスが約15%安と、半導体の主力2社がそろって二桁の下げを演じた。日経平均も大引けで前日比2,566円安(約3.95%安)の6万2,364円と、約2カ月ぶりの安値に沈んだ(Bloomberg(日本語)、ライブドアニュース)。引き金は中国勢の台頭懸念だ。中国のメモリメーカーCXMTが上場初日に466%高となり、上海STAR市場で少なくとも86億ドルを調達。加えて中国の政府系企業が液浸DUV(深紫外線)露光装置の製造に着手したと報じられ、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体製造装置株に売りが波及した。
米上院、CLARITY法案の審議を先送り——ロシア制裁法案を優先
朝に「上院休会前が正念場」と伝えた暗号資産の市場構造法案「CLARITY法案」に、後退のニュースが入った。米上院はロシア制裁法案を優先するため、CLARITY法案の審議を当面棚上げした(CoinDesk)。これにより、市場が待望する「規制の明確化」を巡る採決は早くても来週にずれ込む見通しで、8月8日ごろの夏季休会まで残された時間はわずかだ(CoinDesk)。機関投資家の本格参入を後押しすると期待されてきただけに、成立の遅れは強気材料の後ずれを意味する。
Lido、約165億ドルのステークETH移行を開始——バリデータを3分の1削減
DeFi(分散型金融)では最大手のリキッドステーキング、Lidoが大型アップグレードに着手した。800万ETH超(約165億ドル相当)を、Pectraアップグレードで有効になった大口対応の「0x02」バリデータへ移行する(CoinDesk、The Block)。「Curated Module v2(CMv2)」と呼ぶこの再編で、イーサリアム全体のバリデータ数は約88万から約63万へと3分の1減り、1エポックあたりの承認メッセージも約29%削減されて、コンセンサス層の負荷が軽くなる見込みだ。運営者に初めてETHの担保拠出が義務づけられる点も、信頼性強化として注目される。
タイSEC、大手取引所Bitkubを提訴——2021年のハッキング「隠蔽」を指摘
アジアの規制面では、タイの証券取引委員会(SEC)が国内最大手の暗号資産取引所Bitkubと元取締役2人を刑事告発した。2021年5月に約17億バーツ(約5,000万ドル)相当・16銘柄が盗まれたサイバー攻撃について、報告書に虚偽記載があり事実を正確に開示しなかったと申し立てている(CoinDesk、Bangkok Post)。Bitkub側は「取り付け騒ぎを避けるため開示を遅らせた。損失は同年10月末までに創業者が補填し、顧客に損害はなかった」と反論している。
テーマ深掘り:半導体ショックはなぜ暗号資産に波及したのか
今回の下げの本質は、暗号資産の内部要因ではなく、株式市場から流れ込んだリスク回避だ。発端は「AIブームの持続性」への疑念である。中国のCXMTが上場初日に466%高で86億ドルを調達し、さらに中国政府系が最先端の露光装置製造に乗り出したとの報道が重なった。これらは、これまでAI特需で株価が急伸してきたサムスンやSKハイニックス、東京エレクトロンといった半導体関連企業の優位が、中国勢の追い上げで揺らぐとの警戒を呼び、アジア全体の株安、そしてリスク資産であるBTCへの売りへと連鎖した(財経新聞)。
ここで押さえたいのは、BTCと株の相関は「いつも同じではない」という点だ。暗号資産取引所Bitfinexのアナリストはこう指摘する。「BTCが株と連動するのは、ストレスがマクロや金利に起因するときだ。株式市場に固有(idiosyncratic)の要因なら、むしろ相関は薄れる。今回の決算・設備投資を巡る議論はまさに固有の材料であり、この点では相関は過大評価されている」(CoinDesk)。つまり、半導体セクターの調整がそのままBTCの下落トレンドを意味するわけではない、という見立てだ。もっとも、FOMCを目前にした薄商いの中では、外部ショックが値動きを増幅しやすい。株安がマクロ全体の変調へ広がるのか、半導体に限った調整で収まるのか——その見極めが、当面のBTCの方向感を左右する。
識者の見方:セクター固有ショックか、世界株調整の号砲か
冷静な見方は、今回の株安を「暗号資産のファンダメンタルズ悪化ではない」ととらえる。前述のBitfinexのように、AI・半導体という特定セクターの材料であれば、マクロイベントであるFOMCが波乱なく通過すれば連れ安は限定的との解釈だ。需給面でも、米スポットBTC現物ETFは週間ベースで3週連続の純流入(7月24日までの週で差し引き約3,380万ドル)を確保しており、機関マネーの底堅さは失われていない(CoinDesk)。
一方の慎重派は、目先のイベントリスクを重く見る。暗号資産金融サービスNexoのアナリスト、デシスラバ・イアネバ氏は「FRBが水曜に金利を決め、木曜にはコアPCEとGDPが続く。水曜から木曜が今週最大のボラティリティの窓になる」と警戒する(CoinDesk)。半導体ショックが世界株全体の調整の号砲となり、そこにタカ派的なFOMCや物価の上振れが重なれば、株と連動しやすいBTCは6万3,000ドル割れを試す展開もあり得る。強弱の綱引きは、今週後半のマクロ指標で決着する可能性が高い。
今後の注目イベント・指標
最大の焦点は、日本時間30日午前3時のFOMC金利発表とウォーシュ議長会見だ。金利は3.50〜3.75%での据え置きが優勢だが、四半期見通し(ドット・チャート)のない会合だけにトーンが全てとなる。あわせて30日に米4〜6月期GDP速報値と巨大テック決算(アップル、アマゾン、コインベース、ストラテジー)、31日にFRBが重視する6月コアPCE物価指数と月末オプション満期が控える。マイクロソフトとメタは29日引け後に決算を発表する。
まとめ
夕方の要点は3つ。第一に、アジア発の半導体ショックでリスク回避が広がり、BTCは6万3,000ドル台へ約3%下落した。第二に、この下げはAI・半導体セクター固有の材料が主因で、暗号資産のファンダメンタルズ悪化ではないとの見方もあるが、CLARITY法案の審議先送りで規制期待は後ずれした。第三に、水曜から木曜のFOMC・GDP・コアPCEが今週最大の分水嶺となる。円安が続くなか、国内勢はイベント通過まで慎重に構えたい。
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