下期入り初日の1日、暗号資産市場は重い地合いのまま日中を推移した。ビットコイン(BTC)は前日にかけて心理的節目の6万ドルを割り込み、テクニカルの重要な下値目処である「200週移動平均線(約5万8,000ドル)」に接近する年初来安値をつけたあと、5万9,000ドル台へ弱々しく戻す展開となった。一方で本日、欧州連合(EU)の暗号資産規制「MiCA」の移行期間が満了し、認可を取得できなかった世界最大手バイナンスがEU域内でのサービス提供停止に踏み切った。本稿(夕刊)では、日中のアジア市況、MiCA施行「初日」の実際、そして今夜の米ADP雇用リポートとFRB議長発言までを整理する。
主要マーケット動向:BTCは200週線を試す年初来安値、米株との「ねじれ」続く
ビットコインは日本時間1日未明にかけて5万9,000ドルを割り込み、一時5万8,000ドル近辺まで下押しして年初来安値を更新した。暗号資産取引所KuCoinの市況リポート(2026年7月1日0時UTC=同日9時JST時点)によると、BTCは5万8,631ドル(24時間で2.70%安)、イーサリアム(ETH)は1,571ドル(同2.56%安)。その後は買い戻しが入り、同社の価格ページでは日中に5万9,300ドル前後まで持ち直した(KuCoin)。1ドル=約161円換算で、BTCはおよそ940万〜950万円前後にあたる(為替は概算)。市場心理を示すCrypto Fear & Greed Indexは11へ低下し、前日の15から再び悪化、「極度の恐怖(Extreme Fear)」圏の底に沈んだ(KuCoin、alternative.me)。
対照的に米国株は堅調だ。前日の米市場でS&P500種株価指数は7,499.36(0.79%高)、ナスダック総合指数は26,213.72(1.52%高)で、いずれも2020年以来の強い四半期を締めくくった。S&P500は上半期に約9.6%上昇したと伝わり、AI関連の楽観と底堅い労働・消費指標が支えとなっている(KuCoin、Benzinga)。株高と暗号資産安の「ねじれ」は5月中旬以降続いており、リスク資産全般ではなく暗号資産固有の資金流出が重しになっている構図が改めて浮き彫りになった。主要アルトはまちまちで、ソラナ(SOL)は74ドル台で相対的に底堅く、リップル(XRP)は1.0ドル台で軟調に推移した(CoinDCX)。
重要ヘッドライン
バイナンス、本日からEU事業を停止──MiCA認可取得できず
本日施行のMiCAをめぐる最大の「初日」ニュースは、世界最大手バイナンスのEU撤退だ。同社は6月24日にギリシャ当局へ提出していたMiCA認可申請を取り下げ、7月1日からEU居住者向けに新規の現物注文、入金、口座開設、およびEarn・ステーキング・ローンチプール等の提供を停止した。既存資産の出金は引き続き可能としている。バイナンスは今後フランスでの認可取得を目指すが、域内27カ国市場からの一時撤退は避けられない(CoinDesk、Euronews)。
認可を得たコインベース・クラーケンら「勝ち組」に
一方、コインベース(ルクセンブルクCSSF経由)、クラーケン(アイルランド中銀)、OKX、Crypto.comはMiCA認可を取得済みで、下期に向け競争上の優位を確保した。ESMAの暫定登録簿によれば、欧州で活動する3,000社超のうち正式認可は約210社にとどまり、認可率はおよそ7%。最大手が締め出される一方で主要競合が通過するという、明暗の分かれる幕開けとなった(Yahoo Finance、crypto.news)。
国内は金商法移行が焦点、メタプラネットも神経質
日本では、金融庁が暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行させ、発行者への年1回の情報開示義務やインサイダー取引規制の導入を盛り込んだ報告書を公表済みで、2026年通常国会への改正案提出を目指している。この方針を受け、ビットコイン保有で知られるメタプラネット株が神経質な値動きを見せる場面もあった(日本経済新聞、Yahoo!ファイナンス)。
RWA・予測市場に資金の芽、規制も同時に強まる
低調な地合いの裏で、新しいテーマには資金が向かっている。トークン化資産(RWA)では、オンド・ファイナンスの株式トークンがUniswap上で稼働し、430超の米国株・ETFのオンチェーン取引が可能になった。他方、CFTCは予測市場大手ポリマーケットへの広範な調査に着手し、米ミシガン州の裁判所はKalshiのスポーツベッティング提供を差し止めるなど、規制の網も同時に強まっている(KuCoin)。
テーマ深堀り:バイナンスEU撤退が示す「単一市場」の光と影
MiCAの狙いは、加盟国ごとにばらばらだった規制を一本化し、一度認可を得れば域内全体で営業できる「単一パスポート」を作ることにある。今回の施行初日は、その理想と現実の両面を映し出した。認可を得たコインベースやクラーケンは、27カ国市場に堂々とアクセスできる立場を得た。ルールが明確になったことで、これまで様子見だった欧州の機関投資家や銀行が参入しやすくなるとの期待もある。
しかし影の側面も鮮明だ。CoinDeskは、無認可業者の一斉退出により最大1,000万人規模の欧州ユーザーが新たなプラットフォーム探しを迫られる可能性を指摘した(CoinDesk)。世界最大手のバイナンスでさえ、申請手続きの遅れを理由にギリシャ案件を取り下げ、フランスでの再申請に賭ける状況に追い込まれた。認可の遅延は事業機会の喪失に直結し、規制対応コストを負えない中小業者ほど退出を強いられる。整備された「単一市場」が生む秩序と、移行に伴う流動性の分断・利用者の混乱は、当面は表裏一体で進むことになる。日本の読者にとっても、金商法移行を控える国内で「利用者保護と事業の持続性をどう両立させるか」を考える上で、示唆に富む先行事例といえる。
識者の見方:「悪材料の織り込み」か「需要細り」か
強気派は、BTCが200週移動平均線という長期の下値支持帯を試したうえで下げ渋っている点に注目する。過去、このゾーンは弱気相場の底値圏と重なることが多く、Fear & Greed Indexが2桁前半で「極度の恐怖」に沈む局面は、逆張りの好機とされてきたとの指摘もある。米株の記録的な四半期高が続くなか、出遅れた暗号資産に資金がローテーションする余地を見る向きもある。
弱気派は、株高局面でも暗号資産だけが売られ続ける「ねじれ」を、機関投資家の需要そのものが細っているサインと捉える。米現物ETFからの連続的な資金流出が象徴的で、需給の主役が不在のまま反発力は乏しい。加えてMiCA施行による短期的な流動性の再編や、中東情勢を含むマクロの不透明感も、上値を抑える要因として意識されている(KuCoin)。
今後の注目イベント・指標
今夜以降は米国のマクロ材料が続く。日本時間1日夜には6月のADP雇用リポートとISM製造業景況指数が発表され、あわせてポルトガル・シントラで開かれるECBフォーラムで、就任後初の主要国際舞台となるFRBのウォーシュ議長がラガルドECB総裁らとパネル討論に臨む(C-SPAN、ECB)。最大の山場は日本時間2日夜の米6月雇用統計(非農業部門雇用者数・失業率)で、FRBの利下げ観測を左右する。国内では金融庁の制度改正の動きも引き続き注視したい。
まとめ
下期入り初日、BTCは200週線を試す年初来安値をつけ、市場心理は「極度の恐怖」に逆戻りした。米株高との「ねじれ」が続くなか、本日施行のMiCAはバイナンスのEU撤退という象徴的な一幕を生んだ。整備された単一市場の光と影は、金商法移行を控える日本にも示唆を残す。今夜のADPとウォーシュ議長発言、そして明晩の雇用統計を、一次情報で冷静に見極めたい。
—
*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



コメント