下期入り2日目の夕、暗号資産市場には久しぶりに反発の色がさした。前日夜、ケビン・ウォーシュFRB議長が「インフレのリスクは低下した」と述べたことをきっかけに、ビットコイン(BTC)は約1週間ぶりに6万ドルの大台を回復。今夜21時30分(JST)に迫った米6月雇用統計を前に、市場は下値を固めつつある。もっとも、6月の現物ビットコインETFは過去最悪の資金流出を記録しており、需給面の重石は残ったままだ。本稿(夕刊)では、日中のアジア市況、機関投資家の姿勢、そして日本・アジア・欧州の制度動向を整理する。
主要マーケット動向:BTCは6万ドル回復、ウォーシュ発言が反発の呼び水に
ビットコインは前日、ポルトガル・シントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムでのウォーシュFRB議長の発言を受けて反発した。同議長が「インフレのリスクは低下した」と述べつつ、2%目標へのコミットメントを改めて示したことで、BTCは約1週間ぶりに6万ドルを回復。CoinDeskのデータでは、7月1日午後(米東部時間)時点で1BTC=6万0,076.53ドル前後と、24時間で約3%上昇した(CoinDesk)。
2日のアジア時間もこの水準を維持し、国内大手CoinPostの価格表示では2日夕方時点でBTCは約1,010万円で推移した(CoinPost)。米ドル建てではおおむね6万ドル台前半で、朝刊時点(前夜の5万8,000ドル台)から水準を切り上げた形だ。イーサリアム(ETH)は1,600ドル台、XRPは1.05ドル前後で1ドルの節目を維持、ソラナ(SOL)は77ドル前後と、主要アルトも総じて底堅く推移している(The Block)。米株のAI関連高と暗号資産安という「ねじれ」は残るものの、金利観測の変化がリスク資産全体を下支えした一日となった。
重要ヘッドライン
6月の米ビットコインETF、過去最悪の45億ドル流出が確定
米現物ビットコインETFは6月、月間で約45億ドルの純流出を記録し、2024年1月の上場以来で最悪の月となった。SoSoValueの集計では、従来の最悪だった2025年2月(約34.8億ドル)を29%上回った。ブラックロックのIBIT単体で35.5億ドルを占め、6月30日には2億1,200万ドルが流出して9営業日連続の資金流出となった。ETF全体の運用資産は月初の約830億ドルから約710億ドルへ減少した(CoinDesk)。機関マネーの流出が続いた点は、朝刊時点の「過去最悪規模」との速報を数値で裏づける続報となった。
シティが強気目標を下方修正、一方でカンターは「弱気相場は最終局面」
証券大手の見方は割れている。シティは資金流出の長期化を背景に、ビットコインとイーサリアムの12カ月目標を引き下げた。一方でカンター・フィッツジェラルドは、過去のサイクル分析から「ビットコインの弱気相場は最終局面に入りつつあり、数カ月内に底を打つ可能性がある」との見方を示した(CoinDesk(Cantor)、CoinDesk(Citi))。強気・弱気の綱引きが鮮明だ。
台湾が包括的な暗号資産法、アジアで規制整備進む
アジアでは7月1日、台湾が包括的な暗号資産新法を導入した。事業者へのライセンス制、準備金の積み立て義務、厳格な罰則などを柱とする内容で、アジア域内でも規制の高度化が進んでいる(CoinDesk)。日本の金商法移行議論とも通じる、投資家保護重視の潮流だ。
仏クレディ・アグリコルがユーロ建てステーブルコイン発行、欧州は市場整備が加速
欧州では、仏銀行大手クレディ・アグリコルがユーロ建てステーブルコイン「EURXT」の提供を開始した。EUの包括規制MiCAの本格適用が進むなか、伝統的金融機関の参入が相次いでいる。誰が新ルールの恩恵を受けるのかを巡る議論も活発だ(CoinDesk)。円建てステーブルコインの議論を抱える日本にも示唆が多い。
テーマ深堀り:ETF流出という「構造的重石」と、日本市場の制度整備
6月のETF流出が過去最悪となった背景には、いくつかの構造要因が重なっている。CoinDeskによれば、6月中旬にスペースXの上場が巨額のリスクマネーを吸収したことに加え、ウォーシュ議長就任後の初会合(6月17日)で「利下げをテーブルから外す」タカ派姿勢が示されたことが、機関投資家にボラティリティの高い資産の圧縮を促したとされる(CoinDesk)。今回の6万ドル回復も、あくまで議長発言による金利観測の変化がもたらした反発であり、ETFを通じた実需が戻ったわけではない点には注意が必要だ。
一方、日本では制度整備が着実に前進している。金融庁は暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)の枠組みへ移行させる方針で、未公表の内部情報に基づく売買を禁じるインサイダー取引規制の導入や、発行者への年1回の情報開示義務、交換業者への責任準備金の積み立てなどを検討。2026年の通常国会への金商法改正案提出を目指している(日本経済新聞、日本経済新聞(開示規制))。国内上場のメタプラネットは4万BTCを超える保有で上場企業として世界有数の規模となり、2026年末までに10万BTCを目指す方針を掲げるなど、事業会社の動きも活発だ(CoinPost)。海外の需給悪化と国内の制度・企業の前進が同時進行する、ねじれた局面が続いている。
識者の見方:反発は「悪材料出尽くし」か「一時的な戻り」か
強気派は、BTCがウォーシュ発言をきっかけに6万ドルを回復した点と、カンターが指摘する「弱気相場の最終局面」論に注目する。過去のサイクルでは、極度の悲観と大規模なETF流出が重なった局面が、結果的に相場の底値圏と重なったケースが多かったとの見方だ。金利観測が利下げ方向に傾けば、出遅れた暗号資産に資金が戻る余地があるとの期待もある。
弱気派は、6万ドル回復はあくまで議長発言による一時的な戻りにすぎず、ETFの連続流出という構造的な需給悪化は解消していないと慎重だ。シティの目標引き下げが象徴するように、機関投資家の期待値そのものが下方修正されている。今夜の雇用統計が強い数字となれば、利下げ後ずれ観測から再び上値が重くなるリスクもある。マクロが明確に好転するまでは、戻りは限定的との声が根強い。
今後の注目イベント・指標
今夜最大の見どころは、日本時間21時30分(米東部時間2日8時30分)発表の米6月雇用統計だ。非農業部門雇用者数(NFP)は前月比10万〜11.5万人増、失業率は4.3%で横ばいが市場予想。弱い数字なら利下げ観測が強まり暗号資産の追い風に、強い数字なら金利先高観から売り圧力となりやすい(BLS)。結果は翌朝のアジア市況を大きく左右する。ステーブルコインを規律する米GENIUS法の規則策定期限(7月18日)や、日本の金商法改正に向けた動きも引き続き注視したい。
まとめ
下期入り2日目の夕、BTCはウォーシュFRB議長の「インフレリスク低下」発言を受けて約1週間ぶりに6万ドルを回復した。ただ6月のETF流出は過去最悪の45億ドルが確定し、需給の重石は残る。国内では金商法移行やメタプラネットの積み増しなど制度・企業の前進が続く。今夜の米雇用統計が当面の方向感を決める。煽られず、一次情報で冷静に見極めたい。
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免責事項:本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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