日曜夜の暗号資産市場は、週末特有の薄商いのなかでビットコイン(BTC)が6万2,000〜6万3,000ドル台(1ドル=約159円換算で約1,000万円前後)で膠着を続けた。値動きが乏しい一方、週末の市場をざわつかせたのは価格ではなく「安全性」だ。人気ハードウェアウォレット「コールドカード」の脆弱性を突いた大型盗難が被害を拡大し、BTC自己保管(セルフカストディ)の安全神話が揺らいでいる。国内ではメタプラネットが証券事業へ本格参入し、ステーブルコイン最大手テザーは四半期決算を公表した。夜の要点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは6.3万ドル台で週末停滞、ETH建てETFは資金流入が続く
BTCは、日本時間8月2日夜の時点で6万2,000〜6万3,000ドル台での小動きにとどまった。CoinMarketCapの集計をもとにした分析では、8月入り後のBTCは6万2,865ドル前後で、7月末の売り圧力を引きずったまま下降チャネル上限で頭を抑えられている(Coinpedia、CoinMarketCap)。土日は欧米の主要市場が休場で薄商いとなりやすく、朝方から大きな方向感は出ていない。円換算では1BTCあたり約1,000万円前後にあたる。
イーサリアム(ETH)は1,860〜1,900ドル前後、リップル(XRP)は1.06ドル、ソラナ(SOL)は72ドル台で、主要アルトはおおむね横ばい圏を維持した(Coinpedia)。市場心理を示す恐怖・強欲指数は27の「Fear(恐怖)」圏にとどまり、慎重姿勢が続いている(Alternative.me、CFGI.io)。
資金フローではBTCとETHの明暗が分かれている。米ビットコイン現物ETFは7月最終営業日に約2億6,500万ドルの純流出を記録した一方、米イーサリアム現物ETFは資金流入基調を維持し、7月は月間で約3億6,500万ドルの純流入と4週連続のプラスで着地した(Crypto Times、Phemex Blog)。5月中旬から7月初旬まで8週連続で流出が続いたETH建てETFにとっては潮目の変化で、機関投資家のETH選好が続くのか、価格の弱含みで失速するのかが次の焦点となる。
重要ヘッドライン
コールドカードの脆弱性で被害拡大 盗難額は約70億ドル→約110億円規模に
7月30日、人気ハードウェアウォレット「コールドカード」の一部利用者の資金が、身に覚えのない送金で流出していることが発覚した。当初は約594BTC(当時約3,800万ドル)が約500ウォレットから約25分で抜き取られたと報じられたが、ギャラクシー・リサーチのその後の分析で被害は1,082.65BTC・約7,000万ドル(約110億円)、1,196アドレスへと拡大した(CoinDesk、The Hacker News)。原因は2021年3月のファームウェア更新で、リカバリー用の「シード(秘密鍵の種)」を生成する乱数がハードウェア乱数器から予測可能なソフトウェア方式に切り替わっていた不具合だ。攻撃者は端末に触れずにオフラインで秘密鍵を再現できたとされる。製造元Coinkiteは不具合を認めて謝罪し、緊急ファームウェアを公開。ただし「更新だけでは既存の脆弱なシードは安全にならない」として、対象バージョンで作成した利用者に新しいシードでの資金移動を呼びかけている(CoinDesk)。
バイナンス創業者CZ「ウォレットの分散を」
一連の盗難を受け、バイナンス創業者のCZ(趙長鵬)氏はX(旧ツイッター)で「ハードウェアウォレットにもバグはある。古い(実績ある)ウォレットにもバグはある。対策は?資金を複数のウォレットに分けることだ。ただしそれは別のリスクを伴う。100%はない。情報を追い、安全(SAFU)に」と投稿し、資金の分散管理を呼びかけた(CoinDesk)。一方で分散管理は鍵の管理が複雑になるトレードオフも指摘した。
テザー、Q2営業利益15億ドル 余剰準備金は半減
ステーブルコイン最大手テザーは7月31日、2026年第2四半期(4〜6月)の営業利益が約15億ドルだったと公表した。米国債やレポ(現先取引)からの利息収入が主因だ。6月末時点の資産は約1,877億ドル、負債は約1,836億ドルで、余剰準備金は約41億ドルと、3カ月前の約82億ドルから半減した。USDTの発行残高は約1,846億ドルへ増え、ステーブルコイン市場でのシェアは6割超を維持した(CoinDesk、Decrypt)。金相場の下落で保有金の評価額は目減りしており、収益源の分散と準備金の厚みが今後の論点となる。
サークル、ニューヨーク州の信託免許を取得
USDC発行元のサークルは7月31日、ニューヨーク州から信託銀行免許(トラスト・チャーター)を取得したと発表した。米国でステーブルコイン規制の整備が進むなか、発行体が銀行類似の枠組みへ組み込まれていく流れを象徴する動きだ(CoinDesk)。テザーが収益力で先行する一方、サークルは規制順守を軸に米制度内での地歩を固めている。
国内:メタプラネットが証券業へ、BTC保有は4.3万枚に
国内では、ビットコイン財務戦略で知られるメタプラネット(3350)が証券子会社「メタプラネット証券」を通じて金融事業への参入を進めている。同社は第2四半期に平均約7万8,872ドルで2,823BTCを取得し、累計保有は約4万3,000BTC(取得原価ベースで約40.9億ドル)に達した。BTCオプションを用いた収益事業では四半期に約1,095万ドルの売上を計上している(Bitcoin.com News、CoinGecko Treasuries)。2027年末までに全供給の約1%にあたる21万BTC保有を掲げており、上場企業のBTC財務戦略と金融事業の融合が国内でも進む。
テーマ深掘り:ハードウェアウォレット神話の崩れ ― 日本の投資家が学ぶべき「保管の分散」
今回のコールドカード事案が突きつけたのは、「オフラインで鍵を保管すれば安全」という自己保管の常識が絶対ではないという事実だ。ハードウェアウォレットは秘密鍵を端末内に隔離し、インターネットから切り離すことで安全性を高める仕組みで、取引所の預かり資産が破綻・ハッキングで失われるリスク(カウンターパーティ・リスク)を避けたい上級者に支持されてきた。ところが今回は、端末に一度も物理的に触れることなく、5年前に埋め込まれた乱数の欠陥だけを頼りに秘密鍵が再現された。しかも被害の多くは、長年動いていなかった「休眠アドレス」に及んだ(CoinDesk、The Hacker News)。
日本の投資家にとっての示唆は三つある。第一に、単一の保管手段に集中させないこと。CZ氏が説くように、取引所・ハードウェアウォレット・複数署名(マルチシグ)など、性質の異なる保管方法へ分散すれば、ひとつの欠陥が全損に直結する事態を避けやすい。第二に、シード生成の「いつ・どの機種・どのファームウェアで」を把握すること。今回の被害はMk2・Mk3の特定バージョンで生成したシードに限られており、自分の資産がどの条件で作られたかを知っていれば対処が早い。第三に、国内の投資家は金融庁登録の取引所という選択肢を過小評価しないことだ。自己保管は自由と引き換えに全責任を負う世界であり、万能ではない。もっとも取引所にも破綻・不正のリスクはあり、「取引所か自己保管か」の二者択一ではなく、資産規模や用途に応じて両者を組み合わせる発想が現実的だといえる。制度面でも、日本は暗号資産を金融商品取引法の枠組みへ移す改革を進めており、保管・開示のルール整備が投資家保護の鍵を握る。
識者の見方:「魔の8月」への警戒と、押し目待ちの両論
弱気派は季節性とマクロ環境を重くみる。過去のBTCは8月に4年連続で下落しており、薄い機関参加と金利高止まりが重なる今夏も換金売りが出やすいとの見方だ。オンチェーン分析からは、米国債利回りの高さがリスク資産へ資金を向かわせにくくしているとの指摘も出ている。今回の自己保管を巡る不安が、短期的に一部資金の様子見を強める可能性もある。
一方、強気派は「強制的な売りは出尽くした」との見立てを示す。7月末の下落局面で投げ売りの燃料は使い果たされ、8月は方向感の乏しい「もみ合い」に移るとの分析だ(CoinDesk)。ETH建てETFへの資金回帰が続けば、相場全体の下支えになるとの期待もある。強気・弱気が拮抗するなか、当面は6万ドル前後を中心としたレンジ内で次の材料を探る展開とみる向きが多い。
今後の注目イベント・指標
来週は米指標と制度の両にらみだ。8月7日(金)には7月分の米雇用統計が米東部時間8時30分に発表され、同日から米上院は夏季休会に入る。市場構造法案「クラリティ法」の採決可否もこの日までが節目で、成立確率の市場評価は3割前後にとどまる(Yahoo Finance、bitcoin.com)。8月12日(水)には7月の米消費者物価指数(CPI)が控える(usinflationcalculator)。ETFの資金フローとあわせ、金利観測の変化が暗号資産に波及しやすい2週間となる。
まとめ
週末夜のBTCは6万3,000ドル前後で膠着したが、市場を動かしたのは価格よりも「安全性」だった。今日の要点は、①コールドカードの脆弱性で盗難が約110億円規模に拡大し自己保管の常識が揺らいだこと、②テザーがQ2に15億ドルの営業利益を上げつつ余剰準備金を半減させたこと、③国内でメタプラネットが証券事業と4.3万BTC保有で存在感を高めたこと。保管の分散と制度整備という「守りのテーマ」が、静かな週末に改めて問われた一日だった。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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