「下がったときに買ってくれる人が、まだいるんですね」。今日そんな感想をいただきました。たしかに今朝のビットコインは一時8万ドルを割り込み、2時間ほどで8万2千ドル台まで戻しています。買い手はいる。ただ、その買い手が「どこから来ているのか」を見ると、話は少し複雑になります。
結論を先に書くと、価格を支えているのは米国の現物ETFではなくなりつつある、という話です。
東京とアジア:日経は7営業日ぶりの反発、ただし戻りは3割弱
日経平均は6万5324円29銭、前日比898円34銭高で引けました。7営業日ぶりの反発です。寄り付きは6万4925円29銭(499円高)で、後場寄りには995円高まで上げ幅を広げたものの、終盤はやや値を消しています。東証プライムの売買代金は7兆6686億円。
33業種のうち32業種が上昇し、下げたのは電気・ガス業(0.74%安)だけ。その他製品が2.75%高、機械が2.44%高、保険業が2.36%高と、かなり幅の広い買い戻しです。
ただ、素直に喜べる数字でもありません。前日の下げが3318円34銭だったので、戻り幅は下げの3割に届いていない。前日に大きく売られたAI・半導体の戻りが鈍く、そこが埋まっていません。「下値不安は後退したが、上に行く力はまだ確認できていない」という、どちらとも言いにくい一日でした。
アジア全体ではMSCIアジア太平洋株式指数が1.3%上昇。木曜に7.57%下げた韓国KOSPIが約3%反発し、サムスン電子とSKハイニックスがそろって2%超戻しています。一方でTSMCは売上高が前年同期比41.2%増の決算を出したにもかかわらず下落。AI向け支出への疑念が好決算を打ち消した形です。
為替はドル円が15時時点で157円84銭。レンジは157円80銭〜158円18銭と動きは限られました。ウォーシュFRB議長が「予断を持たない」と述べたことで10月FOMCの据え置き観測が強まり、ドルがやや売られています。
暗号資産:8万ドル割れを2時間で買い戻し
ビットコインは執筆時点で約8万1962ドル(24時間で+0.92%)。イーサリアムは約2448ドルで+3.15%と、こちらのほうが戻りは強いです。暗号資産の時価総額は2.76兆ドル、24時間で+1.53%。
木曜から今朝にかけての動きは荒かった。木曜の下落で7万9800ドル台まで突っ込み、直近1週間に2度守られてきた8万400ドルの安値を割っています。そこから約2時間で8万2500ドル付近まで回復し、アジア時間は8万1千ドル以上を維持しています。主要銘柄ではZECが約8%高の1190ドル前後と目立ち、SOL・XRP・TRXは1%程度の上昇でした。
センチメント指標は、今朝の記事でも触れたとおり落ち着いています。Fear&Greed指数は51の「中立」で前日と同じ。BTCドミナンスは59.73%、アルトコインシーズン指数は62と1か月前の33から大きく上がり、ビットコイン一強から少し資金が散っている状態です。
デリバティブ側は建玉(オープンインタレスト)が4064億ドルで24時間-1.64%、30日で-13.49%。ビットコインの清算額は24時間で8474万ドルと前日比57.6%減。火曜・水曜で一度焼かれたあと、積み直しが進んでいないという見方が自然でしょう。
テーマ深掘り:ETFの資金フローが「止まった」
ここが今日の本題です。
米国の現物ビットコインETFの資金フローを並べると、今月は明らかに様子が違います。Farside Investorsのデータを集計した報道によると、10月14日(水)は2億6150万ドルの流出。FidelityのFBTCが1億5270万ドル、BlackRockのIBITが1億1090万ドルの流出で、流入はBitwiseの220万ドルだけでした。翌15日(木)は純流入506万ドルとほぼゼロ。10月の月間累計では5億3980万ドルの流出です。
月次で見ると、6月は45億ドルの流出、7月は1億7240万ドルの流入、8月は35億ドル、9月は約26億ドルの流入。そして10月はここまでマイナスです。「毎月数十億ドル入ってくる」流れが、10月に入って止まりました。
イーサリアム側はもっとはっきりしています。10月15日のETH ETFは6030万ドルの流出で、BlackRockのETHAが4440万ドル、GrayscaleのETHEが1830万ドルのマイナス。流入はFidelityのFETHの240万ドルだけ。ETHは今月に入ってから流出が続く局面が長く、ここも戻っていません。
運用資産残高で見ても、ビットコインが1078.6億ドル(前日1090.1億ドル、1週間前1110.5億ドル)。価格が横ばいでも残高が減っているなら、解約が出ているということです。
では、8万ドルを買ったのは誰か。Glassnodeが公開した10月15日のBinance板のヒートマップが示唆的です。8万ドルには数週間前から厚い買い注文の壁があり、それが食われて7万9800ドルまで下げたあと、約20分後に8万ドルのすぐ下に新たな大口買いが出現したとされています。その後に買いが積み増され、日中高値8万2634ドルまで戻った。ETFではなく板の上の大口が受け止めた、という絵です。
ただ、Glassnodeは注釈を付けています。補充後、8万ドルを下回る水準の買い注文の総量は減った。次に同じ水準を試す場面では、木曜より抵抗が少ないかもしれない、と。清算額は下落局面で約9億3000万ドル(うちロング約7億8000万ドル)、反発局面でショートが約5300万ドル。踏み上げは一時的な押し上げにはなりますが、継続的な買いを生むわけではありません。
強気に読むなら、ETFからの流出が続いているのに価格が8万ドル台で保たれているのは、売り圧力そのものが細っている証拠です。レバレッジも30日で13%以上落ちていて、下げたときに連鎖する燃料が少ない。
弱気に読むなら、ETFという「毎日入ってくるお金」が止まった相場は、支えを一部の大口に依存することになります。その大口が降りたときに次の買い手がいるかは、正直わかりません。8万ドル以下の板が薄くなったという指摘は、まさにそこを突いています。
どちらが正しいかは、来週のメタ決算(21日の引け後)とFOMC(27〜28日)を通過するまで判断がつかないと思います。相談の場でお伝えしているのは、「ETFフローは価格の先行指標ではなく、買い手の層が入れ替わっているかを見る指標として使う」という整理です。毎日の数字を追わず、月単位で方向が変わったかを見る。今回は9月と10月で変わった、というのが確認できた事実です。
今夜の米国市場、ここを見る
今夜は大物の指標がありません。21時30分に9月の輸入物価指数、22時15分に9月の鉱工業生産、27時に月次財政収支。インフレ関連は今週前半でおおむね出尽くしています。
9月の消費者物価指数は前年比3.7%まで加速し、エネルギー価格の上昇が主因でした。卸売物価(PPI)も9月に急伸して前年比6.3%。それでも米10年債利回りは5.07%と落ち着いており、債券市場は利上げを強く織り込んではいません。FRBの10月利上げ観測は、14日に一時40%台まで上がったあと、15日には3割前後に下がっています。
材料としては、むしろウォーシュ議長がバンコクのIMF・世界銀行会議で何を話すかのほうが大きいかもしれません。追加のニュアンスが出ればドル円と金利の両方が動きます。
AI関連のリスクも残っています。CoreWeaveの株価は14日に15%急落し、一部社債の利回りは15%を超えました。株価は15日に持ち直しましたが、社債は戻っていません。米大手銀2行がAIインフラ企業VoltaのGPU購入向け約37億ドルの融資引受保証を見送ったとの報道もあり、来週のメタ決算が「AI投資に見合う収益か」の試金石になるという見方が広がっています。ビットコインがナスダックと同じ方向に動く局面が続いているので、ここは暗号資産の話として見ておいたほうがいいです。
日中に出た、その他のニュース
タイSECの暗号資産ETF関連規則が本日10月16日に施行されました。対象はビットコインとイーサリアムに限定、上場先はタイ証券取引所(SET)のみ、パッシブ運用で、単一資産への純エクスポージャーを会計年度平均で純資産総額の80%以上に保つ義務があります。購入のための信用融資は禁止。アジアでETFの受け皿が増える流れは、日本の議論にも影響してくるはずです。
EUはMiCAの下でUSDCを初の「重要な電子マネートークン(significant EMT)」に指定しました。規模の大きいステーブルコインに追加の監督を課す枠組みです。国内ではOKJがミッドナイト(NIGHT)の板取引を国内初で開始。楽天ウォレットは現物とレバレッジのアプリを統合しました。
相談を受ける立場から、ひとこと
今週のように一度8万ドルを割ってから戻す動きがあると、「底が確認できたのでは」という質問をいただきます。板の大口が受け止めたという事実はありますが、その下の買い板が薄くなったという指摘もセットで出ている。片方だけを根拠に動かすのは勧められません。
それと、以前も書いた「無リスクで5%」の重さは、まだ消えていません。米長期金利が5%台にある間は、値動きのない資産を持つ機会費用が大きい。配分を考えるときは、価格の上下だけでなくそこも天秤に乗せてください。初めて口座を作る段階の方は、取引所選びの基準から確認しておくと、後の損益計算が楽になります。
来週は21日のメタ決算、23日のPMI速報、27〜28日のFOMC。10月後半は材料が詰まっています。
情報の出典(2026年10月16日確認)
- 日経平均の概況(10月16日):終値と業種別騰落
- OANDA 東京外国為替市場概況・15時:ドル円とウォーシュ議長発言
- CoinDesk Japan:8万ドル割れと買い戻し、アジア株
- CryptoTicker:ビットコインETFの日次・月次フロー
- FinanceFeeds:ETH ETFのフロー内訳
- Bitcoin.com News:Glassnodeの板分析と清算額
- CNN:米9月CPI
- CNN:米9月PPI
- あたらしい経済:タイSECのETF上場規則
- 外為どっとコム マネ育チャンネル:米国市場の予定とAI関連株
- 価格・時価総額・ドミナンス・建玉・清算額・ETF残高:CoinMarketCap(2026年10月16日取得)
免責事項
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本記事の数値や制度の内容は執筆時点で確認できたものです。相場は執筆後に変動し、制度は改正されることがあります。最終的な情報は各社公式サイト、金融庁、国税庁などの一次情報でご確認ください。個別の税務判断については税理士にご相談ください。


