おはようございます。あきFPです。10月16日朝のマーケットをお届けします。
昨日は日本株が歴代3位の下げ幅を記録し、夜の米国では9月PPIが4年ぶりの高水準。普通ならもう一段売られてもおかしくない組み合わせです。ところが実際に起きたのは、長期金利の低下とBTCの8万2千ドル台への戻しでした。このねじれが今日いちばんの論点だと思います。
主要マーケット動向
ビットコインは8万2,270ドル。24時間+0.74%、7日間+0.74%、30日間+9.05%。イーサリアムは2,456ドルで24時間+1.62%、7日間-0.90%、30日間+2.66%。市場全体の時価総額は2.76兆ドルで、24時間は+0.73%ですが7日間では-2.41%と、週単位ではまだマイナス圏です。
数字だけ見れば小動きですが、昨日の日中は違いました。BTCは一時8万ドルを割り込み、24時間安値は8万443ドル。CoinGlassの集計では清算額が一時約9億5,000万ドル、うち約8億8,000万ドルがロングでした。買いに偏った建玉が一気に流された形です。そこから米株の下げ幅縮小と長期金利の低下で買い戻しが入り、8万2千ドル台まで戻しています。
Fear & Greed指数は52で「Neutral」。前日50、1週間前56、1カ月前63。暴落した割には崩れていない、というのが素直な読み方でしょう。ビットコインドミナンスは59.83%(1週間前59.10%)とじわじわ上昇。ただアルトコインシーズン指数も60まで上がっており、ここは解釈が割れます。どちらが本線かは正直まだわかりません。
前夜の米国市場は、インフレ指標の強さに対して意外なほど冷静でした。ダウ平均は556.21ドル高の5万2,177.69ドルで反発、ナスダックは20.16ポイント高の2万6,713.03ポイントとほぼ横ばい。米10年債利回りは5.083%(前日比-0.103)、2年債は4.749%(同-0.049)と長短ともに低下。ドル円は157円55銭まで下げたあと158円25銭まで反発して引けています。
そして日本株です。日経平均は3,318円34銭安(-4.90%)の6万4,425円95銭で6日続落、下げ幅は過去3番目。AI関連投資への懸念が引き金で、韓国KOSPIも一時約8%下落。リスク回避は株式のほうが遥かに激しく、暗号資産が8万ドル割れで止まったのは相対的にはむしろ粘ったほうでした。
重要ヘッドライン
- 米9月PPIは前月比+1.3%、前年比+6.3%で4年ぶり高水準——予想は+0.6%/+5.4%。コアも前月比+0.7%(予想+0.3%)、前年比+5.0%(予想+4.4%)とほぼ全面上振れ。エネルギーが前月比+10.8%と大きく効いています。
- それでも市場の反応は限定的——前日のCPI(総合+3.7%、コア+2.6%)で一度織り込んだ後だったことに加え、9月小売売上高の鈍化とAI関連企業の信用不安を受けた米国債買いが重なり、利回りは逆に下がりました。
- 米ビットコインETFは10月14日に2億6,140万ドルの純流出——フィデリティFBTCが1億5,270万ドル、ブラックロックIBITが1億1,090万ドルの流出。イーサリアムETFも1億2,950万ドル流出し、合計約3億9,090万ドル。ETF純資産総額はBTCが1,088億ドル(1週間前1,113億ドル)、ETHが146億ドルです。
- 米ストライブがBTC保有で上場企業世界4位に——2日連続の購入開示で計6,133BTCを追加し保有3万5,595BTC。国内のメタプラネットの動きと合わせて追いたいところです。
- EBAがUSDCをEU初の「重要な電子マネートークン」に指定——届け出45銘柄のうち初。11月12日からEBAとフランスACPRの二重監督が始まります。日本の「二本立て」とは別の道筋ですが、規制が実装フェーズに入った点では同じ流れです。
- 米OCCが大手銀9行の「デバンキング」実態を公表——暗号資産の発行事業者や取引所が、銃器やたばこと同じ業種別制限を受けていたと認定。9行すべてが公平なアクセス方針を整備したとのことです。
テーマ深掘り:インフレ指標が強いのに金利が下がる「ねじれ」をどう読むか
昨日いちばん気になったのは、PPIが4年ぶり高水準だったのに米10年債利回りが0.1%以上下がった点です。教科書どおりなら物価の上振れは引き締め観測を強め、金利は上がるはず。実際、一昨日のCPI直後は利回りが急上昇していました。
何が違ったのか。理由は3つ重なっています。前日のCPIで既に利上げシナリオを織り込んでいたこと。9月の米小売売上高が鈍化し景気減速への警戒が出たこと。そしてAI関連企業の過剰投資と、それに紐づく社債・データセンター融資への信用不安です。市場は「インフレは高いが、景気のほうがもっと心配」という優先順位をつけた。だから安全資産としての米国債が買われ、長期金利が下がった——という構図です。
この解釈でいくと、BTCの戻しは「利下げ期待による上昇」ではありません。金利が下がったから戻したのであって、その金利低下の原因は景気不安です。喜ばしい理由での低下ではない、という点は押さえておきたいところです。
ここに10月27〜28日のFOMCがぶつかります。現在の政策金利は3.75〜4.00%。CME FedWatchでは0.25%利上げの確率が約34%、据え置きが約66%と報じられています。3分の1が利上げを見ている、いわゆる「ライブ会合」です。
ややこしいのは、FRB高官の発言が確率をさらに読みにくくしていることです。ボウマン副議長、ウォラー理事、NY連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁はいずれも「追加利上げが必要になる可能性はあるが、差し迫った状況ではない」という立場です。否定はしないが急がない。織り込みようがないので、結果が出るまでボラティリティが残ります。
もうひとつ。10年債利回り5.08%という水準自体が異常です。政策金利が3.75〜4.00%なのに長期金利が5%台。市場が将来のインフレか財政リスクを相当に警戒しているサインでしょう。無リスクで5%取れる環境は、無配資産にとって構造的な向かい風であり続けます。
IFAとしてご相談を受ける立場から1つ。こういう局面で最も多いのが「今は買い増しか様子見か」というご質問です。ただ、昨日みたいに日経平均が4.9%下げ、BTCが一時8万ドルを割り、それでも翌朝には戻している。日次の判断で当てに行くのはプロでもほぼ無理です。むしろお伝えしているのは、ポートフォリオ全体で暗号資産が何%になっているかを、下がった今の値で計算し直してくださいという話です。9月末に5%だった人は今は4%台かもしれません。そのズレを埋めるかどうかは、相場観ではなく配分ルールとして決められます。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気側。ビットワイズCIOのマット・ホーガン氏は、AIの行き先がどちらでもBTCには追い風だと主張しています。AIバブルが崩壊すればデータセンター向け融資がデフォルトし2008年型の後退が来るが、政府救済の確率は「ほぼ100%」で、マネーサプライ拡大を通じてBTCは最終的に大きく上昇する。逆にブームが続けば希少資産——土地、美術品、金、ビットコイン——の価値が上がる。「AIがどうなるかは長期的には関係ない」が彼の言葉です。本人もリスクとして量子コンピュータや各国政府の協調的な取り締まりを挙げ、2020年に数日で約50%下落した事実にも触れています。
弱気側。足元の資金の流れは素直に弱いです。ETFは10月14日にBTC・ETH合計で約3億9,000万ドルの純流出。ETF純資産総額もBTCで1週間前の1,113億ドルから1,088億ドルへ減っています。イーサリアムETFの連続流出は特に長引いており、ETHの7日間騰落がBTCに劣後しているのはこの影響でしょう。そしてロング清算が8億8,000万ドル出たということは、レバレッジを積んだ買い手がそれだけ退場したということでもあります。建玉が再構築されるまで、上に行く力は弱いままです。
どちらが正しいか。ホーガン氏の議論には「長期的には」という前提がつきます。長期で正しいことと今月のポジションとして正しいことは別物です。逆に弱気論もETFフローという足元の数字に依拠しているので、フローが反転すれば根拠を失います。両方が成り立つ、というのが今のいちばん誠実な答えでしょう。
今後の注目イベント・指標
- 10月27〜28日:米FOMC——政策金利3.75〜4.00%に対し利上げ確率は約34%。CPI・PPIがともに上振れた直後の会合で、声明と記者会見の文言が最大の焦点です。
- 10月29〜30日:日銀金融政策決定会合——日銀の公表予定でも次回はこの日程。ドル円が158円台で推移するなか、FOMCの翌日という順番がややこしい材料です。
- 11月12日:USDCへのEBA・ACPR二重監督開始——EU圏のステーブルコイン規制が、規則の整備から実際の監督へ移る節目です。
- 随時:米ETFの日次フローとAI関連企業の社債市場——フローが反転するか、そして昨日の金利低下の主因だったAI関連の信用不安が落ち着くか。どちらもFOMCへの織り込みを左右します。
まとめ
昨日は日本株が歴代3位の下げ幅を記録し、BTCも一時8万ドルを割り込みました。でも今朝の数字を見れば8万2,270ドルで24時間プラス、Fear & Greedも52で中立圏。崩れてはいません。
一方で、戻した理由が米長期金利の低下であり、その低下の理由が景気と信用への不安だという点は、素直に喜べる話ではありません。インフレ指標は4年ぶり高水準なのに、市場はそれよりも景気を心配している。このねじれが解けるまでは、上にも下にも振れやすい相場が続くはずです。
10月27〜28日のFOMCは利上げ確率が約34%という最も読みにくい状態で迎えます。FRB高官も「必要かもしれないが急ぎはしない」。誰にも答えが見えていません。だからこそ、相場観を研ぎ澄ますより自分の配分を数え直してほしい、とお伝えしています。その差を埋めるか放っておくかは確率の話ではなく、ご自身のルールの話です。ルールがある人は、こういう朝にそれほど慌てません。なお売買を伴う場合は損益計算の方法も絡みますので、頭に入れておいていただけると安心です。
今日も良い一日を。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を大きく下回る可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


