おはようございます。10月17日土曜日の朝です。前夜の米国市場はナスダックが2.1%安と1カ月ぶりの安値圏まで押されました。AI・半導体への売りが止まりません。ところがビットコインは、同じ時間帯に1%も下げていない。そして同じ夜、ビットコインを保有する企業の株は二桁下落しました。この3つを並べると、いま市場が何を売っているのかが見えてきます。
主要マーケット動向
日本時間10月17日午前6時56分時点で、ビットコインは8万1,563ドル。24時間で0.86%安、7日で1.12%安です。30日では7.45%高を維持しており、トレンドが崩れた形ではありません。イーサリアムは2,413ドルで24時間1.74%安。ビットコインの倍ほど下げています。暗号資産の時価総額は2兆7,300億ドルで24時間1.04%減(出所:CoinMarketCap)。
前夜の米国市場は、こうなりました(出所:OANDA証券)。
- ダウ平均 52,002.41ドル(175.28ドル安、約0.3%安)
- ナスダック総合 26,140.04(572.99ポイント安、2.1%安)
- 米10年債利回り 5.07%(一時5.13%まで上昇)
- ドル円 158.02円/WTI原油 101.41ドル(3.44ドル高)/金 4,181.1ドル
ダウとナスダックの差がこれだけ開いたのは、売られたものが偏っていたからです。マイクロン、インテル、AMD、デル、KLAテンコールが3〜5%下落。AIデータセンター向けのコアウィーブは8%安、週間では20%超の下落です(出所:CoinDesk)。
原油が1カ月ぶり高値まで戻ったのも気になります。サウジアラビアの東西パイプラインが攻撃対象になったとの報道で、直近10日で16%上昇。金利が下がりきらない理由のひとつがここにあります。長期金利5%台の重さはこちらの記事で整理しています。
重要ヘッドライン
- ビットコイン関連株が軒並み急落──ストラテジー(MSTR)が9.2%安、セキュリタイズが13.4%安、コインベースが3.5%安、サークルが4%安。ビットコイン現物がほぼ動かなかった夜に、これだけの差が出ました。
- ETFの資金は10月累計で5億ドル超の流出──米ビットコイン現物ETFの10月の純フローは、15日までの11営業日で5億3,480万ドルの流出。15日単日はわずか510万ドルの流入で、プラスだったのはブラックロックのIBITだけでした(出所:TFTC)。イーサリアムETFは約6,000万ドルの流出、ソラナETFは9営業日連続の流出です。
- レジャー端末の改ざん被害が約161億円に──分析会社ビットクエリーは15日時点で6チェーン・324ウォレットから約1億200万ドルが流出したと推計しました(出所:JinaCoin)。11日朝の時点では約147億円でしたので、推計は膨らんでいます。
- リップルが機関向けRWAスワップを開始──15日、「Ripple Prime」で株式・指数・ETF・金属・FXなど100を超える市場を参照するスワップを始めました。24時間365日の取引・決済で、法域によってはRLUSDを担保に使えます。
- SBIが円建て・ドル建てステーブルコインの接続試験を検討──SBIホールディングスとスターテイル・グループは16日、米ドル建てOUSDを推進する連合「Open Standard」への参加を発表。SBI新生信託銀行が発行するJPYSCとの相互運用試験を検討するとしています。ただし現時点でJPYSCはSBI VCトレードの口座内でしか動かせず、商用サービスが始まるわけではありません。国内の全体像はこちらの記事にまとめてあります。
テーマ深掘り:「ビットコインが株と切れた」は半分だけ正しい
ナスダックが2.1%下げた夜に、ビットコインは0.86%しか下げなかった。この事実だけを取り出すと、ビットコインがようやく株式から独立した、という話になりそうです。実際そういう論調も出ています。
ただ、同じ夜にストラテジーが9.2%、セキュリタイズが13.4%下げています。「ビットコインは強かった」と「ビットコイン関連は弱かった」が同時に起きた夜だったわけです。筋の通る説明が3つあると思っています。
第一に、暗号資産側のレバレッジがもう抜けている。デリバティブの建玉は4,101億ドルで、30日で11.4%減りました。1年前の2025年10月17日が年間最大の1兆500億ドルでしたから、いまは当時の4割ほどです。16日のビットコイン清算額は4,990万ドルで前日比76.8%減。株が崩れたときに連鎖的に投げさせられる玉が、そもそも積まれていません。
第二に、ETF経由の売り圧も買い圧も出ていない。前日の夕方にETFの資金フローが止まった意味を書きましたが、その状態が続いています。純資産総額は1,078.6億ドルで、1週間前の1,110.5億ドルから減少。パイプが詰まっているというより、誰も水を流していない感じです。
第三に、株の形で持つと「資金調達コスト」というリスクが乗る。ゴールドマン・サックスのアマンダ・ライナム氏は、AI関連の社債が「資金調達コスト議論の震源地にある」と指摘しています。今週、AI関連のスプレッドは25ベーシスポイント拡大した一方、非AI関連はほとんど動いていません。ビットコインを借入や増資で買い増す企業も、AIデータセンターを建てる企業も、同じ「資金を調達して資産を積む」モデルです。資金の値段が上がれば、資産の値動きとは別の場所で株価が削られます。
ここは相談を受ける立場から申し上げておきたいところです。「取引所の口座開設は面倒だから、ビットコインを持っている会社の株を買う」という選択をされる方は少なくありません。特定口座で買えて損益通算もできるので、気持ちはわかります。ただ昨夜の値動きは、その2つが別の商品だという実例でした。株の形で持つと、価格変動に加えてその会社の資金調達環境と希薄化リスクが上乗せされます。下がるときに現物より深く下がりやすいのは、構造上そうなっているからです。
では「レバレッジが抜けたから下がりにくい」は強さなのか。ここは正直わかりません。24時間の総出来高は766億ドルで、7日前から36.5%減りました。値が動かないのは押し返す力が強いからではなく、売買している人が減っただけ──という可能性を、私は否定できないと思っています。板が薄い相場は、動き出すと一方向に走ります。
そもそもビットコインと米株の相関は時期によって伸び縮みします。セクター固有の売りでは切れて見えても、流動性そのものが縮む局面では一緒に下がる。1日の値動きを「構造変化」と呼ぶには、まだ材料が足りないかもしれません。
なお今日は土曜日。月曜まで株式市場は止まり、暗号資産だけが動く48時間に入ります。金曜に株の下げを拾わなかったぶんを週末に取りに来るのかどうか。月曜朝の水準が、ひとつの答え合わせになります。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気の側。バイナンスのキャサリン・チェン氏は、CPIをきっかけにした今回の売りを「センチメントのショックであって、構造的な断絶ではない」と評しています。インフレは10月前後にピークを打ち、2027年3月までには明確な鈍化が見えるという見立てです。この読みが当たるなら、金利の天井が見えた時点で暗号資産には追い風が吹きます。恐怖・貪欲指数は50の「中立」。1カ月前の64(貪欲)から下がってきましたが、パニックの水準ではなく、買い戻しの余地は残っています。
弱気の側。前述のライナム氏の指摘は、裏返せば「AI関連の資金調達が詰まれば、暗号資産の企業需要も一緒に詰まる」という話です。原油が10日で16%上がった状況でインフレが素直に落ちると見るのは、やや楽観的かもしれません。実際、12月のFOMCでの利上げを予測市場は76%程度と織り込んでいます(10月12日時点、出所:KuCoin News)。ETFから10月累計で5億ドル超が抜けている事実も、軽い話ではありません。
ウォーシュFRB議長自身は16日、「会合について予断は持たない」と述べて方向性を示さず、そのうえでAIブームは物価上昇圧力の一因になりうるとの認識を示しています。利上げを完全に捨てていない、と読むのが自然でしょう。10月の追加利上げ確率はCPI発表後に大きく下がりましたが、12月に先送りされただけ、という見方は十分成り立ちます。
今後の注目イベント・指標
来週の日程は以下のとおりです(出所:みんかぶ/DZH、日本銀行)。
- 10月19日(月) 中国7〜9月期GDP、9月鉱工業生産・小売売上高
- 10月20日(火) 米9月住宅着工・建設許可件数/英9月雇用統計
- 10月21日(水) 英9月CPI、米20年債入札
- 10月22日(木) 米新規失業保険申請件数、9月景気先行指数
- 10月23日(金) 米10月PMI速報、ミシガン大消費者信頼感(確報)
- 10月27〜28日(火〜水) FOMC。政策金利は3.75〜4.00%。据え置き予想が優勢ですが、声明文の表現が12月の織り込みを動かします
- 10月29〜30日(木〜金) 日銀金融政策決定会合。30日に「展望レポート」の基本的見解。ドル円158円台での会合です
- 11月3日(火) 米中間選挙。規制法案(CLARITY法)の行方に直結します
まとめ
「ナスダックが2%下げてもビットコインは落ちなかった、やはり別の資産だ」と読むこともできます。レバレッジが抜けきった市場は、外から来る衝撃に対して以前より鈍いはずです。それは悪いことではありません。
いっぽうで、同じ夜にビットコインを持つ会社の株が9%、13%と削られたことも忘れないでおきたいところです。「ビットコインに投資する」の中身が現物なのか株なのかで、昨夜のあなたの資産残高はまったく違う数字になっていました。暗号資産の比率を把握している方は、それが現物経由なのか株経由なのか、いちど分けて数えてみてください。意外とごちゃ混ぜになっている印象です。
そして、動かない相場は安全な相場とは限りません。出来高が3割以上細っているなかでの値持ちのよさを、強さの証明と読むのは少し早い気がしています。来週後半のFOMCと日銀で、止まっていた水が流れ出すかもしれません。それまでは、ポジションを大きくするタイミングではないと私は考えています。月末までの段取りを確認したい方は、年内やることリストもあわせてご覧ください。
よい土曜日をお過ごしください。
※本記事は執筆時点の情報に基づく情報提供であり、特定の暗号資産や金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、投資元本を割り込む可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


