週末の暗号資産市場は、ビットコイン(BTC)が6万3,000ドル台で小動きとなり、地政学リスクの後退で持ち直した値位置を維持している。市場の関心は、すでに目前に迫った日本時間16〜17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)へと移った。今回は5月にジェローム・パウエル氏の後任として就任したケビン・ウォーシュ新議長にとって初の金融政策決定会合となる。あわせて、英スタンダードチャータードが「暗号資産の冬は終わった」と宣言する一方、ギャラクシー・デジタルは慎重姿勢を崩さず、「底打ち」をめぐる見方は割れている。本稿(夕刊)では、週明けの重要イベントと底打ち論争を中心に整理する。
主要マーケット動向:BTCは6.3万ドル台を堅持、ETHは相対的に弱含み
ビットコインは6月13日(土)に前日比約0.6%高の6万3,766ドルで推移し、週末も6万3,000〜6万4,000ドルのレンジを維持した(JinaCoin)。米Coinbaseの価格データでも直近は6万3,800ドル前後で、過去7日間ではおよそ4%の上昇となっている(Coinbase)。為替は1ドル=約160円で推移しており(Trading Economics)、円換算ではおおむね1,020万円前後の水準だ。週末は取引が薄く、値動きが限定的になりやすい点には留意したい。
もっとも、価格が落ち着きを取り戻す一方で、市場心理は依然として慎重だ。Crypto Fear & Greed Index(恐怖と強欲指数)は10台〜10台後半の「Extreme Fear(極度の恐怖)」圏にとどまっており、価格の底堅さと投資家心理の冷え込みには「ねじれ」が残る(CoinDesk Japan)。
イーサリアム(ETH)はBTCに比べて戻りが鈍い。6月12日の始値は1,671ドルで、その後も1,600ドル台での推移が続いており、ビットコイン・ドミナンス(BTCの時価総額シェア)の上昇が示すとおり、資金はアルトコインよりBTCに集中しやすい地合いが続いている(Yahoo Finance)。
重要ヘッドライン
① 週明けFOMCはウォーシュ新議長の「デビュー戦」
16〜17日(米東部時間16〜17日、結果発表は日本時間18日未明)のFOMCは、ケビン・ウォーシュ新議長が議事を取り仕切る初めての会合となる。ウォーシュ氏は5月13日に上院本会議で54対45の僅差で承認され、パウエル前議長の任期満了(5月15日)を経て、5月22日に第17代議長として宣誓就任した(米連邦準備制度理事会、NPR)。市場では今回会合での金利据え置きが有力視されているものの(Polymarket)、新議長の政策スタンスや会見でのトーンは未知数で、暗号資産を含むリスク資産の重要な試金石となる。
② スタンダードチャータードが「暗号資産の冬の終息」を宣言
英スタンダードチャータードのデジタル資産調査責任者ジェフリー・ケンドリック氏は、6月5日に記録した5万9,375ドルが今サイクルの底値だったとし、「暗号資産の冬(クリプトウィンター)は終わった」との見解を示した(CoinDesk、CoinPost)。同氏は2026年末の価格目標を10万ドルと据え置いている。一方、ビットコインは2025年10月6日に付けた史上最高値12万6,000ドルから約53%下落した経緯があり、強気転換と見るかは慎重な検証が必要だ。
③ 米現物ETFは「記録的流出」から資金反転の兆し
米ビットコイン現物ETFは6月上旬に週間で約34億ドルという、2024年1月の上場以来最大級の純流出を記録した(Investing.com)。その後は流出が一服し、直近では12本のファンドすべてで流出が止まり、ブラックロックのIBITを中心に小幅な純流入へ転じる日も出てきた(news.bitcoin.com)。CoinPostは「先週は約10億ドルの純流入」と伝えており、機関マネーの基調に変化の兆しがうかがえる(CoinPost via Yahoo!ファイナンス)。ただし反転が定着したと判断するのは時期尚早で、来週のFOMCを通過するまでは見極めが必要だ。
④ 国内:金融庁の「分離課税20%・ETF解禁」が制度整備の柱に
国内では、金融庁が令和8年度(2026年度)税制改正大綱で示した暗号資産課税の見直しが引き続き注目される。暗号資産の譲渡益を、現行の最高55%の総合課税から、株式などと同じ一律20%の申告分離課税へ引き下げる方針が明記された(日本経済新聞、ビットタイムズ)。あわせて投信法施行令の改正を前提に暗号資産ETFの組成を可能とする方向も示されている。適用は金融商品取引法改正の施行翌年(2028年1月が有力)と見られ、制度面の地ならしが進む。
テーマ深堀り:ウォーシュ新議長の初陣、暗号資産はどう動くか
今回のFOMCが市場の最大の焦点となるのは、単なる金利の方向感だけでなく、新議長の「色」が初めて明らかになる場だからだ。ウォーシュ氏はかつてFRB理事を務めた経歴を持ち、市場では従来のFRBよりもタカ派寄り(金融引き締めに前向き)と見る向きと、規制緩和や市場機能を重視するとの見方が混在する。
暗号資産にとって金利は重要な変数だ。一般に利上げや高金利の長期化はリスク資産に逆風、利下げ観測の高まりは追い風となりやすい。今回は据え置きが有力視されるものの、政策金利の見通しを示すドットチャートや会見でのインフレ・景気認識が、利下げ時期の織り込みを左右する。直近では物価指標が想定より強含む場面もあり、市場は「利下げの後ずれ」をにらんでいる。
加えて、新議長就任そのものが「FRBの独立性」を問う論点として意識されている。承認が54対45というFRB史上まれにみる僅差だった事実は、市場の警戒感の表れでもある。会見で政治的圧力との距離感やデータ重視の姿勢がどう語られるかは、ドルや米金利を通じて暗号資産にも波及する。週明けは値動きが荒くなりやすい局面であり、過度なレバレッジは禁物だ。
識者の見方:底打ち論争は強気・弱気で真っ向対立
強気派の代表格はスタンダードチャータードだ。同行は6月5日の5万9,375ドルを明確なサイクル底とみなし、年末10万ドル回帰のシナリオを維持する。背景には、現物ETFの資金流出が「構造的ではなく循環的」との分析や、市場心理が極度の悲観に振れたこと自体を逆張りの好機と捉える見方がある(CryptoBriefing)。
一方、慎重派のギャラクシー・デジタルは、サイクル底をより低い4万〜4万6,000ドル(2026年後半)と想定し、底入れ宣言には時期尚早との立場をとる(BeInCrypto)。恐怖指数が極度の悲観圏にとどまること、ETFの反転が確認段階にあること、FOMCという不確実性が控えることを踏まえれば、両者の見解が割れている現状こそが相場の難しさを物語る。投資家は一方の見立てに依存せず、複数シナリオで備える姿勢が求められる。
今後の注目イベント・指標
最大の注目は16〜17日のFOMC(結果発表は日本時間18日未明)と、ウォーシュ新議長の初会見だ。政策金利の据え置きが有力視されるなか、ドットチャートと会見トーンが焦点となる。あわせて現物ETFの日次資金フロー(Farside Investors等)、米国の物価・雇用関連指標、国内では金融商品取引法改正に向けた金融庁の動向を引き続き確認したい。
まとめ
週末のBTCは6万3,000ドル台を堅持し、地政学リスク後退後の値位置を維持した。ただし市場心理は「極度の恐怖」圏にとどまり、価格と心理のねじれが続く。週明けはウォーシュ新議長の初FOMCが最大の試金石だ。底打ちをめぐる強気・弱気の対立、現物ETFの資金反転の持続性、そして国内の税制・制度整備——いずれも来週にかけて見極めが進む。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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