前夜、市場が最も注目していた米6月雇用統計は、非農業部門雇用者数がわずか5.7万人増と市場予想を大きく下回る「弱い」結果となった。これを受けて労働市場の減速観測が広がり、暗号資産市場ではビットコイン(BTC)が約4%上昇して7月の高値となる6万2,000ドル台をつけた。イーサリアム(ETH)や主要アルトも軒並み反発し、金利観測の変化がリスク資産を押し上げた一夜となった。本稿(朝刊)では、前夜の米雇用統計の中身と市場の反応、揺れ動くFRBの利上げ観測、そして本日の日本市場・アジア時間の注目点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは7月高値6万2,000ドル台、雇用統計で反発加速
ビットコインは7月2日、米6月雇用統計の下振れをきっかけに約4%上昇し、日中に7月の高値となる6万2,038.35ドルをつけた。約10日ぶりの6万2,000ドル回復となる(Crypto Briefing、CoinDesk(Live markets))。その後はやや上げ幅を縮め、CoinGeckoの価格表示では7月2日午後3時20分(米東部時間、日本時間3日午前4時20分ごろ)時点で1BTC=6万1,471.76ドル前後で推移した(CoinGecko)。国内円建てでは、おおむね1,000万円台前半のレンジで底堅い動きとなっている。
上昇はアルトコインでより顕著だった。イーサリアムは一時1,700ドル台まで買われ、24時間で3〜7%上昇。XRPは1.10ドルへ約5.6%高と1ドルの節目を明確に回復し、ソラナ(SOL)も6〜7%上昇した(Yahoo Finance、CoinDesk(Live markets))。とりわけユニスワップ(UNI)は24時間で約15%高と際立ち、Robinhood(ロビンフッド)のブロックチェーン上で主要な自動マーケットメーカー(AMM)として稼働を始めたことが材料視された(CoinDesk)。もっとも、市場心理を示すFear & Greed指数はなお「11(Extreme Fear=極度の恐怖)」と低水準にとどまり、反発が本格的な地合い改善につながるかは見極めが必要な段階だ(CoinGecko)。
重要ヘッドライン
米6月雇用は5.7万人増と大幅下振れ、失業率は4.2%に低下
米労働省労働統計局(BLS)が7月2日に発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比5.7万人増と、市場予想の約11.4万〜11.5万人増を大きく下回った。5月分も12.9万人増へ下方修正され、雇用の減速感が強まった。失業率は前月の4.3%から4.2%へ低下したものの、これは労働参加率が0.3ポイント低下して61.5%(2021年3月以来の低水準)となったことが主因で、必ずしも労働市場の強さを示すものではない。レジャー・接客業が6.1万人減となるなど、業種によるばらつきも目立った(BLS 雇用統計、CNBC)。
FRBの利上げ観測はやや後退、それでも9月利上げ確率は6割超
雇用の弱さを受けて、市場では追加利上げを急ぐ理由が薄れたとの見方が広がった。もっとも、CMEグループのFedWatchによれば9月の利上げ確率はなお約64%と高止まりしている(ABC News、CME FedWatch)。ケビン・ウォーシュFRB議長は物価安定への強いコミットメントを繰り返し表明しており、インフレ警戒と労働市場減速のはざまで、金融政策の綱引きが続く構図だ。
6月ETFは最悪でもXRP・HYPEには資金流入
6月の米現物ビットコインETFは月間で約45億ドルの純流出と、上場以来で最悪の月となった。一方で、資金は完全に暗号資産から逃げたわけではなく、XRP連動型ETFには6月に5,940万ドル、ハイパーリキッド(HYPE)関連ファンドには1億6,100万ドルの純流入があった(CoinDesk)。ビットコイン・イーサリアムから他銘柄への資金シフトがうかがえる。
日本、暗号資産の20%分離課税は2028年から
国内では制度整備の議論が続く。政府・与党は暗号資産取引で得た所得への税率を株式や投資信託と同様の一律20%へ引き下げる方針で、2028年1月からの適用が見込まれている。金融庁は暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)の枠組みへ移す方針も掲げており、投資商品としての位置づけを整えつつある(日本経済新聞(税制)、日本経済新聞(金商法移行))。
テーマ深堀り:弱い雇用は暗号資産の「追い風」か——反発の持続力を読む
今回の反発の背景を整理すると、直接の引き金は「弱い雇用統計」だが、その意味合いは一様ではない。まず、雇用の減速はFRBが景気を過度に冷やす必要性を弱め、利上げ観測を後退させる。金利上昇圧力が和らげば、ビットコインのような金利に敏感なリスク資産に資金が向かいやすくなる——これが今回の上昇の基本メカニズムだ(Yahoo Finance)。
ただし、楽観に傾きすぎるのは早計だ。第一に、CMEの金利先物では依然として9月利上げ確率が6割を超えており、市場は「利上げ休止・利下げ転換」を織り込みきってはいない。第二に、6月の現物ビットコインETFが過去最悪の資金流出を記録したように、機関投資家の需給は依然として弱い。今回の上昇はETFを通じた実需が戻った結果というより、金利観測の変化に反応した短期的な戻りの色彩が濃い。第三に、失業率低下が労働参加率の低下という「弱い理由」による点も、景気の底堅さを素直に示すものではない。今後は、賃金の伸び(6月は前月比+0.3%)がインフレ再燃を招かないか、そして本日以降のアジア・欧米市場でこの反発が維持されるかが焦点となる。日本の読者にとっては、円建てで1,000万円前後という水準が定着するか、国内取引所の出来高が反発局面で膨らむかも見どころだ。
識者の見方:反発は「転機の兆し」か「弱い地合いの戻り」か
強気派は、雇用の減速が利上げサイクルの終わりを引き寄せ、リスク資産全体の反発余地を広げると見る。一部の市場関係者は、労働市場が軟化する局面ではビットコインに上昇余地があると指摘してきた。一方で慎重派は、Fear & Greed指数が「極度の恐怖」にとどまり、ETFからの資金流出も止まっていない点を重視する。金利先物がなお利上げ寄りである以上、今回の戻りは持続力に乏しく、6万ドル前後を挟んだ神経質な値動きが続くとの見方だ。強気・弱気いずれの立場も、共通して「本日以降の米国市場の反応」と「次の物価指標」を最大の分岐点として挙げている。
今後の注目イベント・指標
本日は米国が独立記念日(7月4日)の連休を前に、市場参加者が減少しやすい点に留意したい。今後2週間では、次回の米消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)、FRB高官の発言が金利観測を左右する。ETFの資金フロー(Farside Investors等)、日本では金融庁の制度関連の発表や国内上場企業の暗号資産関連IRも継続的な確認ポイントだ。
まとめ
前夜の米6月雇用統計は5.7万人増と大きく下振れし、利上げ観測の後退を背景にビットコインは7月高値の6万2,000ドル台へ反発、アルトも総じて上昇した。ただしETF資金流出や「極度の恐怖」の心理指標は残り、金利先物はなお利上げ寄り。反発の持続力は本日以降の市場反応と次の物価指標次第だ。過度な楽観にも悲観にも傾かず、需給と金利の両面を冷静に見極めたい。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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