ビットコイン(BTC)は週末の薄商いのなか6万1,000ドル前後でこう着している。前日5日の米5月雇用統計の上振れを受けた急落から大きな戻りはなく、史上最高値からの下落局面が続く。今週は2024年7月以来の急落週となり、心理的節目の6万ドルを一時割り込んだ。週明けは6月9日の米下院公聴会、来週半ばのFOMCを控え、暗号資産税制や金融政策が焦点となる。朝の時点で、前夜の米国の動きと今週の予習をまとめる。
主要マーケット動向:BTCは6万1,000ドル付近で下げ渋り
ビットコインは日本時間6月6日(土)のアジア時間に節目の6万ドルを下回ったあと、出来高の乏しい戻り買いで6万1,000ドル付近まで持ち直した。前日5日の米国時間には一時5万9,100〜5万9,339ドルまで下押しし、2024年10月以来の安値を記録している(出典: Bitcoin News Digest(6/6)、CoinDesk)。テクニカル上の節目である200週移動平均線(約6万1,700ドル)はこれまで下値支持として機能してきたが、今回これを割り込んだことで上値抵抗に転じた点に注意が必要だ(出典: Bitcoin News Digest(6/6))。
下落幅は大きく、今週は2024年7月以来の急落週となった。2025年10月の史上最高値(約12万6,200ドル)からは5割超下回る水準だ(出典: CoinDesk、CNBC)。1ドル=約160.3円(6月6日時点、出典: Wise)で換算すると、6万1,000ドルはおよそ978万円にあたる。
イーサリアム(ETH)も軟調で、6月5日の米国時間に一時1,656〜1,666ドル台まで売られた(出典: Yahoo Finance)。円換算ではおよそ27万円。前日には先物の建玉整理が一巡し、ビットコイン先物の総建玉(OI)はコインの清算を伴って約25%減少し、約232億ドルと4月上旬以来の低水準まで縮小した。24時間の清算総額は約18億ドル、清算されたトレーダーは約34万9,500人に達し、その大半がロング(買い持ち)だった(出典: Bitcoin News Digest/CoinGlass)。過度なレバレッジが一掃された点は、短期的には需給の重しが軽くなったとも読める。
オンチェーン指標では、短期保有者の損失確定売りを示すSOPR(支出済みアウトプット利益率)と、200日移動平均からの乖離を測るメイヤー倍率がいずれも過去データの下位5パーセンタイル圏に入った。歴史的には長期の蓄積(仕込み)局面と重なりやすい水準とされる(出典: Bitcoin News Digest(6/6))。ただし週末は流動性が細く値動きが振れやすく、方向感の確認は週明けに持ち越しとなる。
重要ヘッドライン
CMEがビットコイン・ボラティリティ指数先物を新規上場
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は米東部時間6月5日、ビットコインのボラティリティ(変動率)指数を対象とする先物の取引を正式に開始した。最初のブロック取引はDV ChainとMonarq Asset Managementの間で約定したという。24時間取引で現金決済の同商品は、価格の方向性(デルタ)とは切り離して純粋な変動率(ベガ)そのものを売買できるのが特徴で、従来型市場にあった週末の値付け空白を解消する狙いがある。CMEの暗号資産関連商品の1日平均出来高は前年比38%増の26万6,900枚に拡大しており、機関投資家向けインフラの整備が一段と進んだ格好だ(出典: Bitcoin News Digest/CME、CME公式リリース)。相場急落のさなかでも、規制された土俵での商品拡充が続いている点は中長期で見落とせない。
モルガン・スタンレーとギャラクシー、現物ETPの「現物拠出」で提携
伝統的金融の参入も進む。モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントとギャラクシー・デジタルは、富裕層顧客が保有するビットコイン・イーサリアム・ソラナといった現物資産を貸し出し、その対価として現物ETP(上場投資商品)の持ち分を「現物拠出(in-kind)」で受け取れる仕組みで提携した。課税対象となる売却を発生させずにETPへ移行でき、オンボーディング時間を約75%短縮、貸出の最低額も2,500万ドルから500万ドルへ引き下げるという(出典: Bitcoin News Digest/The Block)。価格下落局面でも、機関投資家の運用導線を太くする動きは続いている。
米大手銀がブロックチェーンで共同戦線、JPモルガン・BofA・シティ
米銀大手も動いた。JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティの3行は、トークン化資産を扱う共有のブロックチェーン基盤で連携する方針を明らかにした。決済や資産のトークン化を巡り、伝統的金融が暗号資産・分散型台帳技術を本格的に取り込む流れが鮮明になっている(出典: CoinDesk)。短期的な相場のセンチメントとは別に、インフラ面の地殻変動が進んでいる。
イリノイ州が暗号資産取引に0.2%の新税、2027年施行
規制面では州レベルの新たな動きが出た。米イリノイ州議会は総額約559億ドルの2027会計年度予算(上院法案SB3019)を可決し、「デジタル資産特権税法(Digital Asset Privilege Tax Act)」を成立させた。2027年1月1日施行で、州内に拠点を持つ、または州民から年間10万ドル以上の収入を得る仲介業者を通じた暗号資産取引の総額に0.2%の物品税を課す。州は年間6,000万ドルの税収を見込む一方、未登録・未納は重い刑事罰の対象となる(出典: Bitcoin News Digest(6/6)、Coinness)。薄利で回すアルゴリズム型のマーケットメイカーには負担が重く、州外への流動性移動を促す懸念も指摘される。
法人最大保有のストラテジー、経営陣の株売却とアナリストの警告
最大の法人保有者ストラテジー(旧マイクロストラテジー)を巡る圧力も続く。SECへのフォーム4によると、フォン・レCEOは約1,110万ドル相当(9万3,738株)、アンドリュー・カンCFOは約392万ドル相当(3万3,062株)のクラスA普通株を6月5日に売却した。いずれも事前設定のルール10b5-1プランに基づく税負担対応で、業績連動株式(PSU)の権利確定に伴うものだ(出典: Bitcoin News Digest/StockTitan)。同社は84万3,706BTCを平均約7万5,500〜7万6,000ドルで取得しており、6万ドル割れの水準では推定110億〜120億ドルの含み損を抱える。グレースケールのアナリストは「持続的な底入れには、ストラテジー以外の買い手が現れる必要がある」と警告している(出典: The Block)。
テーマ深堀り:米国で暗号資産「税制」が動き出す──6月9日に下院公聴会
相場の急落に目が向きがちだが、今週、日本の投資家にとっても示唆に富む制度の動きが米国で進む。米下院歳入委員会(Ways and Means)は、暗号資産課税を扱う7本の法案草案を回覧し、6月9日に公聴会を開いてこれらを議論する(出典: CoinDesk、The Block)。
草案の柱は多岐にわたる。少額(デミニミス)取引やステーブルコインの利用、ネットワーク手数料への課税免除、マイニングで取得した資産の課税ルールの整理、暗号資産と証券の税務上の取り扱いの整合、暗号資産への「ウォッシュセール(損出し)」ルールの適用、慈善寄付時の鑑定要件の撤廃などが含まれる。とりわけ、マイニングやステーキングで得た報酬が「取得時」と「売却時」の二重に課税される問題の是正は、業界の税制戦略の中核に位置づけられてきた論点だ(出典: CoinDesk)。
市場構造を定める「デジタル資産市場明確化法(CLARITY法)」が業界最大の政策テーマである一方、税制はその「次の本命」と長く位置づけられてきた。もっとも会期は残り少なく、上院でもCLARITY法の不正資金対策(バッドアクター)条項を巡る与野党調整が続くなど、成立への道のりは平坦ではない(出典: CoinDesk)。日本でも暗号資産の税制(申告分離課税化や損益通算)は長年の論点であり、米国の議論の行方は国内の投資家心理にも間接的に影響し得る。
識者の見方:弱気と強気の綱引き
短期では慎重論が優勢だ。雇用の堅調さを背景に、CMEのFedWatchは12月の利上げ確率を約42.7%まで織り込み、予測市場ポリマーケットでは2026年中の利上げ確率を約52%と見ている。仏BNPパリバは「12月以降に3会合連続の利上げ」を予想するなど、金利上昇シナリオがリスク資産の重しとして意識される(出典: Bitcoin News Digest(6/6))。金利が上がれば、利息を生まない暗号資産には相対的に逆風となりやすい。
一方で、前述のSOPRやメイヤー倍率が示すように、足元はオンチェーン上「短期の投げ売り」が主体で、長期保有者の構造的な売却ではないとの見方もある。歴史的な蓄積ゾーンに入ったとして、過度な悲観に与しない強気の声も根強い(出典: Bitcoin News Digest(6/6))。半減期サイクルやETF・法人保有といった制度的インフラを背景に、5割規模の調整後は反発してきた過去の傾向を重視する立場だ。下値不安と長期の楽観が綱引きする展開が続く。
今後の注目イベント・指標
今週は政策イベントが集中する。6月9日には米下院歳入委員会の暗号資産税制公聴会が開かれ、来週半ばの6月16〜17日にはFOMCが控える。利下げ観測が消え「利上げ」リスクまで浮上しただけに、声明とパウエル議長の発言、そして前後に発表される米5月CPI(消費者物価指数)に市場が神経を尖らせる。週明け月曜の取引再開では、200週移動平均(約6万1,700ドル)を取り戻せるか、ストラテジーの新規買いの有無、米現物ETFの資金フロー、国内の暗号資産関連株(メタプラネット等)の値動きも要チェックだ。
まとめ
ビットコインは週末を6万1,000ドル付近のこう着で迎えた。雇用統計を起点とした金利上昇が重しとなる一方、レバレッジ整理は一巡し、オンチェーンは蓄積圏のシグナルも示す。価格の急落に隠れて、CMEの新商品上場や米国の税制論議など、インフラ・制度面の前進は着実に進んでいる。週明けは公聴会とFOMCを軸に、政策の風向きを見極めたい。
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本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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