日本時間9月4日の早朝、ビットコイン(BTC)は7万7,000ドル台(約1,225万円)で膠着している。前日終値からの底堅さは維持しているものの、市場の視線はすでに今夜に集中している。米東部時間9月4日8時30分(日本時間21時30分)に発表される8月の米雇用統計(非農業部門雇用者数)が、9月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の帰趨を事実上決めるためだ。しかも今回は「利下げ」ではなく「利上げ」の可否が問われる異例の局面である。原油高が招いたインフレ再燃と、タカ派色を強めたウォーシュ新議長の下で、暗号資産は債券利回りの上昇圧力に耐えながら重要指標を待っている。今朝は、雇用統計を軸とした利上げ論争と、米欧日の大手21行が動き出したステーブルコイン連合を中心に整理する。
主要マーケット動向:BTCは7万7,000ドル台で膠着、指標待ちで動意薄
暗号資産市場は、重要指標を前に方向感を欠く展開が続いている。ビットコインは日本時間9月3日から4日にかけて7万7,000ドル台後半で推移し、CoinDeskによればアジア時間の取引で7万7,600ドル前後、24時間で約1.5%高となった。米国時間には一時7万6,400ドルまで下押ししたが、下値では買いが入った(出典:CoinDesk)。国内の相場ボードでも1BTCは約1,225万円で、24時間ほぼ横ばいだった(出典:CoinPost)。1ドル=約158円で換算すると、ドル建て価格とおおむね整合する。
アルトコインでは、この24時間はXRPが主要銘柄を主導し、約3%高の1.36ドル(約215円)まで上昇した。BNBは約2%高の692ドル近辺、ソラナ(SOL)は約2%高で100ドルの節目を維持、トロン(TRX)は約1%高の0.33ドル前後で推移した。一方でイーサリアム(ETH)は出遅れが目立ち、2,400ドル(約38万円)をやや下回る水準にとどまった(出典:CoinDesk、CoinPost)。
もっとも、週間ベースでみると地合いは弱含みだ。過去7日間ではイーサリアムが約4%安、トロンが約3%安、XRPが約3%安、ビットコインも約1%安と、8月に積み上げた上昇分をじわりと吐き出している。週間で上昇を保っているのは、ハイパーリキッド(HYPE)とジーキャッシュ(ZEC)などごく一部にとどまる(出典:CoinDesk)。
重要ヘッドライン
①9月利上げ確率は62%に低下、それでも「利上げ」がメインシナリオ
金利先物市場では、9月16日のFOMCで0.25%利上げが行われる確率が約62%と織り込まれている。前日の約67%からは低下し、1週間前の約37%からは大きく上昇した。ウォーシュ議長がジャクソンホールでタカ派的な講演を行ったことが、確率急騰の起点となった。先物市場は利下げの可能性をほぼ織り込んでいない(出典:CoinDesk)。暗号資産にとって、利上げは資金調達コストの上昇とリスク資産からの資金流出につながりやすく、上値を抑える要因となる。
②米10年債利回りは4.8%超、原油高がインフレ取引を再燃
債券市場は暗号資産と逆方向に大きく動いた。ホルムズ海峡付近での米軍の攻撃再開で原油が急伸し、インフレ取引が息を吹き返した結果、米10年債利回りは4.8%をやや上回り、2023年以来の高水準で引けた。ドル指数は100手前まで強含んだ。一方で米株は底堅く、S&P500種株価指数は7,646で引け、ダウ工業株30種平均は約277ドル高、金は1オンス約4,418ドルで推移した(出典:CoinDesk)。ビットコインはこの逆風のなかで7万7,000ドル台を守った形だ。
③米欧日の大手21行、ドル建てステーブルコインの共同発行体を設立へ
機関投資家マネーの本格参入を象徴する動きが表面化した。シティ、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、UBS、ドイツ銀行、サンタンデール、そして日本の三菱UFJ銀行(MUFG)を含む世界5地域の21金融機関が、決済とデジタル資産取引に用いるステーブルコインを発行する新会社の設立で合意した。まずドル建てのステーブルコインを2027年前半に市場投入し、将来的にはユーロなどG7通貨建てへの拡大も視野に入れる(出典:CoinDesk、crypto.news)。この構想は2025年10月に10行で開始した取り組みの拡大版であり、約1年で参加行が倍以上に増えた。既存の銀行システムが暗号資産インフラを取り込む流れが加速している。
④ビットフィネックス、平均取得単価7万6,350ドルを「防衛線」と指摘
オンチェーン分析からは、当面の下値メドが浮かび上がる。ビットフィネックスのアナリストによると、ネットワーク上のアクティブな投資家全体の平均取得単価は7万6,350ドルに位置し、ビットコインはこの水準の約50ドル手前まで下落したところで買いが入ったという。同社は季節性にも注意を促し、「9月は歴史的にBTCが弱含む月で、2013年以降の平均リターンはマイナス2.95%」と指摘した(出典:CoinDesk)。取得単価の集中する7万6,000ドル台が、目先の攻防ラインとして意識されやすい。
テーマ深堀り:今夜の雇用統計 ─ 「弱い数字」でも利上げは止まらないのか
今朝の最大の焦点は、日本時間21時30分に発表される8月の米雇用統計だ。市場予想(ダウ・ジョーンズ集計)では非農業部門雇用者数が前月比プラス5万3,000人、失業率は4.1%で横ばいとされる。労働参加率の上昇によっては失業率が4.2%へ切り上がる可能性も指摘されている(出典:CNBC、Kiplinger)。前日発表のADP雇用統計が弱含みだったこともあり、雇用の減速感自体は市場に共有されつつある。
論点は、雇用が弱くても利上げが止まらない可能性がある点だ。通常であれば「弱い雇用=利下げ観測」となるが、今回はインフレ再燃が最大の懸念材料であり、雇用の弱さだけでは緩和に振れにくい。バンク・オブ・アメリカは、ウォーシュ議長のジャクソンホール講演でインフレへの言及が61回に対し労働市場への言及が30回だったと分析し、「雇用統計は9月利上げの決定打にはなりにくい」との見方を示した。市場の関心は、利上げを9月に前倒しするか、10月・12月まで待つかへ移りつつある(出典:Benzinga)。
暗号資産にとってのシナリオは二分される。ひとつは、雇用が予想を大きく下回り、利上げ確率が押し下げられるケースだ。CoinDeskによれば、雇用の下振れが前日のADPの弱さに重なれば利上げ観測が後退し、ビットコインは再び8万ドルを視野に入れ得る。オプション市場では、雇用統計から9月11日の消費者物価指数(CPI)発表にかけての期間に、6万8,000〜7万5,000ドルの下値ヘッジが積まれる一方、現行レンジ上方のコール(上昇に賭ける権利)も保有されており、市場は両方向のリスクに備えている(出典:CoinDesk)。もうひとつは、賃金の伸びが根強く、雇用が底堅いと確認されるケースで、この場合は利上げ観測が一段と強まり、暗号資産の上値は重くなりやすい。いずれにせよ、日本の投資家にとっては21時30分の発表前後がボラティリティの高い時間帯となる点に留意したい。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派の代表格であるファンドストラットのトム・リー氏は、機関投資家マネーの流入を根拠に、ビットコインが15万ドルを視野に入れ得るとの見方を示している(出典:CoinPost)。21行によるステーブルコイン連合のように、伝統的金融が暗号資産インフラへ本格参入する構造変化が、中長期の需要を底上げするとの読みだ。
一方の慎重派は、足元の需給の弱さを重視する。米現物ビットコインETFは9月1日に約2億3,650万ドルの純流出(ブラックロックのIBITだけで約2億120万ドル)を記録し、翌2日は約1億100万ドルの純流入へ転じるなど、資金の出入りが不安定になっている(出典:Farside Investors)。ビットフィネックスが指摘する9月の弱い季節性や、利上げ観測に伴う10年債利回りの高止まりも、上値を抑える要因として意識されている。強弱材料が拮抗するなか、当面は今夜の雇用統計が方向性を決めるとの見方が優勢だ。
今後の注目イベント・指標
直近では、本日9月4日21時30分の米8月雇用統計が最大の焦点となる。続いて9月11日21時30分には8月のCPIが発表され、雇用とインフレの両面から9月利上げの是非が最終的に見極められる。そして9月16日から17日にかけて開催されるFOMCで、政策金利の判断が下される。暗号資産関連では、米ビットコイン現物ETFの日次資金フローと、ステーブルコイン供給量の動向も引き続き注視が必要だ。
まとめ
今朝のポイントは、①BTCは7万7,000ドル台で膠着し指標待ちの様相、②9月利上げ確率は62%と依然「利上げ」がメインシナリオ、③今夜の雇用統計が弱くてもインフレ懸念で緩和には振れにくい、④米欧日の大手21行がドル建てステーブルコインの共同発行体設立で合意、の4点だ。短期は雇用統計を起点としたボラティリティに、中長期は伝統的金融の参入という構造変化に、それぞれ目を配りたい。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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