9月3日夕、ビットコイン(BTC)は7万7,000ドル台後半(約1,240万円)でしっかりと推移している。前日終値から底堅さを取り戻し、日本時間9月3日20時19分(米東部時間7時19分)時点では7万7,892.97ドルまで水準を切り上げた(出典:Yahoo Finance)。今朝の記事では前夜の米国市場の反発と9月4日(金)の米雇用統計プレビューを軸に整理したが、夕方の本稿では、日中に相次いだ日本発の制度・実務ニュース――三菱UFJによるトークン化投信の実証実験、金融庁の税制・規制改革――と、113日ぶりにプラス転換したステーブルコインの資金フローに焦点を当てる。目前に迫る雇用統計を控え、相場は動意に乏しいなかでも、日本の暗号資産インフラは着実に前進している。
主要マーケット動向:BTCは7万7,000ドル台で底堅く、市場全体は小幅高
暗号資産市場は、前日の軟調から下げ渋る展開となった。ビットコインは9月3日の寄り付きが7万7,310.77ドルと前日比0.1%安だったが、その後は買いが優勢となり、米東部時間7時19分(日本時間20時19分)時点で7万7,892.97ドルへ上昇した(出典:Yahoo Finance)。1ドル=約160円で換算すると、1BTCはおよそ1,246万円となる。1週間前と比べると2.2%安だが、1カ月前比では21.8%高と、8月に築いた水準は概ね維持している。
イーサリアム(ETH)は寄り付き2,391.30ドル(前日比1.1%安)から2,402.09ドル(約38万円)へ持ち直した。約2週間ぶりの安値圏で始まったものの、下値では買いが入った(出典:Yahoo Finance)。
市場全体では、暗号資産の総時価総額が約2兆6,200億ドルと24時間で1.47%上昇。ビットコインのドミナンス(占有率)は59.57%と高止まりし、資金がアルトコインよりビットコインに集まりやすい地合いが続いている。DeFi(分散型金融)の24時間取引高は約111億ドルで、市場全体の売買代金の約15%を占めた(出典:CoinMarketCap)。
重要ヘッドライン
①三菱UFJアセットマネジメントとProgmat、トークン化投信の実証実験を開始
日本の資産運用の大手が、ブロックチェーンを使った投資信託の実装に踏み出した。三菱UFJアセットマネジメントとProgmat(プログマ)など4社が、国内籍のトークン化投資信託を実証目的で設定したことが9月3日に明らかになった。券面(受益権の表示)は従来どおり維持しつつ、原簿(受益者名簿)をオンチェーンで管理する仕組みを、実環境で検証する(出典:CoinPost)。投信のトークン化は、決済の即時化や小口化、24時間取引といった利点が期待される一方、既存の法制度・実務との整合が課題とされてきた。国内大手が実環境での検証に動いたことは、日本におけるRWA(現実資産のトークン化)普及の試金石となる。
②ステーブルコインの取引所純流入、113日ぶりにプラス転換
暗号資産の「待機資金」とされるステーブルコインの動向に、変化の兆しが出た。オンチェーン分析を手がけるアナリストのアドラー氏によると、ステーブルコインの取引所への純流入が113日ぶりにプラスへ転換した。もっとも、流入額は9月1日の1,385万ドルから3日には685万ドルへ急減しており、供給比率(SSR)も高止まりが続くことから、同氏は需給を「中立」とみている(出典:CoinPost)。純流入への転換は買い余力の回復を示唆する一方、勢いは限定的で、方向感を伴った資金流入と呼ぶには時期尚早だ。
③アトキンスSEC委員長、「クラリティ法案」の成立に期待
米国の規制整備でも進展の観測が出ている。米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は、暗号資産の市場構造を定める「クラリティ(CLARITY)法案」について、上院可決と大統領署名を経た成立に期待を示した。上院は9月15日に手続き上の採決を予定しているという(出典:CoinPost)。同法案は、暗号資産がSEC(証券)とCFTC(商品)のどちらの管轄になるかを整理するもので、成立すれば米国事業者の法的な予見可能性が大きく高まる。銀行業界との調整で難航してきた経緯があり、9月中旬の採決が焦点となる。
④XRPレジャーの1口座あたり出来高が前年比3倍に
分析会社エバーノースのリポートによると、2026年第2四半期のXRPレジャー上の分散型取引所(DEX)では、参加アドレス数が減る一方、1口座あたりの出来高が前年比で約3倍に拡大した。リップル社の米ドル連動ステーブルコイン「RLUSD」の残高は約7倍に伸び、ネットワーク全体の資産価値は四半期平均で42.6億ドルと過去最高を更新したという(出典:CoinPost)。利用の裾野は広がっていないものの、既存参加者の取引が活発化し、ステーブルコインが実需の担い手として存在感を増している構図がうかがえる。
テーマ深堀り:日本の暗号資産、「制度」と「実務」が同時に動き出した
夕方の最大のテーマは、日本の暗号資産インフラの前進だ。9月3日の三菱UFJアセットマネジメントとProgmatによるトークン化投信の実証実験は、単発のニュースではなく、日本が進める制度改革と足並みをそろえた動きとして読むべきだ。
背景にあるのが、金融庁の制度整備である。金融庁は2025年8月29日に公表した「令和8(2026)年度 税制改正要望」で、「暗号資産取引に係る課税の見直し」を主要項目に掲げた。現行制度では、暗号資産の売買益は「雑所得」として給与所得などと合算され、最大で55%(住民税含む)の累進課税が適用される。この高い税率が個人投資家やスタートアップの参入障壁になっているとの指摘は根強い。金融庁は、上場株式などと同様に税率20%の申告分離課税を適用するよう見直しを求めており、要望には暗号資産ETF(上場投資信託)の組成を可能にする税制整備も盛り込まれた。この改正要望は、2025年12月26日に公表された令和8年度税制改正大綱の主要項目にも反映されている(出典:金融庁、CoinDesk JAPAN、CoinPost)。
規制面でも動きは連動している。金融庁は暗号資産を、決済手段を主に扱う「資金決済法」から、投資家保護を重視する「金融商品取引法(金商法)」の枠組みへ移行させる方向で検討を進めており、2026年の通常国会での法改正を目指している(出典:CoinPost)。税制(分離課税・ETF)と規制(金商法への移行)という「両輪」がそろえば、国内外の機関投資家が参入しやすい環境が整い、三菱UFJのようなトークン化の実証実験が、いずれ実装フェーズへ移る土台となる。
米国が現物ビットコインETFやステーブルコイン法制で先行するなか、日本は出遅れが指摘されてきた。しかし、大手運用会社の実務的な取り組みと、当局の制度改革が同じタイミングで表面化したことは、日本の暗号資産市場が「議論」から「実装」の段階へ移りつつあることを示している。日本の投資家にとっては、将来的な税負担の軽減や新たな投資商品の登場につながり得る、中長期の重要な変化だ。ただし、税制改正はあくまで「要望・大綱」の段階であり、実際の法制化までには国会審議を経る必要がある点には留意したい。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派は、マクロ環境の変化に注目する。著名投資家のアーサー・ヘイズ氏は最新のエッセイで、ユーロ円の下落や欧州の一部銀行をめぐる信用不安が、最終的にFRB(米連邦準備制度)の資金供給拡大を招き、暗号資産相場の追い風になり得るとの見方を示した(出典:CoinPost)。中長期でも、米金融企業リバーは資金流入モデルに基づき、ビットコインが3〜5年で25万〜84万ドルに達する可能性があると試算している(出典:CoinPost)。いずれも一個人・一社の見解であり、幅のある前提に基づく点には注意が必要だ。
一方の弱気派は、目先の重い上値を警戒する。原油高と地政学リスクがくすぶり、米長期金利が高水準にあるなかでは、金利を生まない暗号資産の上値は限られるとの見方だ。9月4日の米雇用統計と9月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)という二大イベントを控え、両派とも、通過までは方向感の乏しい神経質な展開が続くとの見立てでおおむね一致している。
今後の注目イベント・指標
最大の焦点は、日本時間9月4日(金)21時30分発表の米8月雇用統計だ。失業率と非農業部門雇用者数(NFP)の結果が、9月16日のFOMCでの利上げ判断を大きく左右する。原油市場では、ブレント原油が9月3日に約95.25ドルへ小反落し、3営業日続いた上昇に一服感が出た(出典:Trading Economics)。米国とイランの軍事情勢は引き続き波乱要因だ。加えて、9月15日に予定される米上院のクラリティ法案採決、米ビットコインETFの資金フロー、日本の制度改革の続報にも注目したい。
まとめ
本日夕は、BTCが7万7,000ドル台後半で底堅く推移し、市場全体の時価総額も小幅に上昇した。日本では三菱UFJアセットマネジメントとProgmatがトークン化投信の実証実験を開始し、金融庁の分離課税・ETF解禁の動きと合わせ、「制度」と「実務」が同時に前進している。ステーブルコインの純流入は113日ぶりにプラス転換したが、勢いは限定的で需給は中立圏。相場は9月4日の米雇用統計を前に様子見ムードが強い。日本の暗号資産インフラの着実な前進を、腰を据えて見守りたい局面だ。
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免責事項:本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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