本日7月11日(土)夕方の暗号資産市場は、原油相場の落ち着きを追い風にビットコイン(BTC)が6万3,000ドル台を回復し、週末を底堅く迎えた。ただし上昇の主因は新規の買いではなく、約1億800万ドルに上るショートポジションの清算(買い戻し)だ。一方、材料面の主役はこの日、日本に移った。メタプラネットがJPYC・Progmatと「デジタルクレジット」構想を始動し、13日には「メタプラネット証券」が誕生。国際送金網のSWIFTが手がけるトークン化預金の実証には三菱UFJ銀行が唯一の邦銀として名を連ね、片山金融相は仮想通貨ETFの国内解禁に改めて意欲を示した。本稿(夕刊)では、日中アジアの値動きと、この日相次いだ日本発の制度・企業動向を軸に整理する。
主要マーケット動向:BTCは6万3,000ドル台を回復、原動力はショートの買い戻し
ビットコインは前日7月10日(金)の米国時間に2%超上昇し、6万3,000ドル台を回復した。日本時間7月11日午前2時28分にはバイナンスのUSDT建てで6万3,987ドルを付け、24時間で1.85%高となった(bloomingbit)。7月初旬に一時5万7,000ドルまで下落して年初来安値を更新していただけに、足元では6万4,000ドル台をうかがう水準まで戻している(CoinPost)。1ドル=約161円台後半で換算すると、6万3,000ドルはおよそ1,020万円強にあたる(TradingEconomics)。国内建て値でも、CoinPostのティッカーは11日日中にBTC=約1,038万円、ETH=約29万円を示した。
反発の直接の引き金は原油安だ。北海ブレント原油は中東情勢の再燃で一時1バレル=76ドル台と約2週間ぶりの高値を付けたが、供給混乱が長期化するリスクが見直され、米WTIは70ドル台前半まで下落した。BTCと原油の30日相関係数は約+0.75まで高まっており、エネルギー価格の落ち着きがリスク資産全体の心理を改善させた(NADA NEWS)。この過程で、過去24時間に暗号資産市場では計約1億7,190万ドルの強制清算が発生。うちショートの清算は約1億790万ドルに達し、買い戻しが上昇を加速させた(CoinGlass集計、NADA NEWS)。
もっとも、需給の中身は依然として慎重だ。BTCの未決済建玉の増加は0.35%にとどまり、日中の価格上昇率1.6%を大きく下回った。先物取引高は約540億ドルへ減少する一方、現物主導の買いと、先物が現物を下回る「バックワーデーション」が観測され、実需が相場を支えた(CoinPost/仮想NISHI)。テクニカルではRSIが週初の約45から50弱へ改善したが、SOPR(使用済みアウトプット利益率)は約0.993と中立の1.0を下回り、確信の回復は途上にある。目先の支持線は5万7,900ドル、上値抵抗は6万6,200ドル付近とされる(NADA NEWS)。
重要ヘッドライン
片山金融相、仮想通貨ETFの国内解禁に改めて意欲
片山さつき財務・金融担当相は7月10日、QUICK主催のセミナー「オープンQUICK2026」の基調講演で、海外で拡大する仮想通貨ETF(上場投資信託)について日本でも「解禁する方向で検討を進めたい」と述べた(日本経済新聞、CoinPost)。前提となる金融商品取引法(金商法)改正案は、暗号資産の規制根拠を資金決済法から金商法へ移す内容で、6月10日に衆院財務金融委員会で可決、11日に本会議を通過し、現在は参議院で審議中だ。今国会で成立すれば2027年度にも施行され、税制は最大55%の総合課税から一律20%の申告分離課税へ移行する見通し。金融庁は7月にも「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設する計画とされる(ビットタイムズ)。
SWIFT、ブロックチェーン台帳を稼働——三菱UFJなど17行がトークン化預金を実証
国際銀行間通信協会(SWIFT)は7月9日、ブロックチェーンを基盤とする共有台帳の稼働を発表し、6大陸17行がトークン化預金を用いた国際送金の実証を始めると明らかにした。参加行にはCiti、HSBC、UBS、スタンダードチャータードなどと並び、三菱UFJ銀行(MUFG)が唯一の邦銀として名を連ねた。24時間365日の送金を可能にする基盤で、約9カ月で構築されたという(SWIFT公式、CoinDesk、NADA NEWS)。
サークル、米OCCから国法信託銀行の設立最終承認
USDC発行大手のサークルは7月10日、米通貨監督庁(OCC)から国法信託銀行の設立について最終承認を得たと発表した。機関投資家向けのデジタル資産カストディ(保管)提供や、将来的なUSDC準備資産の自社管理を計画している(CoinPost)。ステーブルコインが伝統的な金融規制の枠組みへ組み込まれていく流れを象徴する動きだ。
米現物ETFは再び流出、英スタンチャートは年末10万ドル予測を維持
7月初旬に3営業日で計約5億1,000万ドルの流入を記録した米現物ビットコインETFは、直近で再び流出に転じた。集計では7月8日に約8,490万ドル、9日に約9,530万ドルの純流出が観測されており(日次はソースにより差がある、NADA NEWS)、機関マネーの復調はなお一進一退だ。一方、英スタンダードチャータードは2026年末のBTC価格10万ドル予測を維持し、企業のBTC売却を「ノイズ」と位置づけた(CoinPost)。
WebX2026が13日開幕、米では「CBDC禁止」条項が自動発効へ
アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX2026」が7月13〜14日に東京で開かれ、高市首相の挨拶やSBIホールディングスのタイトルスポンサー参画が予定される(CoinPost)。米国では、トランプ大統領が住宅関連法案への署名を拒否した結果、同法が自動的に成立し、連邦準備制度(FRB)による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を2030年末まで禁じる条項も発効する見込みだ(CoinPost)。
テーマ深掘り:メタプラネットが描く「ビットコイン×金融プラットフォーム」——4社でデジタルクレジット構想
この日の日本発ニュースで最も注目されたのが、メタプラネット(証券コード3350)によるBTC金融プラットフォーム構想の具体化だ。同社は7月10日、日本円ステーブルコインを手がけるJPYC、セキュリティトークン(ST)基盤のProgmat(プログマ)、そして子会社化する証券会社の計4社で、BTC・ステーブルコイン・STを組み合わせた「デジタルクレジット」領域の共同検討を始めると発表した(適時開示、日経会社情報、NADA NEWS、CoinDesk)。
構想の柱は、社債のようなクレジット商品(利息・返済条件が定まった金融商品)をブロックチェーン上で扱う点にある。役割分担は明確で、メタプラネットと新設の証券子会社がBTC関連商品とクレジット商品を組み合わせて設計・販売し、JPYCが利払いや分配の決済を担い、Progmatがトークンの発行と保有者管理の基盤を整える。BTCを裏付けや信用補完の資産と位置づけ、利払い・償還をチェーン上で完結させることも視野に入れる。背景には、日本の社債市場が大企業の公募発行に偏り、中堅・成長企業の資金調達負担が重いという課題意識がある(NADA NEWS)。
この構想を支えるのが企業インフラの整備だ。子会社化するSiiibo証券は7月13日付で「メタプラネット証券」へ商号を変更し、同日開催の臨時株主総会で正式決定される(取得価額21億円、Siiibo証券/PR TIMES)。メタプラネットのBTC保有は7月2日時点で約4万3,000BTCに達しており、これを金融商品の基盤資産とする「Project NOVA」構想の一環と位置づけられる(NADA NEWS)。ただし現時点で発行時期・利回り・商品内容は未定で、4社は法規制対応と技術検証を進めたうえで改めて公表するとしている。上場企業が自社のBTCを核に証券・ステーブルコイン・STを束ねる試みは国内でも例が乏しく、金商法移管と並行して「暗号資産を金融の本流に組み込む」動きが企業レベルで進み始めた点は、中長期の需要基盤を考えるうえで押さえておきたい。
識者の見方:原油ショックへの「適応」を評価する声、上昇の「質」を問う声
強気派は、原油ショックへの世界経済の適応を評価する。Alpine Macroのダン・アラマリウ氏は「経済全体への打撃は懸念されているほど大きくない可能性がある。世界はすでに適応している」と述べ、エネルギー由来のインフレ長期化懸念が和らいだと指摘する(NADA NEWS)。スタンダードチャータードによる年末10万ドル予測の維持や、この日相次いだ日本発の制度・企業動向の厚みも、需要の裾野を広げる材料と受け止められている。
一方、慎重派は上昇の「質」を問う。今回の反発は新規の買いではなくショートの買い戻しが主導し、未決済建玉の伸びは限定的で、SOPRは1.0を下回る。米現物ETFが再び流出に転じた点も、機関投資家の確信がなお弱いことを示す。クリプトクアントはブルスコア指数が弱気水準にとどまると分析しており、反発は一時的との見方も残る(CoinPost)。6万6,200ドルの上値抵抗を明確に抜けられるかは、来週のCPIとイベント次第だと慎重派は見る。
今後の注目イベント・指標
来週は日米で節目が集中する。国内では7月13〜14日に「WebX2026」が開催され、同14日には参議院財政金融委員会で金商法改正案の採決が見込まれ、17日の会期末までの成立が視野に入る(NADA NEWS)。米国では7月14日に6月消費者物価指数(CPI)が発表される。米CLARITY法案(暗号資産の市場構造法)は次の交渉期限が8月6日とされ(CoinPost)、7月28〜29日にはFOMCが控える。週末は流動性が薄く値動きが振れやすい点にも留意したい。
まとめ
7月11日夕のポイントは3つ。第一に、BTCは原油安を追い風に6万3,000ドル台を回復したが、原動力はショートの買い戻しで、ETFは再び流出に転じるなど需給の確信は途上にある。第二に、この日の主役は日本で、メタプラネットの4社デジタルクレジット構想とメタプラネット証券の誕生、片山金融相のETF解禁発言、SWIFT実証へのMUFG参加と、制度・企業の動きが相次いだ。第三に、来週はWebX2026、金商法改正案の採決、米6月CPIと、日米で節目が重なる。相場の耐性と、日本発の制度・企業動向を、冷静に見極めたい。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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