7月8日朝の暗号資産市場は、前夜の米国時間に一時6万4,400ドルまで駆け上がったビットコイン(BTC)が6万3,000ドル台へ押し戻され、方向感を欠いたまま週後半を迎えている。上場企業ストラテジー(旧マイクロストラテジー)による約2億1,600万ドルのBTC売却を市場が難なく消化し、米現物ETFは7月6日に2営業日連続の資金流入を記録するなど、需給の底堅さを示す材料が並ぶ。一方で、ホルムズ海峡近くでの船舶攻撃を受けた原油高とアジア株の急落が新たなリスク要因として浮上した。本稿(朝刊)では、前夜の米国市場と最新のETF資金フロー、そして「底入れか、反発一巡か」を巡るデリバティブ市場の見立てを整理し、今夜以降の焦点を見通す。
主要マーケット動向:BTCは6万4,400ドルを試すも失速、6万3,000ドル台で膠着
複数の市況データによると、ビットコインは日本時間7月7日夕方時点で6万3,170ドル前後で推移した。米CoinDeskのデータでは、同日未明に一時6万4,400ドルまで上昇したものの上値を維持できず、6万3,000ドル台前半へ反落。日中はほぼ横ばいながら、週間では約6%高を保っている(CoinDesk)。別の集計でも、BTCは6万3,562ドル前後(24時間で約0.35%安)と報じられ、6万3,000ドル台での膠着が確認できる(CoinStats)。
為替は、ドル円が7月7日に1ドル=161.87円前後と、前日比0.13%の小幅な円高方向。直近1週間は160.79〜162.80円のレンジで推移した(Bank of Japan(外国為替相場))。この水準で6万3,000ドル台を円換算するとおおむね1,020万円台、未明の高値6万4,400ドルは約1,040万円に相当する。
イーサリアム(ETH)は1,760〜1,770ドル前後(円換算で約29万円)で、週間では約11.6%高と主要銘柄のなかでも戻りが目立つ。XRPは1.13〜1.14ドル、ソラナ(SOL)は約80ドルで、いずれも前週の上昇分をおおむね維持した(CoinDesk)。暗号資産全体の時価総額は約2.27兆〜2.28兆ドル、ビットコインの占有率(ドミナンス)は56%前後で、主力銘柄への資金集中が続く。投資家心理を示す恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)は27〜28で「恐怖(Fear)」圏。前日の24「極度の恐怖」からは改善し、パニックの後退がうかがえる(CoinMarketCap(Fear & Greed)、Alternative.me)。
重要ヘッドライン
ストラテジーの2億1,600万ドル売却を市場が消化——「無売却」方針の転換後で最大
上場企業ストラテジーは今週、3,588BTCを約2億1,600万ドルで売却したと開示した。同社が長らく掲げてきた「一切売却しない(never-sell)」方針を撤回して以降、最大の売却となる。それでも相場は回復基調を崩さずにこれを吸収しており、需給面での底堅さを示す一例となった(CoinDesk(Strategy売却))。ビットコインを財務戦略の中核に据えた企業の売り圧力をどこまで受け止められるかは、今後の相場の耐久力を測る材料となる。
米ビットコインETF、7月6日に約2億6,570万ドルの流入——2営業日連続でプラス
ETF専門集計のファーサイド・インベスターズによると、米国の現物ビットコインETFは7月6日(月)にネットで約2億6,570万ドルの資金流入を記録した。7月2日の約2億2,350万ドル(6月中旬から続いた10営業日連続流出を止めた最初の日)に続く、2営業日連続のプラスとなる。牽引したのは最大手ブラックロックのIBITで、6月に流出が続いた同ファンドが約2億940万ドルの流入に転じた点が目を引く(Farside Investors、CoinDesk(7月2日の流入))。7月7日分は本稿執筆時点で未確報で、連休明けの機関投資家マネーが戻り続けるかが次の焦点だ。
ホルムズ海峡で船舶攻撃、原油高とアジア株安が再燃
前夜の米国時間には、地政学リスクが再び市場の視界に入った。ブルームバーグによると、オマーン沖でLNG運搬船が飛翔体の攻撃を受け、北海ブレント原油は約0.6%高の1バレル72.45ドル前後へ上昇。6月下旬に成立した停戦の枠組みが試される展開となった。アジア株では韓国総合指数(KOSPI)が6.7%安と急落し、サムスン電子は好決算にもかかわらず8.3%下落。米株先物も軟調に推移した。もっとも、年前半に半導体・AI株安と連動して下げてきたビットコインは、今週に限っては株安から一定の距離を保っている(CoinDesk)。
ステーブルコイン取引量が過去最高、USDCがUSDTを引き離す
ビザ(Visa)のオンチェーン分析によると、6月のステーブルコインの調整後取引量は過去最高の1.79兆ドルに達し、前月比63%、前年同月比125%の急増となった。2026年上期の累計は8.82兆ドル。シェアではサークルのUSDCが約70%を占め、テザーのUSDT(約25%)を大きく引き離した。スタンダードチャータードやBNYが独自基盤ではなくUSDCを採用する動きも広がっている(CoinDesk(Visaデータ))。決済インフラとしてのステーブルコインの実需が、着実に拡大している構図だ。
国内はメタプラネットの株主優待が7月13日始動、保有4.3万BTCで世界3位
国内では上場企業メタプラネット(東証:3350)の材料が来週前半に集中する。同社は7月2日、第2四半期に2,823BTCを約358億8,600万円で追加取得し、総保有量が4万3,000BTCに達したと発表。ビットコイン保有企業を追うBitcoinTreasuriesのデータでは、米トゥエンティワン・キャピタル(約4万3,514BTC)に次ぐ世界3位に位置する。7月13日からは大幅拡充した株主優待プログラムの利用が始まり、コインチェックによる総額2,000万円相当のBTC進呈など、暗号資産関連の特典が並ぶ(CRYPTO TIMES、コインチェック(プレスリリース))。同13日には証券会社Siiibo(シーボ)の買収完了、13〜14日にはWeb3カンファレンス「WebX2026」も控える。
テーマ深掘り:「底入れか、反発一巡か」——デリバティブが映す washout の兆し
6万3,000ドル台での膠着は、単なる小休止なのか、それとも本格的な底打ちの前触れなのか。この問いを読み解く手掛かりとして、いまデリバティブ(金融派生商品)市場の指標に注目が集まっている。
背景を整理すると、ビットコインは6月末に約21カ月ぶり安値となる5万8,000ドル近辺まで下落し、2026年前半を約20%安で終えた。週足では2023年以来となる200週移動平均線割れの水準で引ける場面もあり、長期トレンドの節目を試す展開が続いた(CoinDesk)。そこからの6万ドル台前半への戻りは、「上昇トレンドへの転換」というより「急落の反動」の色合いが濃い。
そのうえで、市場では「投げ売り(washout)が終盤に差しかかっている」との見方が浮上している。デリバティブ運用のARPデジタルのユスフ・ファクロ氏は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物建玉が32カ月ぶりの低水準にあり、限月間の価格構造も2023年初め以来の引き締まりを見せていると指摘。さらに、下落に備える保険料に相当する6カ月物オプションのスキュー(歪み)が過去4番目の高さに達しており、その類例は2022年6月と11月——いずれも相場が大底を打った局面の近くだと述べた。下落保険がこれほど割高になるのは、最悪期がすでに価格に織り込まれつつある兆候だという見立てだ(CoinDesk)。ただし、これはあくまで一専門家の解釈であり、機関投資家の買いが細っていること自体は上値の重さの裏返しでもある。今週見られた株安との「非連動」が定着し、ETFの資金流入が続くかどうかが、反発を「底固め」に変えられるかの分水嶺となる。
識者の見方:需給改善を評価する声と、薄い足場への警戒が交錯
強気派は、ストラテジーの大口売却を吸収したうえで米ETFが2営業日連続の流入に転じた点を、需給改善の初期サインと受け止める。恐怖・強欲指数が「極度の恐怖」から「恐怖」へ改善し、株安局面でビットコインが下げ渋った点も、リスク許容度が徐々に戻りつつある証左だとみる。デリバティブ指標が示す「投げ売りの最終局面」という解釈も、こうした前向きな見方を補強する。
一方で慎重派は、回復の足場がなお薄い点を強調する。CME建玉が32カ月ぶり低水準にあることは機関投資家の関与が細っている裏返しであり、上値では6万5,000〜7万ドルの抵抗帯が依然として重い。加えて、ホルムズ海峡の緊迫による原油高が再燃すれば、年前半に相場を痛めつけた「エネルギー起点のリスクオフ」が戻りかねない。一日二日の資金流入で基調転換を語るのは尚早、というのが慎重派の立場だ。
今後の注目イベント・指標
- 7月8日(水)夜以降:連休明けの米ビットコインETF資金フロー(7月7日分)の確報
- 7月13日(月):メタプラネットによるSiiibo証券の買収完了(予定)、株主優待プログラム利用開始
- 7月13〜14日:東京でWeb3カンファレンス「WebX2026」開催
- 7月14日(火):6月米消費者物価指数(CPI、米東部時間8時30分)
- 7月18日(土):GENIUS法に基づく米ステーブルコイン追加規則の策定期限。発行体による利回り付与を巡る「抜け穴」論議が続く(DL News)
- 7月25日(土):6月米PCE物価指数
- 7月28〜29日:FOMC(政策金利判断は29日)。ケビン・ウォーシュ議長の下での会合
まとめ
7月8日朝のビットコインは、前夜に6万4,400ドルを試したのち6万3,000ドル台へ押し戻され、週間では約6%高を保ったまま膠着している。ストラテジーの2億ドル超の売却を市場が消化し、米ETFが7月6日に2営業日連続で資金を集めた点は、需給の底堅さを示す前向きな材料だ。デリバティブ市場では「投げ売りが終盤にある」との見立ても浮上する。一方で、ホルムズ海峡の船舶攻撃を受けた原油高とアジア株安は、年前半のリスクオフが再燃する火種になりかねない。今夜のETF確報と、来週14日の米CPI、13日に集中する国内材料を見極めつつ、6万5,000〜7万ドルの抵抗帯を出来高を伴って上抜けられるかが、反発を本物にできるかの試金石となる。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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