ビットコイン(BTC)は7万ドルの節目を割り込んだまま6月3日の朝を迎えた。前日の米国時間には一時6万7,000ドル台まで売られ、24時間で暗号資産市場全体の時価総額が約1,100億ドル消失する荒い展開となった。引き金となったのは、破綻した取引所マウントゴックス(Mt.Gox)による大型送金観測と、米現物上場投資信託(ETF)からの資金流出の継続だ。今週は6月5日に米5月雇用統計を控えており、相場は方向感を模索したままリスク回避ムードが続いている。朝の時点で押さえておきたい要点を整理する。
主要マーケット動向:BTC、7万ドル割れが定着
海外データサイトによると、ビットコインは6月2日の米国時間に7万ドルの節目を下回り、一時6万7,468ドルまで下落した。24時間の下落率は約6%に達し、4月以来となる安値水準を付けた(出典: Yahoo Finance/Fortune、Fortune)。日本時間6月3日未明にかけては6万9,000ドル前後まで戻したものの、7万ドルの回復には至っていない。2025年10月に付けた史上最高値(約12万6,200ドル)からは45%超下回る水準だ。
為替が1ドル=159円台後半で推移するなか、日本円換算ではおおむね1,100万円前後にあたる。イーサリアム(ETH)も上値が重く、6月2日に2,003ドルで寄り付いた後、日中は1,921ドル台まで水準を切り下げた(出典: Yahoo Finance/Fortune)。円換算ではおよそ30万円台前半となる。
市場全体では、24時間で時価総額がおよそ1,100億ドル(約4.5%)減少し、6月1日の約2.5兆ドルから6月2日には約2.39兆ドルへ縮小した(出典: Cryptonews.net)。マクロ不安、ETFからの資金流出、大口(ホエール)の動き、レバレッジ清算が重なり、テクニカル面でも節目割れが意識される地合いとなっている。
重要ヘッドライン
Mt.Gox、10,422BTCを移動──10月の返済期限を前に供給懸念
破綻した暗号資産取引所マウントゴックス(Mt.Gox)が6月2日、約10,422BTC(当時の価格でおよそ7億3,900万ドル、日本円で約1,180億円相当)を新規ウォレットへ移動させた。ここ数カ月で最大規模の送金となる。ブロックチェーン分析企業Arkham Intelligenceによると、内訳は取引履歴のない新規アドレスへ10,306BTC、既知のホットウォレットへ116BTCに分かれた(出典: CoinDesk、Bitcoin Magazine)。
Mt.Goxは依然として約34,504BTC(約24億3,000万ドル相当)を保有しており、債権者への弁済期限が10月31日に迫る。約1万9,500人とされる債権者の多くは2014年の破綻前に取得しており、弁済後の売却が需給の重しになるとの警戒が、今回の下落の一因と受け止められている(出典: CoinDesk、Invezz)。なお、過去の同種の送金が必ずしも即時の市場売却につながったわけではない点には留意が必要だ。
Robinhood、WonderFi買収を完了──カナダ暗号資産市場へ本格参入
米ネット証券Robinhood Marketsは6月2日、カナダの暗号資産プラットフォームWonderFi Technologiesの買収完了を発表した。買収総額は約1億8,000万ドル(約2億5,000万カナダドル)で、1株あたり0.36カナダドルの現金対価となる。カナダ投資規制機構(CIRO)の最終承認を経たもので、WonderFi株は6月2日の取引終了をもってトロント証券取引所から上場廃止となる見込みだ(出典: Newsfile(公式リリース)、crypto.news)。
WonderFiは取引所Bitbuyとコインスクエア(Coinsquare)を傘下に持ち、預かり資産は20億カナダドル超。Robinhoodは今回の買収で米国外の入金顧客が100万人を超え、うち約30万人がカナダで獲得した利用者になるという。米企業による暗号資産関連M&Aが続いており、規制が整いつつある北米でのシェア獲得競争が鮮明になっている。
米現物ETF、資金流出が継続──週間で過去3番目の流出規模
ビットコイン現物ETFからの資金流出が止まらない。6月1日終了週の世界の暗号資産投資商品からの純流出はおよそ16.7億ドルに達し、3週連続の流出となった。このうち米国の現物ビットコインETFは週間で約14.2億ドルの流出を記録し、統計上3番目に大きい流出規模となった(出典: Bitcoin Foundation(CoinShares集計を引用)、Phemex Academy)。直近10営業日では流出が約30億ドルに迫り、運用資産残高は1,040億ドルから940億ドル前後へ縮小したとされる。前日に伝えた流出基調が一段と強まった格好で、機関投資家の慎重姿勢が価格の頭を抑えている。
今週最大の焦点は6月5日の米5月雇用統計
今週のマクロイベントの主役は、6月5日(金)午前8時30分(米東部時間)に発表される5月の米雇用統計(Employment Situation)だ(出典: 米労働統計局(BLS))。4月分は非農業部門雇用者数が前月比11.5万人増にとどまっており、労働市場の減速が続くかどうかが注目される(出典: BLS 4月雇用統計)。雇用の弱さは利下げ期待を通じてリスク資産を支える一方、強い数字なら高止まりする金利が暗号資産の重しとなりやすい。6月16〜17日のFOMCを前に、雇用統計の結果が短期的な方向感を左右する。
テーマ深掘り:Mt.Goxの「供給オーバーハング」をどう読むか
今回の下落で改めて意識されたのが、Mt.Goxが抱える約3.45万BTCという「供給オーバーハング(潜在的な売り圧力)」だ。同社は2014年に約85万BTCを失って破綻し、その後の調査で一部を回収。残った資産は破産・民事再生手続きを経て債権者へ弁済される段階にあり、弁済期限は2026年10月31日に設定されている。
ポイントは、ウォレット間の「移動」がそのまま「市場での売却」を意味しないことだ。過去にもMt.Goxは弁済準備のために資金を移動させてきたが、移動の直後に大量売却が観測されたとは限らない。実際、今回の送金でも大半は取引履歴のない新規アドレスへ移されており、現時点で取引所への直接入金は確認されていない(出典: CoinDesk)。
それでも市場が神経質に反応するのは、ETF流出やマクロ不安と悪材料が重なるタイミングだからだ。需給が緩んだ局面では、実需の売りが限定的でも移動の観測自体がセンチメントを冷やす。逆に弁済が秩序立って進み、債権者の多くが長期保有に回れば、オーバーハングは時間とともに解消に向かう。10月の期限に向け、Mt.Gox関連ウォレットの動きと取引所への入出金フローを継続的に確認することが需給を読む鍵となる。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派は、今回の下落をマクロ要因と一時的な需給悪化による調整と捉える。GENIUS法(ステーブルコイン規制法)の実装が各当局で進み、米財務省やOCCが具体的な規則案を相次いで公表するなど、制度面の追い風は続いている(出典: 米財務省、OCC)。長期的な機関投資家の参入や決済インフラ整備という構造的なテーマは崩れていない、との見立てだ。
一方の弱気派は、史上最高値から45%超下落した現状を「上昇トレンドの転換」と警戒する。ETFからの持続的な資金流出は需要そのものの弱さを示し、Mt.Goxや大口の動きが重なれば下値模索が長引きかねない。AIなど他セクターへの資金シフトも逆風だ。両者に共通するのは、6月5日の雇用統計と16〜17日のFOMCという金利を巡るイベントが、当面の方向感を決めるという認識である。
今後の注目イベント・指標
直近で最も重要なのは6月5日(金)の米5月雇用統計だ。続いて6月16〜17日のFOMCで金利見通しが点検される。日次では現物ETFの資金フロー(Farside Investors)とMt.Gox関連ウォレットの動き、国内では金融庁が6月1日に受付を開始した「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」への新規登録動向や、上場企業メタプラネット(保有4万BTC超)のIRが引き続き材料となる。
まとめ
朝の時点でのポイントは三つ。第一に、BTCは7万ドル割れが定着し、市場全体で24時間に約1,100億ドルが消えた。第二に、Mt.Goxの大型送金とETFの資金流出という需給要因が下押し圧力となっている。第三に、今週は6月5日の米雇用統計が当面の最大の焦点だ。供給と金利の両にらみで、慎重に動向を見極めたい局面が続く。
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