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「一円も日本円に換えていないんですよ。それでも税金がかかるって、どういうことですか」
相談の現場でいちばん多く受ける質問です。年末が近づくほど増えます。手元に現金は入っていないのに、税金の計算上は「利益が出た」と扱われる。この感覚のズレが、暗号資産の確定申告でつまずく人をいちばん多く生んでいます。
この記事では国税庁FAQの原文に沿って、「売っていないのに課税される場面」と、逆に「課税されない場面」を整理します。今日(2026年10月22日)のビットコインは8万1,900ドル台、イーサリアムは2,400ドル台。どちらも24時間で2%弱の下げという地味な一日ですが、むしろこういう静かな時期のほうが年末の作業を前倒しするには向いています。
前提:2026年分はまだ「雑所得・総合課税」です
土台の確認から。2026年分の暗号資産の利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。国税庁FAQにも「原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます」と明記されています。給与などと合算して累進税率がかかる総合課税です。
話題の「申告分離課税20%」はまだ始まっていません。適用開始時期は税制改正大綱で「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」以後の譲渡等とされています。その改正法は2026年7月15日に成立、7月23日に公布され、暗号資産関係の施行は公布から1年以内。2027年中に施行されれば、分離課税が適用されるのは2028年分からという段取りです(詳しくは分離課税20%はいつからかを整理した記事に)。
「もう20%になったんでしょう」と思い込んだまま年を越してしまう人が、実際にいます。今年の分は今年のルールで計算する。ここは外せません。
場面1・2:交換と決済は「売った」と同じ扱いになる
国税庁FAQの該当箇所をそのまま引きます。
「保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになります」(Q1-2)
「暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになります」(Q1-3)
短い文ですが、ここに全部入っています。日本円に換えたかどうかは、課税のきっかけではないのです。きっかけは「手放したかどうか」。手放した時点の時価と取得原価の差額が、所得として積み上がっていきます。
- ビットコインでイーサリアムを買った → ビットコインを譲渡したものとして計算
- ビットコインでアルトコインを買い、そのアルトコインでさらに別の銘柄に乗り換えた → 乗り換えのたびに計算
- 暗号資産で決済して買い物をした → 決済のたびに計算
驚かれるのは2番目です。年間で何十回も銘柄を入れ替えた人は、入れ替えた回数ぶんの譲渡が積み上がっています。日本円に出金した履歴がゼロでも、計算上の利益は出ている。これが「売っていないのに課税される」の中身です。
NFTの購入や、暗号資産で手数料を支払った場面にも同じ考え方が及ぶ可能性があります。ただし取引の実態ごとに判断が分かれる余地があり、一律には断定できません。迷うものは内容をそのまま残して税理士に見てもらうのが確実です。
場面3:ステーキング・レンディング・マイニングで受け取ったとき
こちらもFAQの原文が明快です。
「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります」(Q1-7)
受け取った時点で課税対象になり、後で売ればそのときにまた譲渡の計算が発生します。二重課税ではありません。受け取り時の時価が取得価額になるので理屈はつながっています。ただ、記録を残していないと後から再現できないのが厄介なところです。報酬が日に何度も自動で入るサービスだと、件数が数千件に膨らむこともあります。
逆に、課税されない場面もあります
含み益のままなら課税されません。買って持っているだけなら何も起きません。年末時点でいくら評価益が出ていても、個人なら申告の対象外です(法人は期末時価評価の取扱いがあり、別の話になります)。
分裂(ハードフォーク)で新しい暗号資産を受け取ったときも、受け取った時点では所得が生じません。FAQには「その取得時点では所得が生じず、その新たな暗号資産を売却又は使用した時点において所得が生ずることとなります」(Q1-6)とあり、取得価額は0円として扱われます。もらった瞬間ではなく、動かした瞬間に効くタイプです。
自分の口座間の移動も、取引所から自分のウォレットへ送っただけなら譲渡ではありません。ただし送金手数料として暗号資産が差し引かれていると、その分の扱いが論点になり得ます。
計算と記録をどうするか
暗号資産の申告のしんどさは「税率」ではなく「件数」と「取得原価の追跡」にあります。取引所が配布する年間取引報告書は便利ですが、海外取引所やDeFi、ウォレット間の移動が混ざると報告書だけでは完結しません。
計算方法の選び方は総平均法と移動平均法を比較した記事に。どちらを選ぶかで納税額が変わる年もあり、一度選ぶと原則として継続適用です。先に決めておく話です。
件数が多い人は損益計算ツールを使うのが現実的です。相談の場で見てきた限り、手計算が破綻するのは「銘柄の乗り換えが多い人」と「複数の取引所をまたいでいる人」で、年間200〜300件を超えたあたりから苦しくなります。
ただし、ツールを入れれば終わりではありません。自動で取り込めない取引(独自チェーンのDeFi、履歴をダウンロードできなくなった取引所など)は手入力が必要です。取得単価が不明なまま入っているデータを、ツールが勝手に正しくしてくれるわけでもありません。料金は年間取引件数で段階が分かれるので、件数が多い人は無料枠に収まりません。有料期間終了後のデータ保持が別料金になっている場合もあります。ツールは集計を速くする道具で、申告内容の責任を引き受けてはくれない——ここは誤解しないほうがいいところです。
そのうえで実務的に使われているのが損益計算サービスの「クリプタクト」です。対応暗号資産は3万種類を超え、海外取引所やDeFiにも対応しています。提供元はpafin Inc.。無料プランがあるので、まず自分の取引が何件になるかを把握する目的で触ってみて、収まらなければ有料を検討する、という順番が無駄がありません。料金や件数の区分は改定されるため、最終的な条件は公式サイトでご確認ください。
含み益を使いたいとき、売る以外の手はあるか
「売ると課税される。でも現金が必要」という相談は毎年あります。住宅の頭金、事業の運転資金、学費。含み益を抱えたまま現金をつくる方法として、暗号資産を担保に日本円を借りるサービスがあります。
仕組みは単純です。保有するビットコインやイーサリアムを担保に差し入れ、日本円を借りる。売っていないのでその時点では譲渡にあたらず、課税のタイミングは後ろにずれます。相場が戻ったら返済して担保を回収する、という使い方です。
ただ、誰にでも向く手段ではありません。条件を正確に書きます。Fintertech株式会社(大和証券グループ本社80%・クレディセゾン20%の出資、貸金業登録は東京都知事(3)第31772号)が提供する「デジタルアセット担保ローン」は、借入額が500万円以上(上限5億円)、担保掛目はBTC・ETHともに50%、実質年率は4.0%〜8.0%、融資期間は1年で元利一括返済です。遅延損害金は年率15.0%。担保の評価額が一定水準まで下がると追加担保の検討を求める通知が届き、さらに下がれば会社の裁量で担保が処分されます。
つまり1,000万円分のBTCを預けて借りられるのは500万円まで。相場が下がれば追加担保を入れるか、処分を受け入れるかになります。そして肝心なのが税金で、担保を処分された場合はその時点で売却したものとして課税対象になります。「税金を先送りできる」のは処分されなかった場合の話です。下落局面で処分され、しかも納税義務が発生する、という最も痛い形もあり得ます。
この手段が合うのは「返済原資が暗号資産以外にある人」だけだと考えています。返済を相場の回復に頼る設計なら、使わないほうがいい。500万円という下限もあるので対象になる人は限られます。使う前に、担保が処分されたときの税額まで計算しておくこと。
収入金額が300万円を超える人は区分が変わります
見落とされやすい論点です。FAQでは、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存の有無に応じて「事業所得」または「業務に係る雑所得」に区分されるとされています。収入金額なので、利益ではありません。回転が速い人は利益が小さくても300万円を超えることがあります。帳簿の有無で区分が変わる、つまり記録を残しているかどうかが所得区分に直結します。
なお暗号資産の証拠金取引(暗号資産FX)は、FXの差金決済取引と異なり申告分離課税の対象外で、総合課税です(Q12)。株やFXと同じだと思っていた人は、ここで計算が崩れます。
今日やっておくと、年明けが楽になること
まず、今年1月から今日までの取引履歴を、取引所とウォレットごとに全部ダウンロードしておく。取引所が閉鎖したりサービスを終了すると履歴が取れなくなります。待っていて改善する話ではないので、先に手を打つところです。
次に、交換・決済・ステーキング報酬が何件あるかを数える。件数がわかれば、手計算でいけるのかツールが必要なのかが決まります。
そして損失が出ている人は年内の扱いを確認する。2026年分の損失は翌年に繰り越せません。繰越控除は分離課税への移行とセットで創設される予定の仕組みで、今年分には使えません。この点は年内やることリストの記事に、全体像は税金と確定申告の基本をまとめた記事にあります。海外取引所を使っている人は居住地国の届出にも期限があります。
取得価額が追えない場合の扱いや、事業所得として申告できるかどうかは税理士の領域です。FAQを読めば原則はわかりますが、原則に当てはめきれない取引は必ず出てきます。そこは専門家に渡したほうが早いし、安全です。
情報の出典(2026年10月22日確認)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月26日改訂(Q1-2、Q1-3、Q1-6、Q1-7、Q2-2、Q12)
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「暗号資産の取引に係る収入がある場合」
- 国税庁「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度(FAQ)」令和8年3月最終改訂
- PwC Japan「暗号資産に係る2026年金商法等改正法の成立」(2026年7月15日成立)
- BUSINESS LAWYERS「2027年施行 暗号資産に関する金商法・資金決済法改正の概要」(2026年7月23日公布、公布から1年以内に施行)
- Fintertech株式会社「デジタルアセット担保ローン」(借入500万円以上・担保掛目50%・融資期間1年)
- Fintertech株式会社「貸付条件」(実質年率4.0%〜8.0%、遅延損害金年率15.0%)
- クリプタクト 料金プラン(提供元:pafin Inc.)
- CoinMarketCap(2026年10月22日時点のBTC・ETH価格)
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産・金融商品・サービスの取得や売却を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本は保証されません。借入を伴うサービスでは、担保価値の下落により担保が処分され、損失が確定するとともに課税対象となる場合があります。税制および各社のサービス内容・料金は変更されることがあります。記載内容は2026年10月22日時点で確認した情報に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。個別の税務判断については税理士に、投資判断については必要に応じて専門家にご相談のうえ、ご自身の責任でご判断ください。
暗号資産の税金・確定申告ガイド
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