ビットコイン(BTC)は日本時間7月30日朝、6万3,000ドル台後半(1ドル=約163.8円換算で約1,043万円)で新たな取引日を迎えた。前夜、市場が最大の関門としていた米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の据え置きを決定し、直後にBTCは一時6万4,400ドルまで上昇した。ところが、続くケビン・ウォーシュ議長の記者会見が「タカ派」と受け止められると、米長期金利は19年ぶり高水準へ急伸し、ダウ平均は1,100ドルを超える急落に転じた。「金利据え置き=株高・暗号資産高」という素直な反応が、会見を境に暗転した一夜だった。朝の要点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは会見後に伸び悩み、6.3万ドル台へ反落
BTCは7月30日6:00前後(JST)にかけて6万3,000ドル台後半で推移している。前日29日のFOMC声明発表直後は、金利据え置きを好感して6万4,400ドル台まで上昇し、24時間で1%超高となる場面があった(CoinDesk)。しかし、続くウォーシュ議長の記者会見でタカ派的なトーンが意識されると、株式・暗号資産ともに上げ幅を消し、BTCは6万3,500〜6万4,000ドル近辺へ押し戻された(Fortune、crypto.news)。1ドル=約163.8円で換算すると、1BTCは約1,043万円にあたる。
イーサリアム(ETH)は約1,890ドル(約31万円)と24時間でほぼ横ばい圏、リップル(XRP)は約1.06ドルで推移した。暗号資産全体の時価総額はFOMC前で約2兆1,800億ドルと大きな変動はなかったが、投資家心理は依然慎重で、Crypto Fear & Greed Index(恐怖・強欲指数)は35と「恐怖」の領域にとどまる(The Crypto Times)。金利据え置きという「無風」の結果ながら、会見が示した政策の先行き不透明感が、リスク資産全体の重石として残った格好だ。
重要ヘッドライン
FOMCは6会合連続で据え置き、3人が「利上げ」を主張し反対票
FRBは7月29日のFOMCで、政策金利(FF金利誘導目標)を3.50〜3.75%に据え置いた。据え置きは6会合連続となる。声明は「インフレは2%目標に比べ依然高止まりし、一因はエネルギーなど一部部門を押し上げた供給ショックにある」と指摘する一方、「経済活動は堅調に拡大し、生産性の伸びと設備投資は力強い」との認識を示した(CoinDesk)。注目は票決で、9人が据え置きに賛成する一方、3人が0.25%の利上げを主張して反対。反対票はクリーブランド連銀のハマック、ミネアポリス連銀のカシュカリ、ダラス連銀のローガンの3総裁とされる(U.S. News)。市場は事前に据え置き約65%・利上げ約35%を織り込んでおり、通常より「割れた」設定での決定だった。
ウォーシュ議長の会見がタカ派と評価、長期金利は19年ぶり高水準
市場の反応を決定づけたのは、就任後2回目となるウォーシュ議長の記者会見だった。議長は「フォワードガイダンス(先行き指針)を極力示さない」自身の方針を擁護し、「(直近42日で)我々自身は大きく動いていないが、市場が代わりに相当な引き締めを進めた」と発言。名目・実質の両面で金利が上昇したことを「観察している」と述べた(Fortune)。これがインフレ抑制優先の姿勢と受け止められ、30年物米国債利回りは10ベーシスポイント上昇して5.21%と約19年ぶりの高水準に、10年債利回りも4.67%へ上昇した(一方で利上げ観測の後退から2年債利回りは低下)。株式も会見を嫌気し、ダウ平均は1,153ドル(約2.1%)安と2025年4月以来の大幅安、S&P500は1.5%安、ナスダックは1.7%安で引けた(Fortune)。
マイクロソフトは急伸、メタは急落——分かれたハイテク決算
FOMCと同じ29日引け後、マイクロソフトとメタが決算を発表した。マイクロソフトは売上高900億1,000万ドルと予想(876億2,000万ドル)を上回り、クラウド「Azure」が為替影響を除くベースで43%増と予想(約40%)を上回った。年間Azure売上高が初めて1,000億ドルを突破したことも好感され、株価は時間外で約3%上昇した(CNBC)。対照的にメタは1株利益が6.18ドルと予想を1.04ドル下回り、7〜9月期の売上見通しも下限が市場予想割れ。2026年の設備投資計画を1,300億〜1,450億ドルへ引き上げたこともあり、株価は時間外で約10%急落した(Axios)。AI投資の採算を巡る市場の目線は、企業ごとに明暗が分かれている。
ビットコインETFは流出続く、イーサリアムETFには資金流入
米国上場の現物ETFでは明暗が続く。Farside Investorsのデータをまとめた報道によると、現物ビットコインETFは7月下旬の4営業日で約5億2,600万ドルの純流出となり、23日に約2億2,500万ドル、24日に約2億4,000万ドルの流出が目立った(Bitcoin Foundation、The Crypto Times)。一方、現物イーサリアムETFは同じ週に約1億300万ドルの純流入となり、対照的な資金の流れが続く。ブラックロックの「ETHA」が需要を牽引し、BTC対比でのETHの底堅さを支えている。
テーマ深掘り:ウォーシュ流「市場に語らせる」金融政策の危うさ
今回の一夜を読み解く鍵は、ウォーシュ議長の「非フォワードガイダンス」という新しい対話術にある。従来のFRBは金利の先行きや「ドットチャート」を通じて政策の方向性を事前に伝えてきたが、議長はこの慣行をあえて排し、「市場から加工されていない生のメッセージを受け取り、それが我々の責務にとって何を意味するかを自ら判断する」と語る。会見では記者から「いったい何を待っているのか」と問われ、「今日の決定と議論は、私が想像しうる限り最も惰性から遠いものだった。私は『良い家族喧嘩』を求め、実際に得た」と応じ、9月会合の利上げ観測に「縛られない」とも述べた(Fortune)。
問題は、この手法が市場のボラティリティ(変動)を増幅しやすいことだ。指針が乏しいぶん、投資家は一つひとつの発言から意図を読み取ろうとし、金利や株価が大きく振れる。据え置き自体はほぼ想定通りだったのに、会見を境に長期金利は19年ぶり高水準へ跳ね、株式は今年4月以来の急落となった。加えて、声明が「生産性と設備投資は力強い」と記した点にも、生産性の伸びが1〜3月期で年率0.3%にとどまるとして異論が出ている。金利を動かさなくてもコミュニケーションが市場を動かす——暗号資産の投資家にとっても、当面はFRB高官の「言葉」への感応度が高い相場が続きそうだ。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気派は、今回の金利据え置きと利上げの「見送り」を前向きに捉える。モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「利上げは中止されたのではなく、先送りされただけ」としつつ、「9月は依然として利上げのある会合であり、それまでのインフレ指標がすべてを決める」と指摘する(Fortune)。裏を返せば、当面は追加利上げが回避されており、指標次第では緩和期待が再燃する余地も残る。
一方の弱気派は、長期金利の上昇そのものを警戒する。金利のつかないBTCやゴールドは、安全資産である米国債の利回りが上がるほど相対的な魅力が薄れやすい。ウォーシュ議長が年内利下げ観測を事実上封じたことで、「利下げ期待に賭ける取引」は後退を迫られている(The Block)。金利の上振れリスクとハイテク株の変動が重なる限り、暗号資産の上値も重くなりやすいとの見方だ。
今後の注目イベント・指標
当面の焦点は、本日30日(日本時間31日朝)に予定されるアップルとアマゾンの決算だ。AI投資の採算を巡る評価が、リスク資産全体のムードを左右する。米長期金利の水準と、中東情勢を背景とした原油価格の動向も要注意。金融政策では次回FOMCが9月15〜16日に予定され、それまでの米消費者物価指数(CPI)や雇用統計が9月利上げの有無を占う。国内では、金融庁が暗号資産を金融商品取引法の枠組みに位置づけ、インサイダー取引規制や申告分離課税を含む見直しを検討する動きも注視したい(CoinPost)。
まとめ
FOMCは6会合連続の据え置きで無難に通過したが、主役はウォーシュ議長の会見だった。「市場に引き締めを語らせる」という新手法のもと、長期金利は19年ぶり高水準へ跳ね、株式は今年最大級の急落。BTCは決定直後の上昇分を吐き出し、6万3,000ドル台後半へ戻した。ハイテク決算は明暗が分かれ、本日のアップル・アマゾンと9月に向けたインフレ指標が次の試金石となる。当面は金利とFRB高官の発言に神経質な地合いが続きそうだ。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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