主要マーケット動向
ビットコインは8日朝6時台の時点で8万3,105ドル。24時間で2.85%下げ、1週間でも0.71%のマイナスです。7日夕の時点ですでに8万3千ドル台に落ちていたので、水準そのものは大きく動いていません。ただ、中身は少し変わりました。
イーサリアムが2,565ドル、24時間で4.84%安。1週間では4.37%のマイナスで、BTCの0.71%安と並べると下げ足の速さが際立ちます。市場全体の時価総額は2.82兆ドルで24時間3%減。BTCドミナンスは前日の58.95%から59.17%へ上がり、ETHのシェアは11.32%から11.09%へ下がりました。同じリスクオフでも、資金はBTCに寄っている形です。
前夜の米国市場は反落しました。ダウ平均は341.41ドル安の5万1,179.87ドル、ナスダックは61.20ポイント安の2万7,538.69。前日6日にS&P500が7,818.93ポイント(+0.58%)で最高値を更新した直後ですから、ひとまずの一服とも読めます。ドル円は158円09銭で、一時158円40銭まで円安が進みました。WTI原油11月限は88.96ドルと0.54%の小幅安(財経新聞)。
売りの理由は、結局のところ金利でした。9月FOMCの議事要旨が7日に公表され、当局者が全員そろって0.25%の利上げを支持していたことが明らかになっています。終盤は10年債入札が好調で金利の上げが一服し、株の下げ幅も縮みました。原油高とインフレ再燃への警戒というこのところの構図は、まだ解けていません。
デリバティブ側も静かではありません。未決済建玉は4,169億ドルへ24時間で9.37%増え、BTCの清算額は1億7,912万ドル、前日比561%増。レバレッジが入りかけたところを値動きで刈られた、という見慣れた形です。Fear & Greed指数は61で分類上は「Greed」ですが、前日67、1週間前67、1か月前73と、素直に下を向いています。
重要ヘッドライン
- 米イーサリアム現物ETFが10月6日に2億190万ドルの純流出。全額がブラックロックのETHAからで、他の銘柄は動いていません(Farside Investors)。
- 同じ日、ビットコイン現物ETFは1億1,880万ドルの純流入。10月の累計はBTCが3億2,160万ドルのプラス、ETHが3億4,550万ドルのマイナスで、ほぼ正反対の絵になっています(Farside Investors)。
- Europolが量子リスクの報告書を公表。7日付の「Quantum Computing and Cryptocurrencies」は、ブロックチェーン自体よりも公開鍵が露出済みのウォレットが危ういという整理で、全UTXOの移行には最低76日分のブロック容量が必要という試算も引いています(Bitcoin.com News)。
- イーサリアム財団の研究者が「落ち着いた移行」を呼びかけ。Justin Drake氏は同日、ECDSAがAIによる数学の進展で最悪「数年ではなく数か月で」破られうると述べ、公開鍵が未露出のアドレスへ資金を移す準備を促しました(Decrypt)。
- 米政府が押収資産5億6,587万ドル分をCoinbase Primeへ移動。2016年のBitfinexハック由来とされる3,974BTCや、FTX・Alameda関連のUSDTが含まれます。ただし管理替えの可能性もあり、売却を意味するとは限りません(U.Today)。
- Robinhoodが2,500万ドル相当のBTCを自社保有に。同社幹部は「リターンへの賭けではなく、クリプトへのコミットメント」と説明しています。時価1,000億ドル規模の会社にとって0.025%程度の額です(Yahoo Finance)。
テーマ深掘り:ETF資金の二極化は「ETH離れ」の始まりなのか
今朝いちばん気になったのは、価格よりもフローです。10月に入ってからの米国現物ETFの資金の流れを並べると、BTCは1日+1億270万ドル、2日+1億8,990万ドル、5日-8,980万ドル、6日+1億1,880万ドルで累計プラス3億2,160万ドル。対するETHは1日-5,540万ドル、2日-3,740万ドル、5日-5,080万ドル、6日-2億190万ドルで累計マイナス3億4,550万ドル。4営業日すべてで流出という、きれいすぎる片側通行です。
そして6日の2億190万ドルは、全額がETHA(ブラックロック)1本から出ています。ここが評価の分かれ目になります。1銘柄に集中した流出は、大口投資家のリバランスや税・期末の都合で説明がつくことも多い。実際、ETFのフローは1日単位では「需要の減退」より「事務の都合」を映すことがあります。一方で、1日だけなら偶然でも、4日続けてマイナスなら話は別、という見方も当然あります。
残高で見ると、BTC ETFの純資産は1,113億6,000万ドルで前日の1,110億9,000万ドルから微増、1か月前の1,014億3,000万ドルからは1割近く増えています。ETH ETFは146億5,000万ドルで、前日146億4,000万ドル、1週間前146億6,000万ドル、1か月前144億8,000万ドル。つまりETHは減ってはいないけれど、増えてもいない。横ばいの資金に、短期の売買が出入りしているだけ、という姿です。
ここに量子の話が重なったのが、7日という日の面白さでした。Europolの報告書とDrake氏の発言が同じ日に出たことで、「署名方式の移行コストを抱えているのはBTCもETHも同じ」という論点が、久しぶりに前面に出てきました。この話題は夏にも一度盛り上がっていますが、今回は当局の公式文書という形を取っている点が違います。ただ、これが6日のETH流出の理由かというと、時間軸が合いません。因果を結ぶのは無理がある、というのが正直なところです。
IFAとして相談を受けていると、この手のフロー情報にいちばん振り回されるのは、実はポジションの小さい方だと感じます。2億ドルという数字は絶対額としては大きいのですが、ETH ETFの残高146億ドルに対しては1.4%ほど。個人の口座に置き換えれば、100万円のうち1万4,000円が動いた、という話です。1日のフローでBTCとETHの配分を入れ替えるほどの情報量は、そこにはないだろうと考えています。
識者の見方:強気・弱気の両論
強気側の論拠。BTCは30日で4.95%高、ETHも2.99%高で、月次では両方プラスを保っています。BTC ETFの残高は1か月で約100億ドル増え、機関経由の需要の土台は厚くなった。アルトコインシーズン指数も59で、1か月前の41より高い水準。前夜の米国市場は反落しましたが、10年債入札が好調で金利の上昇に歯止めがかかった点を重く見る向きもあります。
弱気側の論拠。Fear & Greedが73→67→61と三段で落ち、未決済建玉が増えるなかで清算額が前日比561%というのは、上に行くための燃料が減りつつある兆候とも読めます。ドル円158円台、長期金利が5%台という環境は、利回りを持たない資産にとって純粋な向かい風。9月FOMCで全員が利上げを支持していたという議事要旨は、「据え置きが本線」という市場の前提をわずかに揺らします。
どちらが正しいかは、正直わかりません。ただ、強気の論拠が「残高」という遅い指標に、弱気の論拠が「フローとセンチメント」という速い指標に寄っているのは、押さえておいて損のない非対称だと思います。
今後の注目イベント・指標
- 10月14日(火):米9月消費者物価指数(CPI)。原油高がコアにどこまで染み出しているかが焦点。
- 10月中旬:米主要銀行の7-9月期決算が始まります。高金利下の与信コストが論点。
- 10月27-28日(火・水):FOMC。直近の市場の織り込みは据え置きが本線ですが、議事要旨を受けて確率は動きやすくなっています。
- 11月3日(火):米中間選挙。暗号資産関連法案の行方にも影響します。トークン化をめぐる制度論も、ここで一度仕切り直しになる可能性があります。
まとめ
今朝の相場は、価格だけ見れば「前日と同じくらい」です。BTCは8万3千ドル台で、1週間前とほぼ変わらない。でも、その水面下でETFの資金はBTCとETHで逆向きに動いていて、ドミナンスもじわりとBTC寄りに傾いています。こういう日は、値動きよりフローのほうが先を語っていることがあります。
とはいえ、4営業日のフローで結論を出すのは早すぎるでしょう。ETHの残高は減っていませんし、1銘柄集中の流出という形も、需要の構造的な劣化とは少し違う可能性があります。来週のCPIと月末のFOMCまで、たぶんこの綱引きは続きます。
相談の現場でよく申し上げるのは、こういう局面では「配分を変える」より「配分を確認する」ほうが先だということです。BTCとETHの比率が、自分で決めたときの想定からどれくらいずれているか。ずれているなら戻す、想定どおりなら何もしない。それだけで、毎朝のフロー情報に心をすり減らす必要はかなり減ります。今日も、どうぞご無理のない範囲で。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証されない商品です。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。価格・指標は2026年10月8日6時台(日本時間)時点のデータに基づいています。


