ビットコイン(BTC)は6月6日(土)のアジア時間に一時6万ドルの大台を割り込み、2024年10月以来の安値に沈んだ。引き金は前日5日に発表された米5月雇用統計の上振れだ。市場が織り込んでいた利下げ期待は一気に後退し、FRBの次の一手として「利上げ」さえ意識される異例の地合いへと反転した。週末で流動性が細るなか売りが加速したが、その後は6万1,000ドル前後まで下げ渋っている。今週は2024年7月以来の急落週となった。夕方時点で押さえておきたい要点を整理する。
主要マーケット動向:BTCは一時6万ドル割れ、週間で約2割安
ビットコインは日本時間6月6日(土)の早朝に節目の6万ドルを下回った。海外メディアの集計では、執筆時点でおおむね6万1,000ドル前後、過去24時間で約2%安、24時間の出来高は700億ドルを超え、週末にもかかわらず3割増と膨らんだ。時価総額は約1.22兆ドルだ(出典: The Crypto Times)。前日5日には米国時間に一時5万9,909ドルまで下押しし、2024年10月以来の安値を記録している(出典: CoinDesk、Bloomberg)。
下落幅は大きく、過去7日間で約17%安、過去30日間では約25%安。2025年10月の史上最高値(約12万6,198ドル)からは5割超下回る水準だ(出典: CoinDesk、The Crypto Times)。1ドル=約160円(6月5日終値ベース、出典: Wise)で換算すると、6万1,000ドルはおよそ976万円にあたる。
イーサリアム(ETH)の下げはさらにきつい。6日には24時間で約9.9%安となり、一時1,589ドルまで売られた(出典: The Crypto Times)。円換算ではおよそ25万円。リップル(XRP)も清算を伴う売りで1.10ドル近辺の数カ月ぶり安値まで下落し(出典: CoinDesk)、ドージコイン(DOGE)やシバイヌ(SHIB)など投機色の強い銘柄は約9%安と全面安となった(出典: CoinDesk)。先物の建玉(OI)は約450億ドルまで縮小し、過度なレバレッジが整理された格好だ(出典: The Crypto Times/Coinglass)。
重要ヘッドライン
米5月雇用統計が大幅上振れ、利下げ観測が消滅
今回の急落の最大の震源は、米東部時間6月5日に発表された5月の米雇用統計だ。非農業部門雇用者数は前月比17万2,000人増と、市場予想(8万5,000人前後)を大きく上回った。失業率は4.3%で横ばい、平均時給は前月比0.3%・前年比3.4%の上昇だった。3月・4月分も上方修正され、労働市場の底堅さが鮮明になった(出典: 米労働省BLS、CNBC、UPI)。
結果を受け、米10年債利回りは一時4.54%台と5月21日以来の高水準まで上昇。年内の利下げ観測は後退し、CMEのFedWatchでは年末までに「利上げ」となる確率が約7割まで高まった(出典: CNBC、CoinDesk)。金利上昇はリスク資産の重しとなり、米ナスダックも5日に2%超下落。暗号資産にも逆風が直撃した。
「最大の買い手」ストラテジーが売り手に転換
センチメント悪化のもう一つの軸が、最大の法人保有者ストラテジー(旧マイクロストラテジー)の動きだ。同社は5月下旬に32BTC(約250万ドル、平均約7万7,135ドル)を売却したと6月1日のフォーム8-Kで開示。2022年12月以来となる初の売却で、優先株の配当原資に充てたものだ。売却量自体は保有84万3,706BTC(約520億ドル相当)のごく一部に過ぎないが、「保有を続ける」とのこれまでの姿勢からの転換と受け止められ、利益確定売りへの警戒を強めた(出典: BeInCrypto、The Crypto Times)。なお国内取引所SBI VCトレードは、今回の急落を同社の32BTC売却に直接結びつけるのは「誤り」だと指摘しており、複合的な要因と見るのが妥当だ(出典: SBI VCトレード)。
米現物ETF、過去最大級の資金流出が継続
米国の現物ビットコインETFからの資金流出も止まらない。5月中旬から13営業日連続で約44億ドルが流出し、6月5日単日でも11本合計で約3億2,569万ドルが流出した。週間では約17億ドルに達し、ブラックロックのIBITが流出をけん引した(出典: The Crypto Times/SoSoValue、MetaMask/Farside集計)。AI関連株への資金シフトと金利上昇が、機関投資家の慎重姿勢の背景にある。
Zcashが脆弱性発覚で一時4割安
プライバシー系のZキャッシュ(ZEC)は、シールド機能の中核「Orchard Pool」に4年間気づかれなかった重大な脆弱性が判明したことで、一時40%超急落した。AIを活用したコード検証で発見されたもので、著名投資家アーサー・ヘイズ氏が保有を手放したと伝わる。その後は300ドル超まで買い戻された(出典: CoinDesk、The Crypto Times)。技術的な信頼性への不安が個別銘柄に波及しやすい地合いを象徴している。
テーマ深堀り:海外ステーブルコインが日本で「電子決済手段」に──6月1日施行
相場が荒れる一方、日本の制度面では前向きな整備が進んでいる。金融庁は「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令」などの改正を公布し、海外で発行されたステーブルコインを国内で取り扱うための基準を明確化した。改正は2026年6月1日に施行されている(出典: CoinPost、Digital Asset Lab)。
ポイントは、海外の法令に基づき発行される信託型ステーブルコインが、一定要件を満たせば資金決済法上の「電子決済手段」として正式に認められる点だ。要件には、発行体が日本と同等の海外ライセンスを持つこと、裏付け資産が適切に管理・監査されていること、さらに発行体を監督する海外当局が金融庁の要請に応じて情報共有・連携できる体制にあることが含まれる(出典: Digital Asset Lab、NADA NEWS(Yahoo!ファイナンス))。
金融庁はさらに、2026年夏の組織再編で「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設する方針も示している(出典: CoinPost)。USDCなど海外大手ステーブルコインの国内流通に道が開けることは、国内の決済・送金インフラや上場企業の事業機会に直結する。価格急落に目を奪われがちだが、日本の読者にとっては制度面の地殻変動こそ中長期で重要な変化と言える。
識者の見方:弱気と強気の綱引き
短期的には慎重な見方が優勢だ。調査会社ZeroStackのダニエル・レイス=ファリア氏は「年初に相場を押し上げた勢いは鈍り、投資家は資金の振り向け先をより選別している。信認が揺らぐと、リスク資産としての暗号資産は素早く反応する」と指摘。センチメント次第では5万4,000ドル近辺の試しもあり得るとの見方を示した(出典: The Crypto Times)。予測市場Kalshiでも、年内に再び10万ドルへ戻る確率は約27%と、5月初旬の約5割から大きく低下している(出典: Yahoo Finance)。
一方で、半減期サイクルやETF・法人保有といった制度的インフラを背景に、5割規模の調整後は反発してきた過去の傾向を重視する声も根強い。中庸シナリオでは6〜12月の平均を6万8,000〜8万1,000ドルとし、マクロ環境が改善すれば10万ドル超を見込む試算もある(出典: The Crypto Times)。下値不安と長期の楽観が綱引きする展開だ。
今後の注目イベント・指標
来週は6月16〜17日のFOMCが最大の焦点。利下げ観測が消え「利上げ」リスクまで浮上しただけに、声明とパウエル議長の発言に市場が神経を尖らせる。前後に発表される米5月CPI(消費者物価指数)も方向感を左右する。ETFの資金フロー、米CLARITY法案の上院動向(成立確率は一部で75%→60%に引き下げ。出典: The Crypto Times)、週明けの国内の暗号資産関連株(メタプラネット等)の値動きも要チェックだ。
まとめ
今日のポイントは三つ。第一に、BTCは雇用統計の上振れを引き金に一時6万ドルを割り、今週は約2割安と2024年7月以来の急落週となった。第二に、ストラテジーの売り転換とETFからの過去最大級の資金流出が重なり、利下げ期待の消滅がリスク回避を加速させた。第三に、日本では海外ステーブルコインの取扱い基準が6月1日に施行され、制度整備は着実に前進している。相場の荒さに振り回されず、来週のFOMCとCPIを見極めたい局面だ。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



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