米国が独立記念日の連休に入り、株式・債券市場が休場となるなか、24時間動き続ける暗号資産市場は薄商いのまま逆行高となった。ビットコイン(BTC)は約2週間ぶりに6万3,000ドルを回復し、6月末につけた21カ月ぶり安値からわずか5営業日でV字回復を遂げた。リップル(XRP)はステーブルコインのUSDCを時価総額で上回り、主要銘柄で5位に浮上している。本稿(朝刊)では、連休の薄商い相場を押し上げたマクロ要因を整理したうえで、量子コンピュータの脅威を巡って業界を二分する「サトシ資産凍結」論争を深掘りする。
主要マーケット動向:BTCが6万3千ドル回復、5営業日でV字
暗号資産メディアCoinDeskによると、ビットコインは7月4日の米東部時間午前(日本時間5日未明)に6万3,000ドルを上抜け、前日比約1.4%高・週間で約3.6%高となった。約2週間ぶりの高値で、6月末の急落分をほぼ取り戻した格好だ。同時点のBTC建て気配値は6万3,076ドル前後(CoinDesk)。国内円建てでは、1ドル=約161円(Wise)で換算しておおむね1,000万円台前半で推移している。
上昇はアルトコインがけん引した。イーサリアム(ETH)は前日比約3.2%高の1,793ドル前後で、7日間では約11.5%高。ソラナ(SOL)は82.5ドル近辺で週間約13.2%高、ドージコイン(DOGE)も約2.6%高となった。とりわけ目立つのがXRPで、前日比約5.3%高の1.18ドルまで上昇し、週間では約10%高。時価総額は約730億ドルに達し、ステーブルコインのUSDCを抜いて主要銘柄で5位に浮上した(CoinDesk)。ただし時価総額ランキングは価格変動で入れ替わりやすく、その後は6位前後で拮抗している(CoinMarketCap)。
上昇の背景にはマクロ環境の好転がある。7月2日発表の6月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比5万7,000人増と市場予想の半分程度にとどまり、コロナ後の回復局面で最も弱い伸びとなった(過去分も計7万4,000人下方修正、Moneywise)。ケビン・ウォーシュ議長率いる米連邦準備制度理事会(FRB)は6月会合で政策金利を3.50〜3.75%に据え置いたが、議長がその後「インフレのリスクは低下した」と述べたことで追加利上げ観測が後退。これが弱気筋の踏み上げ(ショート・スクイーズ)を誘発し、BTCは6万ドル割れから5営業日で6万3,000ドル台へ切り上がった(CoinDesk)。ただし連休で米国勢不在の薄商いは値動きを増幅させやすく、週明けの持続力が試される。
重要ヘッドライン
XRPがUSDCを抜き時価総額5位、オンチェーンは「売られ過ぎ」示唆
XRPの週間上昇率は主要銘柄で最大となり、時価総額でUSDCを上回った。CoinDeskによると、オンチェーンデータではXRP保有者の平均含み損が過去最大水準に達しており、これは相場が「売られ過ぎ(washed-out)」に傾いた局面で逆張り買いが入りやすいサインと受け止められている(CoinDesk)。ただしオンチェーン指標は集計手法によって幅が出るため、単一指標への依存は禁物だ。
メタプラネット、BTC保有4.3万到達 WebX2026にプラチナ協賛
国内では、上場企業メタプラネットが7月2日、ビットコイン保有が4万3,000BTCに到達したと報じられた。第2四半期(4〜6月)だけで2,823BTCを積み増した計算だ。同社は2026年末までに10万BTC、2027年末までに21万BTCの保有を目指す方針を掲げる(CoinPost)。また、7月13〜14日に東京で開催されるWeb3カンファレンス「WebX2026」にプラチナスポンサーとして参画することも決まっており、国内の機運を映す動きとして注目される(CoinPost)。
欧州MiCAが移行期間終了、英国は「国際連結型」の新規則を提示
規制面では、EUの包括的暗号資産規制「MiCA」の経過措置(移行期間)が7月1日に期限を迎えた。完全な認可を得ていない事業者は事業縮小を迫られる(ESMA、Crypto Legal)。一方、英国の金融行為規制機構(FCA)は今週、独自の暗号資産規制の枠組みを公表した。海外取引所が英国内の認可支店を通じて世界の流動性にアクセスできる「適格暗号資産取引プラットフォーム(QCATP)」制度を打ち出し、EUの「囲い込み型」とは対照的な国際連結型のアプローチとして早くも評価を集めている。事業者の申請は2026年9月30日〜2027年2月28日で、新制度は2027年10月25日に義務化される見込みだ(CoinDesk、FCA)。
米ビットコインETF、7月2日に純流入転換も連休でデータ途切れる
米国の現物ビットコインETFは、7月1日の約2億9,600万ドルの純流出から、7月2日には約2億2,350万ドルの純流入へ転換した(フィデリティ〈FBTC〉に約1億6,600万ドル、アーク〈ARKB〉に約9,180万ドル流入、Farside Investors)。ただし7月3日は独立記念日の振替休日で新規データがなく、連休明けに流入基調が定着するかが来週の焦点となる。
テーマ深掘り:量子コンピュータの脅威と「サトシ資産凍結」論争
今週、暗号資産業界で静かに熱を帯びているのが、ビットコインの生みの親「サトシ・ナカモト」が保有するとされる約110万BTC(現在価格で約680億ドル相当)の扱いを巡る論争だ。きっかけは、バイナンス創業者のCZ(チャンポン・ジャオ)氏が先月のポッドキャストで、「量子コンピュータが暗号技術を破る前に、サトシに6〜12カ月の猶予を与え、動きがなければコミュニティの判断でこれらのアドレスを凍結してはどうか」と提案したことだ(CoinDesk)。放置すれば将来、量子計算で秘密鍵が破られ、盗み出された大量のBTCが市場に投げ売りされる恐れがある、というのが背景にある懸念である。
これに対し、業界の重鎮からは賛否が割れている。投資家のマイケル・ターピン氏は「許可不要(パーミッションレス)なシステムに許可の概念を持ち込む、滑りやすい坂道の始まりだ」と反対。過去にSegWit導入まで何年もかかった経緯を挙げ、非中央集権のコミュニティが迅速に合意できるか疑問を呈した。開発者のジェームソン・ロップ氏は「これは『凍結するか否か』の二者択一ではない」とし、量子耐性を持つ暗号方式へ段階的に移行する自らの提案「BIP-361」の重要性を強調する。ビットワイズのマット・ホーガン最高投資責任者(CIO)は、サトシのBTCを法的信託に預けるというニック・カーター氏の案を支持しつつ、「市場はすでにサトシの資産を『永久に凍結されたもの』として織り込んでおり、下手に動かせばリスクの方が大きい」と述べた(CoinDesk)。
この論争は現時点では理論的な段階にとどまるが、日本の読者にとっても示唆に富む。ビットコインの価値の源泉が「誰にも止められない中立性」にある以上、たとえ善意であっても資産を凍結する判断は、その設計思想を揺るがしかねない。通貨としての強靭さと技術的脅威への備えをどう両立させるか——値動きの裏で進むこの議論は、長期の視点で見逃せないテーマだ。
識者の見方:V字回復は本物か、薄商いの蜃気楼か
強気派は、5営業日での急回復を「6月の投げ売りが一巡した証左」とみる。XRPの記録的な含み損や大口保有者による安値圏での積み増しは需給の底入れを示すサインと解釈でき、利上げ観測の後退もリスク資産全般の追い風だ。
一方、慎重派は連休の薄商いが値動きを誇張している可能性を警戒する。CoinDeskは、次の「放物線的」な上昇局面に入るには約1兆ドル規模の新規資金が必要になり得るとの識者の見方を紹介しており、現在の反発が一時的なショートカバー主導にとどまるとの見立ても根強い(CoinDesk)。米インフレが依然として年率4%台で高止まりし、ウォーシュ議長が明確な利下げを約束していない点も上値の重しだ。強弱の綱引きは、週明けの流動性回復を待って初めて答えが出る。
今後の注目イベント・指標
まずは週明けに米国勢が連休から復帰し、薄商いで膨らんだ値動きが持続するかが最初の関門だ。7月中旬に発表予定の6月の米消費者物価指数(CPI)は、ウォーシュ体制下の金融政策を占う最重要指標となる。金融政策では7月28〜29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が控える。国内では、7月13〜14日開催の「WebX2026」に企業・規制当局の動向が集まりそうだ。連休明けのETF資金フロー再開も見逃せない。
まとめ
薄商いの連休相場でBTCは6万3,000ドルを回復し、XRPがUSDCを抜くなどアルト主導の反発となった。原動力は弱い雇用統計と利上げ観測の後退だが、持続力の判断は週明けの流動性回復待ちだ。値動きの裏では、量子時代を見据えた「サトシ資産凍結」論争が、ビットコインの設計思想そのものを問い直している。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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