前夜の急落から一夜明け、暗号資産はアジア時間の取引で下げ渋った。ビットコイン(BTC)は前日に2026年安値となる5万8,000ドル台を付けた後、26日のアジア時間には一時6万ドル台を回復。世界的なAI・半導体株の急落で揺れた株式市場が小反発したことが、リスク資産全体の自律反発を後押しした。一方、米国では暗号資産の包括的な規制法案「CLARITY法」の成立を巡る不透明感が増し、日本では金融庁が暗号資産を金融商品取引法(金商法)の枠組みへ移す制度改革を着々と進めている。本稿(夕刊)では、日中の値動きと国内外の制度・規制動向を中心に整理する。
主要マーケット動向:BTCは6万ドルを挟んで攻防、アジア株反発が下支え
ビットコインは2026年6月25日の米国時間に一時5万8,188ドルまで売られて2024年10月以来の安値を更新した後、26日のアジア時間にかけては買い戻しが入り、6万ドル前後でもみ合った。26日夕方(日本時間18時30分前後、JST)時点の各種マーケットデータでは、1BTC=約5万9,000〜6万0,000ドル台での推移となっている(Yahoo Finance、Fortune)。1ドル=約161円台後半で換算すると約955万〜970万円にあたり、心理的節目の1,000万円は引き続き下回っている。
イーサリアム(ETH)は1,570ドル前後で推移し、前日比では小幅安。主要アルトコインも総じて前日の急落から下げ渋り、リップル(XRP)は1.1ドル台、ソラナ(SOL)やBNBも前夜の安値圏から小幅に持ち直した。暗号資産全体の時価総額は約2.2兆ドル台へとやや回復し、ビットコインの占有率(ドミナンス)は約56%で高止まりしている(CoinGecko、CoinMarketCap)。
今回の自律反発の背景には、株式市場の落ち着きがある。週初から続いていた世界的なAI・半導体株の急落(グローバル・テックセルオフ)が一服し、韓国総合株価指数(KOSPI)は前日の約10%安から3%超反発、サムスン電子は8%超上昇するなど、アジアのハイテク株に買い戻しが入った(CNBC、ロイター/Investing.com)。もっとも、台湾積体電路製造(TSMC)主導の半導体株の反発は続かなかったとの指摘もあり、戻りの持続力には依然として疑問が残る。暗号資産がAI関連株との連動を強めているだけに、ハイテク株の地合いが当面のカギを握りそうだ。
為替は引き続き円安基調で、ドル円は161円台後半で推移。約40年ぶりの高値圏にあり、政府・日銀の為替介入への警戒感がくすぶる。ドル建てで暗号資産が伸び悩んでも、円換算では下値が支えられやすい構図が続いている。
重要ヘッドライン
① 米CLARITY法、成立に暗雲 ポリマーケットの確率は48%へ低下
米国の暗号資産市場の規制枠組みを定める「デジタル資産市場明確化法(CLARITY Act)」の年内成立を巡り、不透明感が強まっている。同法案は5月14日に上院銀行委員会を15対9で通過し、6月1日に上院本会議の議事日程に載ったものの、6月9日の超党派協議が州司法長官の執行権限を巡って物別れに終わるなど、調整が難航している。予測市場ポリマーケットでの2026年内成立確率は約48%と、1カ月前の約74%から大きく低下した(Yahoo Finance、CoinDesk)。議会の夏季休会前に残された審議日程は限られており、戦略家は「年内成立には7月末までの上院通過が必要」と指摘する。
② CoinEx、イラン制裁回避の「ゲートウェイ」疑惑を否定 38億ドル超の取引
ブロックチェーン分析企業TRM Labsは、暗号資産取引所CoinExが過去7年間に制裁対象のイラン関連事業体との間で38億4,000万ドル超の資金フローを仲介していたと指摘した。イラン最大の取引所Nobitexとの取引だけで約27億ドルに上り、60を超えるイラン系プラットフォームと直接的な取引関係があったという。CoinExはこれを否定し、「イランの取引所や政府機関との商業的関係はない」と反論、イラン関連事業からの撤退とジオフェンシング(地域制限)の導入を進めていると説明した(CoinDesk、The Block、TRM Labs)。制裁回避を巡るコンプライアンスリスクは、業界全体の規制強化論を再び後押ししかねない。
③ 米現物ETF、6月の流出が約54億ドル 機関マネーの慎重姿勢続く
米現物ビットコインETFからの資金流出が続いている。6月は週次で最大17億ドル超の流出を記録し、月間の純流出は約54億ドルに達した。5月と6月には上場来で最長クラスの連続流出が相次ぎ、両期間で推計約72億ドルが流出した。背景には、インフレ再加速やFRBの金利据え置き(3.50〜3.75%)、米株高に伴うAI・半導体株への資金シフトがある(bitcoinfoundation.org、Farside Investors)。ただし流出ペースには鈍化の兆しも見え始めており、機関投資家の姿勢が転換するかが今後の焦点となる。
④ 本日、約93億ドルのビットコイン・オプションが満期
デリビット(Deribit)の月末オプションは、毎月最終金曜の協定世界時(UTC)8時、日本時間17時に満期を迎える。本日26日の満期では約93億ドル相当のビットコイン・オプションが期限を迎えた。最大の損失が発生する「マックスペイン」は7万2,000ドルとされ、現値(6万ドル前後)を大きく上回っていたため、満期通過後はヘッジ調整に伴う一時的な値動きの拡大に留意したい(CoinDesk)。
テーマ深掘り:金融庁が進める「金商法移行」と分離課税──日本の制度改革の現在地
海外がマクロと規制の綱引きに揺れるなか、日本では暗号資産を「金融商品」として位置づけ直す制度改革が着実に前進している。夕刊では、この国内制度の論点を整理したい。
起点は2025年12月に金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」がまとめた報告書だ。報告書は、暗号資産の根拠法を現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行し、株式などと並ぶ金融商品として位置づける方向性を示した。これにより、発行者や交換業者には投資家への適切な情報開示が義務づけられ、インサイダー取引規制なども視野に入る(日本経済新聞、金融庁・金融審議会資料)。
税制面でも転機が訪れている。与党は2025年12月にまとめた令和8(2026)年度税制改正大綱で、暗号資産の取引益を給与など他の所得と合算する「総合課税(最高税率約55%)」から、株式と同様の「申告分離課税(税率約20%)」へ移行する方針を明記した。あわせて、損失を翌年以降に繰り越せる「3年間の繰越控除制度」の創設も盛り込まれた。ただし適用開始は「金商法改正の施行日の属する年の翌年1月1日以後」とされ、2026年の通常国会で改正法が成立・施行された場合でも、実際の適用は2028年以降となる見通しだ(CoinDesk Japan、金融庁・税制改正大綱関連資料)。
組織面の備えも進む。金融庁は令和8年度の組織再編で資産運用・保険監督局を新設し、その傘下に「暗号資産・ステーブルコイン課」を置く方針を示した。縦割りだった監督体制を一本化し、現物ETFの解禁要望も含めて制度整備を加速させる狙いがある。日本の投資家にとっては、税負担の大幅な軽減と投資家保護の強化が同時に進む可能性がある一方、施行時期や対象範囲の最終確定にはなお時間を要する点に留意が必要だ。海外発のマクロ・ニュースに目を奪われがちな局面だからこそ、足元で進む国内制度の地殻変動を冷静に追っておきたい。
識者の見方:押し目買いの好機か、一段安の警戒か
強気派は、前夜の急落を長期的な仕込み場とみる。週足の200週移動平均線が歴史的に魅力的な価格帯を示してきたとして、一括ではなく分割で買い増す慎重な戦略を勧めるアナリストもいる。市場構造の変化を重視する声もあり、米CNBCのアナリストは「これは最悪の強気相場であり、最良の弱気相場だ」と評し、ETFを通じた機関投資家の参入で投資家層が厚みを増し、暴落の『深さ』が以前より抑えられていると指摘した(Yahoo Finance)。一方で弱気派は一段安を警戒する。インフレ再燃と金利上昇が続く限りリスク資産には逆風が残り、CLARITY法の停滞という制度面の不透明感も上値を抑えかねない。AI・半導体株の地合いと米金利の動向次第では、再び5万ドル台前半を試す展開も否定できない。強弱両論が交錯するなか、当面はマクロ指標と株式市場の連動が方向性を左右しそうだ。
今後の注目イベント・指標
短期的には、本日満期を迎えた大型オプションの通過後の値動きと、週末にかけてのAI・半導体株の地合いが焦点となる。来週以降は、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)と、それに先立つ6月分の雇用統計・消費者物価指数(CPI)が最大の注目材料だ。インフレ再加速が確認されれば利上げ観測が一段と強まり、暗号資産の重しとなりかねない。米国ではCLARITY法の上院審議の行方、日本では金商法改正案の国会審議入りのタイミングが、それぞれ中長期の地合いを左右する制度イベントとなる。
まとめ
前夜の急落から一夜明け、ビットコインはアジア株の反発に支えられて6万ドル前後まで下げ渋った。ただ、ETF流出の継続、CLARITY法の停滞、AI株との連動といった逆風は残る。日本では金商法移行と分離課税という制度改革が着実に進んでおり、海外マクロと国内制度の両面から目が離せない。日本の投資家は、円安による下支えと残るリスク要因を冷静に見極めたい。
—
*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*



コメント