ビットコイン(BTC)が2週間ぶりの高値となる6万5,500ドル近辺まで上昇した。前週に暗号資産を押し下げたアジアの半導体株が大幅反発し、リスク選好が戻ったためだ。米ビットコイン現物ETFは5営業日連続の資金流入となり、その規模は4月下旬以来の水準に達した。一方、英議会は暗号資産企業の銀行口座問題で調査に着手。国内では株式のトークン化を巡り、日本の立ち位置が問われている。
主要マーケット動向:半導体株の反発がそのまま暗号資産の追い風に
CoinDeskによると、日本時間7月21日18時30分ごろのBTCは約6万5,500ドルまで上昇し、2週間ぶりの高値をつけた。前日比+1%、週間では+5%で、24時間の取引代金は約330億ドル。同時点のCoinDesk Dataでは6万5,153ドル(+0.79%)、時価総額約1兆3,069億ドル。為替は同日午後3時時点で1ドル=162円50銭前後(株探、OANDA)で、1BTCはおよそ1,059万円にあたる。
主要銘柄はそろって堅調だった。イーサリアム(ETH)は1,922ドル(前日比+3%、週間+8%)とBTCを上回る戻りを見せ、円換算では約31.2万円。XRPは1.13ドル(+3%)、ソラナ(SOL)は78ドル(+2%)、BNBは574ドル。ドージコインはほぼ横ばいだった。
値動きの起点は株式市場にあった。MSCIアジア太平洋株指数は4営業日ぶりに反発して2%高、寄与度が大きかったのはサムスン電子とTSMCだ。韓国と台湾の代表指数はそれぞれ約4%上昇し、中国本土のハイテク株指数は政府系機関の買いが入って7%近く急伸。前週金曜に調整局面入りしていた日経平均も3%高となった。前週の暗号資産安を招いた中国AI関連のショックが、いったん買い戻しに転じた格好である。加えてイランが敵対行為の緩和案を仲介国経由で検討していると報じられ、ブレント原油は1%安の1バレル88.58ドル前後へ下押し。地政学プレミアムの後退もリスク資産を支えた。
重要ヘッドライン
米BTC現物ETF、5営業日連続の流入で約7.27億ドル
CoinDeskがSoSoValueのデータとして伝えたところでは、米ビットコイン現物ETFは7月20日に約2億2,700万ドルの純流入となり、5営業日連続のプラスとなった。5日連続の流入は4月下旬以来で、期間合計は約7億2,700万ドル。6月の記録的な流出局面以降では最も持続的な買いにあたる。純資産総額は7月の底となる約750億ドルから約790億ドルへ戻した。イーサリアム現物ETFも同日約3,800万ドルの流入。今朝の当欄では前週分の流入を「規模は限定的」と紹介したが、その後も積み上がった点は更新すべき材料といえる。
英議会、暗号資産企業の「銀行口座締め出し」で調査開始
英国の超党派議員連盟「暗号資産・デジタル資産APPG」が7月21日、銀行が暗号資産事業者の口座開設を拒否したり、関連する送金に制限を課したりしている実態の調査を開始した(CoinDesk)。共同議長は元デジタル経済担当相のヴェイジー卿と労働党のジョサン議員。銀行・決済・フィンテック・暗号資産の各業界から6週間にわたり書面で証拠を募り、制限が比例的か、消費者・競争・イノベーションにどう影響しているかを検証したうえで政府への提言をまとめる。米国で「オペレーション・チョークポイント2.0」と呼ばれてきた論点が、英国でも制度的な検証の対象になった形だ。
ヘッジファンドの米テック株売り、少なくとも10年で最大規模
The Kobeissi Letterがプライムブローカレッジのデータを引用して伝えたところでは、ヘッジファンドは直近8週のうち6週で米情報技術セクターを売り越し、8週間の合計売越額は少なくとも過去10年で最大となった。この結果、市場エクスポージャーに占めるテック比率は2月以来の低水準まで低下している。CoinDeskは、これがセクター間のローテーションではなく資金の「待機」を意味する点に注意を促す。半導体株の反発が今日の追い風になった一方で、その土台となるリスク選好そのものは細っている可能性がある、という指摘である。
トークン化株式の時価総額が過去最高の23億ドルに
Token Terminalのデータとして、トークン化された株式の時価総額が過去最高の23億ドル(1ドル=162.5円換算で約3,738億円)に達したと報じられた。10億ドルを初めて超えたのが2026年3月で、約4カ月でほぼ倍増した計算だ。チェーン別ではイーサリアム34%、BNBチェーン30%、ソラナ23%。発行体別ではOndo Financeが9億5,500万ドルで首位、クラーケンのxStocks、バイナンスのbStocksが続く(Cryptobriefing、TradingView(Cointelegraph))。
テーマ深堀り:株式のトークン化——「制度が整っているがゆえの出遅れ」という逆説
日本経済新聞は、ブロックチェーンで株式をデジタル証券化し即時決済と24時間365日のアクセスを可能にする仕組みづくりが米国で始まったと報じ、日本については不動産や社債のデジタル証券化が先行する一方、株式への展開は投資家保護の論点もあって議論が遅れていると指摘した。前段のトークン化株式23億ドルは、その「先に動いた市場」の規模感である。
押さえておきたいのは、日本の遅れが単なる不作為ではない点だ。日本には証券保管振替機構(ほふり)を中核とする振替制度があり、上場株式の権利移転はすでに電子的に完結している。既存インフラが十分に機能しているからこそ、これをブロックチェーンに載せ替える動機が働きにくい——日経が「既存制度があだに」と表現したのはこの構図を指す。
もっとも、国内でも実装は進んでいる。3メガバンクグループが出資しデジタル資産基盤を手がけるProgmatは、上場株式を24時間・1円単位で取引できるシステムを業界横断で構築し、2026年中の運用開始を目指している(日本経済新聞)。SBIホールディングスは米Ondo Financeと戦略提携し、日本株などの国内資産をトークン化してグローバルに提供する方針を示した。Ondoは前述のとおりトークン化株式の発行体として世界最大手であり、国内市場の外側から需要を取りにいく設計といえる。
制度面の下地も今月動いた。暗号資産の規制根拠を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法が7月15日に参議院本会議で可決・成立している(CoinPost、ビットタイムズ)。インサイダー取引規制や発行時の情報開示義務が導入され、ETF組成や申告分離課税への道筋がつく一方、施行は公布からおおむね1年以内、分離課税の適用は施行日の属する年の翌年1月1日以後とされる。2027年中の施行なら、20%の分離課税が効くのは2028年の取引からという整理だ(coinchoice)。日本の「出遅れ」は、制度整備を先に置いた順序の結果という側面もある。
識者の見方:「安いがフェア」という評価と、細る土台
BTSEの最高執行責任者ジェフ・メイ氏は「現在のビットコインとイーサリアムの価格は、市場に広がるマクロの不確実性を踏まえれば、安いが妥当な水準だ」と述べ、トレーダーが最も注視するのは月末のFOMCであり「据え置きが予想されるが、年後半への示唆をこそ探っている」と指摘した(CoinDesk)。
慎重な見方の根拠は需給の質にある。CoinDeskは、価格が上昇する一方で現物市場の出来高が低調にとどまる点を挙げ、今日の上げは「新規の確信ではなく、戻ってきたリスク選好に持ち上げられた値動き」だと整理した。前述のヘッジファンドのテック株売りも、資金が市場の外へ退避していることを示す。原油高と米国債利回りの上昇はFRBのタカ派姿勢を維持させ、リスク資産の上値を抑える要因として残る。
個別ではXRPに強弱が交錯する。アナリストのアリ・マルティネス氏は対称三角形を上放れれば1.35ドル方向へ約20%の上昇余地があるとする一方、日足では下降チャネル内にとどまり、1.24〜1.28ドルの抵抗を抜けるまでは短期的な試みの域を出ないとされる(CoinDesk)。テクニカル分析は一つの見方にすぎず、想定どおりに推移する保証はない。
今後の注目イベント・指標
今夜(21日):米下院金融サービス委小委がFinCEN監督で公聴会(日本時間23時)。22日(水):英6月CPI、アルファベット・テスラ・インテルの決算。AI関連投資が伸び続けているかが、今月の暗号資産が連動してきた材料の答え合わせになる。23日(木):ECB政策金利(2.4%据え置き予想)、日本6月CPI(コア予想+1.6%)。24日(金):OCCのGENIUS法関連規則コメント期限、米欧7月PMI速報。27日(月):CFTCの24時間取引・BTC無期限先物に関するコメント期限。28〜29日:FOMC。市場が織り込む7月利上げ確率は約15%。
まとめ
今日の上昇は、前週の下落と同じ材料が向きを変えたものだ。アジア半導体株が戻り、原油が緩み、そこにETFの5日連続流入が重なった。ただし現物の出来高は伸びておらず、ヘッジファンドはテック株から資金を引いている。土台は必ずしも厚くない。他方で構造面では、トークン化株式が過去最高の23億ドルに達し、日本でもProgmatが年内稼働を目指すなど実装が近づいている。7月15日に成立した改正金商法と合わせ、価格が方向感を欠く局面でも制度と基盤の側は着実に前へ進んでいる。
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*本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘や特定銘柄の推奨を行うものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。*
主な参照ソース:CoinDesk、CoinDesk Data、日本経済新聞、CoinPost、Cryptobriefing、株探



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