「ビットコインとイーサリアムは一応わかったんですけど、ソラナって結局なんなんでしょう」。先週、40代の会社員の方との面談でこう聞かれました。口座にはBTCとETHが少しずつ。SNSで見かけるSOLが気になるけれど、買う理由も見つからない、という状態です。
このシリーズではビットコイン、イーサリアム、XRPと順に見てきました。今回はソラナです。
タイミングとしては特殊な週末です。10月21日、ソラナは合意形成の仕組みを入れ替えます。「Alpenglow(アルペングロー)」と呼ばれる更新で、開発を主導するAnzaはネットワーク史上最大のアップグレードと位置づけています。
ソラナとは何か──「速くて安い」の中身
ソラナは2018年にAnatoly Yakovenko氏とRaj Gokal氏が立ち上げたプロジェクトで、メインネットの最初のブロックは2020年3月16日に生成されました。合意形成はPoS(プルーフ・オブ・ステーク)です。
設計思想を一言でいえば「全部を1本のチェーンで速く処理する」。イーサリアムが処理をレイヤー2へ外出しして拡張する道を選んだのに対し、ソラナは本体そのものを高速化する方向に振りました。ブロック生成はおよそ400ミリ秒、平均手数料は0.00025ドル前後で、円に直せば1円に届きません。
その代わりバリデータ(ネットワークを維持するコンピュータ)に要求されるスペックは高く、参加できる人の数は絞られます。分散性と速度のトレードオフ。ソラナを評価するうえで避けられない論点です。
10月21日のAlpenglow──確定12.8秒が0.15秒へ
今回の更新で変わるのは「取引がいつ確定するか」です。これまでのソラナはTowerBFTという仕組みで、ブロックが確定(finalized)するまで約12.8秒かかっていました。ブロック自体は0.4秒で出ているのに、取り消されない状態になるまで12秒強。この落差が決済や入金確認に影を落としていました。
Alpenglowはこれを約150ミリ秒、つまり0.15秒に短縮します。公式資料では「TowerBFT比で99%高速化」と書かれています。ただし公式自身が「150msは期待値であり定数ではない」と断っている点は押さえておきたいところです。
第1段階の「Votor」では、バリデータの投票がブロックに入らなくなります。これまで投票はトランザクションとして書き込まれていましたが、今後は直接やりとりされ証明書に集約されます。「confirmed」と「finalized」は同じ状態になり、確認が一段階に。ソラナの代名詞だったProof of History(PoH)はブロック生成の制御から降ります。第2段階の「Rotor」は時期未定です。なお実行層のSVMや手数料の仕組みは変わらず、利用者のウォレット操作や送金手順が変わるわけではありません。
移行リスクはゼロではない
Anzaは10月16日、Agave v4.3.2を全バリデータへの推奨リリースとして案内しました。ただし「推奨」であって必須ではありません。そして処理性能で注目されてきたFiredancerとFrankendancerは移行期間中サポートされず、使っていたバリデータは事前にAgaveベースのビルドへ切り替える必要があります。
切り替えはエポック1064の開始時、日本時間では10月22日の午前0時すぎ。バリデータのコスト構造も変わり、従来の投票手数料(1エポックあたり約1 SOL)が消える代わりに、Validator Admission Ticketとして0.8 SOLが徴収・焼却されます。
testnetとdevnetでは既に稼働しており、無計画な切り替えではありません。それでも準備が整わないバリデータが残れば、短時間の不安定化は起こりえます。「何も起きない」と言い切れる人はいないはずで、私も言えません。この数日だけは送金や大きな取引のタイミングを慎重にする、くらいの構えでいいと思います。
数字で見る2026年10月のソラナ
CoinMarketCapのデータで、日本時間10月18日夕方時点の状況です。SOLは約103.96ドル。24時間で0.85%安、1週間で4.96%安、30日で2.22%安。時価総額は約613億ドルで全体7位、シェアは2.23%です。
目を引くのは長い期間の数字です。1年前比では44.1%のマイナス、3年前比は331.8%のプラス。この落差が銘柄の性格をよく表しています。同時点のBTCは1年前比23.3%安、ETHは37.6%安ですから、下げ局面でより深く掘っている形です。
供給は流通約5億8,944万SOL、総供給約6億3,603万SOL。ビットコインの2,100万枚のような発行上限はありません。地合いもBTCドミナンスが60.16%へ上昇、アルトコインシーズン指数は54で1週間前の62から低下と、先週のまとめで触れたとおり出来高の細い相場が続いています。
米国の現物ETFとステーキング報酬
ソラナは2025年10月に米国で現物ETFが上場し、BitwiseのBSOL、Grayscale、VanEckのVSOL、Fidelityなど複数社が運用しています。SoSoValueの集計を引いた報道では、10月14日時点で総純資産が約16.57億ドル、累計純流入は約15.80億ドル。時価総額比は2.70%です。
この2.70%をどう読むか。BTCのETF純資産は同時期に1,077億ドル規模、BTC時価総額の6%台です。「機関投資家が入ってきた」のは事実ですが、「BTCと同じ土俵に乗った」とまでは言えないと見ています。
特徴的なのは、ステーキング報酬を組み込んだ商品があることです。BSOLは名称どおり保有SOLをステークして報酬を受け取る設計で、BTCのETFには原理的に存在しない要素です。ただし足元のフローは一本調子ではなく、14日もBSOLが約129万ドルの純流出。BTCのETFフローが止まっている時期と重なっています。
発行スケジュールが変わった──SGP-0002の可決
ソラナの発行インフレ率は現在およそ3%台半ばです。Staking Rewardsの集計を引いたCoinPostの記事(10月7日時点)では、インフレ率約3.65%、ステーク比率約69.5%とされています。
その発行スケジュールについて、2026年8月に大きな決定がありました。SIMD-0550、ガバナンス上はSGP-0002「Double Disinflation」と呼ばれる提案の可決です。インフレ率の低下速度を年15%から30%へ倍にするもので、最終到達点は従来どおり1.5%ですが、そこに届くまでが約5.7年から約2.8年へ短縮されます。今後6年間で約1,890万SOL、現行計画での供給量の約2.6%に相当する発行削減。投票は賛成67%、可決に必要な3分の2をわずかに上回る薄氷の通過でした。
保有者には二面性のある話です。希薄化が抑えられるのはプラス。一方で報酬の原資が減るので利回りは下がる方向。なお可決即日に減るわけではなく、SIMD-0550は執筆時点でReview状態です。
障害の歴史と、アプリ側の数字
ソラナを語るとき避けられないのが「よく止まる」という評判です。事実として2021年9月に約17時間、2022年5月に約4時間半、同年10月に約6時間の停止がありました。ただし最後の障害は2024年2月6日で、今日までおよそ2年8カ月止まっていません。どちらも事実です。相談の場では片方だけで決めてしまう方が多いので、両方を並べてお伝えしています。
チェーンの上で動いているものも見ておきます。Blockworksの2026年Q3レポートを引いた報道では、アプリ収益が2億9,910万ドルで前期比48%増、DEX取引量が1,972億ドルで23%増、ステーブルコイン供給も9月時点で170億ドル台の過去最高水準。ただ中身の偏りが気になります。アプリ収益のうちPumpという単一のアプリが約41%を占めており、ここが細ればチェーンの収益も細る。「エコシステムが育っている」で済ませるのは少し雑かもしれません。
国内で買う・ステークする場合の実務
SOLは国内の複数の取引所で円で買えます。bitbank、SBI VCトレード、BITPOINT、OKJ、Coincheck、GMOコインなどが取り扱っており、新規上場が話題になるアルトコインとは違って入手の難易度は低い銘柄です。
ステーキング利率はCoinPostが各社の実績値を集計しています(10月7日更新)。SBI VCトレードが約3.4%(2026年8月実績、報酬の25%が手数料)、GMOコインが約4.0%(7〜9月実績、手数料28%)、OKJがプラン別で2.28〜6.33%、CoinTradeが最大約4.9%程度。ネットワークのネイティブ利回りは約5%なので、取引所経由では手数料分が差し引かれているとわかります。測定期間が社ごとに違うため横並び比較は適切ではなく、申込前に各社の公式サイトでご確認ください。
税金面は注意が必要です。ステーキング報酬は受け取った時点の時価で所得として認識するのが原則の考え方で、売っていないのに課税対象になります。報酬が毎月あるいは毎日入ってくると取得価額の管理が一気に煩雑になるので、総平均法と移動平均法の選択や暗号資産の税金の基本を先に確認しておくことをお勧めします。
強気の見方と弱気の見方
強気側の論点。確定が0.15秒になれば、決済やトークン化資産の受け渡しといった「待てない」用途の現実味が増す。アプリ収益とDEX取引量は前期比2桁の伸び。発行スケジュールの引き締めで希薄化圧力も弱まる。米国にはステーキング付きの現物ETFという、BTCにはない商品がある。
弱気側も同じ重さです。1年前比44%安は、2026年のソラナが市場で評価されてこなかったことを示している。アプリ収益の4割が単一の投機的アプリに依存。発行上限がなく、インフレ率はまだ3%台。ETF純資産は時価総額の2.7%止まり。バリデータの要求スペックが高く分散性ではBTCやETHに劣り、資金はBTCに寄っている。
どちらが正しいか、私にはわかりません。Alpenglowが無事に稼働したとしても、それが価格に効くかは別の話です。技術的な前進が価格に反映されない期間は、暗号資産でも株式でも珍しくありません。
CFPとしてどう見ているか
相談を受ける立場から3点だけ。
第一に、SOLは「BTCの代わり」ではありません。1年で44%下げ、3年で331%上げる資産です。暗号資産に配分する枠の中で、さらにリスクを取りに行く部分に置くもの、という整理が現実的でしょう。BTCやETHを持たずにSOLから始める順番は、私はお勧めしません。
第二に、ステーキング利回りだけを理由に買うのは危険です。年4%の報酬を得ても価格が10%下がれば差し引きでマイナス。しかも報酬には受け取り時点で課税されます。始め方の基本を押さえ、金額を決めてから入ってください。
第三に、今週だけは移行のタイミングを頭に入れておいてください。10月22日午前0時すぎです。大きな送金を予定しているなら前後をずらすだけで心配が減ります。そしていつもの繰り返しですが、失っても生活が変わらない金額に収めること。
情報の出典(2026年10月18日確認)
- Solana公式「Alpenglow」(Votor/Rotor、150msファイナリティ、エポック1064、VAT 0.8 SOL、Firedancer非サポート)solana.com
- Solana Compass「Anza names Agave v4.3.2 the recommended release」(10月16日の推奨リリース案内)solanacompass.com
- Solana Compass「Anza sets Alpenglow mainnet date」(10月21日 約14:50〜15:00 UTC、移行手順)solanacompass.com
- crypto.news「Solana inflation cut clears vote with 67% support」(SIMD-0550/SGP-0002の投票結果)crypto.news
- Solana Developer Forums「SIMD-0411: Proposal for Doubling the Disinflation Rate」forum.solana.com
- CoinPost「仮想通貨ソラナのステーキングで高利率なのは?」(国内各社の利率・手数料、インフレ率3.65%、ステーク比率69.5%/2026年10月7日更新)coinpost.jp
- ChainCatcher(SoSoValue集計)SOL現物ETFの純資産・フロー(10月14日時点)chaincatcher.com
- Blockworks 2026年Q3プロトコルレポートおよびSolana Foundation「9月エコシステム・ラウンドアップ」を引用した報道kucoin.com
- CoinMarketCap(価格・時価総額・供給量、日本時間2026年10月18日18時台時点)coinmarketcap.com
- 障害の履歴・連続稼働記録に関する各種報道およびWikipedia「Solana (blockchain platform)」en.wikipedia.org
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産の購入・売却を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本が保証された商品ではありません。損失の可能性があることをご理解のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。
記載した価格・利回り・制度の内容は確認時点のものであり、その後変更される場合があります。ステーキングの条件や手数料は各社の公式サイトで、税制の取扱いは国税庁の公表資料で最新の情報をご確認ください。個別の税務判断については税理士にご相談ください。
(執筆:あきFP/CFP®認定者・IFA)

