今朝、相談の場で「今日が何の日か知ってますか」と聞かれました。1987年10月19日、ブラックマンデー。あれから39年、しかも今年はたまたま同じ月曜日です。SNSでその話題が増えていたそうで、「また一日で2割落ちることがあるんですか」と。正直わかりません。誰にもわかりません。ただ今日の東京市場の動き方は、こういう不安がどう消化されるかの見本みたいでした。
東京市場:一時1400円超安から、終値は407円安まで戻す
日経平均の終値は64,916円70銭、前営業日比407円59銭安。数字だけなら0.6%ほどの下げですが、日中はまったく平らではありませんでした。
寄り付きから500円超下げ、すぐに下げ幅は4桁へ。一時は1400円超安の63,800円台まで突っ込みました。先週末の米国市場でハイテク株が大きく売られた流れを受け、AI関連の多くが売り気配で始まったためです。それが9時台半ばで売り一巡、そこから戻りに転じます。前場は800円近い下落で終えたものの、後場はじりじり下げ幅を縮め、終盤には一時65,000円を上回る場面もありました。
東証プライムの売買代金は概算6兆7800億円。TOPIXは後場にプラス圏へ浮上し4,067.48、前日比1.48ポイント高で引けました。指数の方向が分かれたのは、売られたのがAI・電機といった値がさハイテクに偏っていたからでしょう。(OANDA証券)
戻りを支えた材料のひとつが中国の統計です。7〜9月期の実質GDPは前年同期比プラス4.5%で4〜6月期の4.3%から加速、小売売上高も前年比1.1%増と予想の0.5%増を上回りました。ナスダック先物は1%超高、韓国KOSPIは0.6%高。原油は先週の上昇分を一部吐き出しています。(CoinDesk)
暗号資産:BTCは8万2千ドル台で粘り、ETHは2,400ドル台に戻す
日本時間18時台のCoinMarketCapの値で、ビットコインは82,799ドル。24時間でプラス0.91%、1週間はマイナス0.79%。24時間のレンジは80,672〜83,035ドルと、8万ドル台の下半分を往復した形です。今朝の時点で8万1千ドル台を試していたのが、アジア時間から欧州時間にかけて持ち直したことになります。
イーサリアムは2,439ドル。24時間はプラス0.72%ですが、1週間でマイナス4.55%、30日でマイナス7.64%。朝に触れた2,365ドルからは戻したものの、BTCとの体力差は埋まっていません。BTCドミナンスは60.20%、1週間前は59.41%。全体の時価総額は2.76兆ドルで1週間マイナス2.35%、Fear & Greed指数は51の「中立」です。1か月前は73の「強欲」でしたから、熱は確実に抜けています。
建玉合計は4,023億ドルで24時間プラス7.48%、永久先物の平均資金調達率はプラス0.005%程度、BTCの24時間清算額は5,236万ドル。下を試して戻った割に、レバレッジの痛みは小さい日でした。
一方で資金フローはまだ冷たいままです。先週(10月12〜16日)の米国現物ビットコインETFは差し引き約2億2,860万ドルの流出。前の週の約6億7,900万ドルからは減りましたが2週連続です。イーサリアムETFは同じ週で約3億2,010万ドルの流出と、金額でBTCを上回りました。(crypto.news) この「価格は粘るのに資金は出ていく」形は先週の夕方の記事でも書きました。
テーマ深掘り:JPモルガンの預金トークンがイーサリアム本体に載った
今日、相場より長く効きそうなニュースが一本出ています。JPモルガンが、ドル建て預金トークン「JPMコイン(JPMD)」をイーサリアムのメインネットに拡張したと発表しました。対象は同行の機関投資家顧客です。(The Block)
JPMDは2025年11月12日に、コインベース系のレイヤー2「Base」上で提供が始まったものです。(J.P. Morgan公式) それが今日、Baseに加えてイーサリアム本体でも動くようになった。同行のブロックチェーン部門Kinexysは選定理由として「オンチェーン流動性とトークン化資産の厚み」を挙げています。累計取引額は4兆ドル超、1日平均で70億ドルとのことです。
押さえておきたいのは、預金トークンとステーブルコインは別物だという点です。ステーブルコインは発行会社が集めた資金を国債などで運用し、1枚1ドルでの償還を約束する仕組み。JPMDは銀行に預けられた預金そのものをチェーン上で動かせるようにしたものです。前者は発行会社の信用とリザーブの質を見る必要がありますが、後者は銀行預金の信用が乗ります。
では個人に何の関係があるのか。すぐには、ほとんどありません。それでも重く見るのは、「銀行の勘定とパブリックチェーンが同じレールで動く」状態が実験ではなく業務になり始めた点です。同行は2025年12月にイーサリアム上で最初のトークン化マネー・マーケット・ファンドを立ち上げ、5月に2本目を出しました。決済の器と運用商品の器が同じチェーンに並び始めている。ソラナの解説記事で触れた決済レイヤーの競争は、業界の内側だけの話ではなくなりました。
日本側でも同じ日に関連する動きが出ました。金融庁の「AI時代のオンチェーン金融フォーラム」第1回(9月30日開催)の議事要旨が公表され、デジタル庁の担当者が、公的給付金の支給にステーブルコインやトークン化預金を使えるか技術的に検討していると述べています。想定は子育て支援や食料品購入のように使途を限定した給付。プログラマビリティ(あらかじめ決めた条件で自動執行される性質)を事務の効率化に使いたい、という趣旨です。時期や規模の話は出ていません。(NADA NEWS)
一方で冷や水になる研究もあります。BISが10月13日に公表した分析では、米国の預金金利が1ベーシスポイント上がると、ドル連動ステーブルコインの10週間の時価総額成長率が、最小二乗法で約15%から約12%へ、操作変数法では約6%まで落ちるという結果でした。低下幅はUSDCが約4.8ポイント、USDTが約1.9ポイント。(解説記事) 預金に利息がつく世界では、無利息のステーブルコインを持つ理由が薄くなる。「必ず右肩上がりに増える」前提で語られがちな分野なので、この数字は覚えておいた方がいいと思います。
相談を受ける立場から避けたいのは「JPモルガンが採用したからETHが上がる」という短絡です。実際、今日のETHは24時間で0.7%ほどしか上がっておらず、1週間では下げています。インフラとしての採用とトークンの投資価値は、評価の時間軸が違います。
今夜から今週:イベントは後半に集まっている
今夜の米国市場はナスダック先物が1%超高で始まる形です。ただ本番は週後半。21日にメタとテスラの決算で、AI投資の負担と売上の伸びのバランスがどう語られるかでリスク資産全体のムードが変わり得ます。同じ21日にEIA石油在庫、22日に新規失業保険申請、23日にS&Pグローバルの10月PMI速報とミシガン大消費者態度指数の確報。同指数の10月速報は46.3で9月の48.1から低下、1年先の期待インフレ率は4.7%です。(crypto.news)
FRBは10月17日から29日までブラックアウト期間で、高官発言は出ません。次回FOMCは10月27〜28日。9月16日の会合で0.25ポイント引き上げて3.75〜4.00%にしたばかりで、声明文は「インフレは引き続き高止まりしている」と書いています。(FRB声明文PDF) 市場は10月は据え置き優勢という見方ですが、年内もう一段という声も残っています。「利下げ待ち」ではなく「まだ上がるかもしれない」局面にいる、という前提は忘れたくないところです。
国内は23日に9月の全国消費者物価指数。生鮮食品を除くコアの市場予想は前年比プラス2.1%で、8月のプラス1.7%から加速する見込みです。9月の東京都区部がプラス2.7%と伸びていたことが根拠。日銀の10月会合への利上げ織り込みはほぼゼロですが、12月までなら約8割と伝えられています。(みんかぶFX) 円金利が上がる方向に動くとき、無利息の資産をどれだけ持つかという問いは、先ほどのBISの研究と同じ構図になります。
相談の現場から
冒頭の「また2割落ちますか」への答えは、「落ちる日はあると思います」です。1987年と違って今はサーキットブレーカーがあり、市場の構造も変わりました。それでも今日の東京市場が示したように、朝の1400円安が夕方には400円安になることもあるし、その逆もあります。
強気の材料はあります。中国の統計は悪くなかった。原油が落ち着けばインフレ懸念は緩む。制度側の採用も進んでいる。弱気の材料も同じだけあります。ETFから2週連続でお金が出ている。FRBはまだ引き締めを否定していない。ETHは30日で7%以上下げている。どちらが正しいかを当てる作業は、筋がよくないと思っています。
IFAとして実務的に効くのは、もっと地味なことです。価格が8万ドルを割った日に眠れたかどうか。買い増したくなったか、売りたくなったか。その反応が、今の保有額が自分に合っているかの一番正直な答えになります。合っていないなら、戻ったところで量を調整する。相場観は要りません。
株を通じてBTCに触る持ち方にも、メタプラネットの回で触れたとおり固有のリスクがあります。MSCIの新ルールで11月の指数見直しから除外される見込みと報じられており、最終リストは11月11日公表です。
税金の話も一つ。暗号資産を売って利益が出れば原則として雑所得です。売買を増やすと翌年の申告の手間と税額が思ったより重くなります。先週のまとめでも書きましたが、相場が静かな時期こそ記録を整える好機だと思います。
情報の出典(2026年10月19日確認)
- 日経平均サマリー(19日)/OANDA証券
- CoinDesk(10月19日)
- J.P. Morgan公式(JPMDのBase提供開始)/The Block(イーサリアム拡張)
- FRB FOMC声明文(9月16日・PDF)
- みんかぶFX(9月全国CPIの予想)/NADA NEWS(金融庁フォーラム議事要旨)/BIS分析の解説記事
- crypto.news/同・今週の米国イベント
- 価格・時価総額・ドミナンス・建玉・清算額:CoinMarketCap(10月19日18時台)
免責事項
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