夕方に「原油が下がったからビットコインが上がったんですね」と聞かれて、少し返事に詰まりました。たしかにそう読める時間帯はありました。ただ今日は、原油が下がった場面でビットコインがほとんど動かず、むしろ米国のテック決算が伝わってから上げ足を速めた、という順番だったように見えます。市場は一日のうちに説明の理屈を取り替えます。後から「原油安だったから」と一本にまとめるのは、たぶん少し雑です。
21日18時台(日本時間)のビットコインは1BTC=8万3,349ドル前後。24時間で2.4%高です。イーサリアムは2,454ドルで3.1%高。今朝の記事で触れた8万2千ドル台から、じりじりと水準を上げてきました。
日中のアジア市場:半導体に戻った買い、後場は伸び悩み
日経平均は終値64,621円24銭、前日比545円82銭高で3日ぶりの反発でした。寄り付きは810円高、一時は1,300円を超える上げで65,000円台を回復しています。ただ後場は伸び悩み、上げ幅の半分以上を削って終わりました。プライム市場では63.2%の銘柄が上昇、33.5%が下落。非鉄金属・銀行・保険が買われ、小売やパルプ・紙は売られています。
効いたのは米国のテック決算でした。スペースXの決算が時間外で8%高、スーパー・マイクロ・コンピューターが16%高と伝わり、AI関連への見直し買いがアジア全体に広がった形です。韓国コスピは3.7%高、台湾加権指数は1.4%高。ナスダック100先物も1%上昇しました。一方で豪州のデータセンター開発企業Nextdcが業績見通しの下方修正で40%安となっており、「AI関連なら何でも」という相場ではないことも示しています。
欧州時間に入って、英国の9月消費者物価指数が前年同月比3.5%と出ました。8月の3.1%から加速し、市場予想の3.4%も上回っています。食品・エネルギーを除くコアも2.8%(8月2.6%、予想2.7%)。イングランド銀行は2026年に一度も利上げしていませんが、11月会合での0.25%引き上げ観測が強まりました。ポンドドルは1.3373近辺でほぼ動かず、素直に通貨高にはなっていません。
暗号資産市場の中身:出来高は戻り、建玉は戻っていない
市場全体の時価総額は2.79兆ドルで24時間2.5%増。ビットコインドミナンスは60.13%で、1週間前の59.82%、1カ月前の58.6%から上昇が続いています。恐怖・強欲指数は53の「中立」。前日51、1週間前50とほぼ横ばいで、1カ月前の79(強欲)からは大きく冷えたままです。
気になるのはデリバティブです。建玉総額は3,990億ドルで24時間では2.9%増えましたが、30日では10.7%減っています。価格は戻っているのに、レバレッジを張った資金は戻りきっていない。資金調達率も平均+0.0060%と、強い買い越しとは言えない水準です。過去24時間のビットコイン清算額は5,423万ドルで、ここ30日の27.5億ドルから見ればごく小さい。派手な踏み上げや投げが起きていない、静かな上昇です。
個別では、ジーキャッシュ(ZEC)が12.3%高の1,267ドルと目立ちました。時価総額順位は9位です。NU7というアップグレードのメインネット発動高が決まり、ブロック生成時間が75秒から25秒へ短縮される見込み、というのが材料でした。手数料の60%を準備金に回して段階的に配分する仕組みも入るとされています。ソラナは106.6ドルで2.6%高、XRPは1.355ドルで4.9%高でした。
テーマ深掘り:原油100ドルと「利上げが残っている世界」でのビットコイン
ここが今日いちばん考えどころだと思っています。
WTI原油は20日のNY終値が100.166ドル。日中は103ドル台まで上げたあと、米国とイランの戦争終結協議をめぐる報道で一時95ドル台まで急落し、また100ドル前後に戻しています。イラン大統領が仲介役のパキスタン側と会談した、という報道が売りのきっかけでした。ただイラン側はホルムズ海峡の通航再開に条件を付けており、協議入りの条件が満たされていない。「合意が近いという報道は誤り」とする情報も出て、為替は巻き戻しました。ドル円は157円83銭まで下げてから158円27銭で引けています。
つまり原油100ドルは、まだ剥がれていません。これが何を意味するか。エネルギー価格の高止まりは、時間差でインフレ指標に乗ってきます。実際、今日の英CPIの上振れも、中東情勢に絡むエネルギーコストが大きな要因だと指摘されています。ブレントは108ドルを超えていました。
そして2026年の米国は、利下げ局面ではありません。FF金利の誘導目標は3.75〜4.00%。9月16日の会合で0.25%引き上げられたあとの水準です。10月15日の記事で米9月CPIコア2.6%と利上げ観測について書きましたが、あの流れがまだ続いています。
ところが昨日、米9月の住宅着工件数が前月比5.2%減、中古住宅販売成約指数が7.3%減と弱く出ました。これで10月会合での追加利上げ観測は20%未満まで後退しています。市場が見ているのは、たぶんこういう構図です。インフレは原油でまだ上を向く、でも実体経済は住宅から息切れしている、だからFRBはここで追加利上げはしにくい——。
この「インフレは残るが利上げはしにくい」という状態は、理屈のうえではビットコインに悪くありません。実質金利が上がりにくいなら、利息を生まない資産の相対的な不利は小さくなります。今日のじりじりした上昇も、その読みの延長として説明はできます。
ただ、正直わかりません。同じ材料は逆にも読めます。原油が高いままインフレが再加速すれば、FRBは景気が悪くても利上げを選ぶ可能性が残ります。そのとき株も債券も暗号資産も同時に売られる、2022年に経験した形に近づきます。実際、ここ1年のビットコインは22.7%安。年初来では8.2%高と、かろうじてプラスを保っている程度です。「インフレヘッジだから買われる」という単純な図式は、この1年の実績では裏付けられていません。
日本側にも、同じ日に一つ出ていました。20日の20年国債入札は応札倍率5.84倍で過去最高、テールは7銭という強い結果でした。報道では落札者の「不明」が8割を超え、年金勢の買いの可能性が指摘されています。長いところに買いが入るのは、金利の上がり方が一服するという読みの表れでもあります。フランスの財政不安を背景に、円や日本国債へ資金が戻った面もあるようです。19日夕の記事で日経平均が1,400円安から戻した話を書きましたが、あの時の不安定さとは別の、もう少し地味な資金の移動が起きている印象です。
相談を受ける立場から言えるのは、ここは「どちらに賭けるか」ではなく「どちらに転んでも耐えられるか」を確認する局面だということです。原油100ドルとインフレ再燃がシナリオとして残っているなら、暗号資産の比率は、1年で22%下げても生活設計が崩れない範囲に収まっているか。そこだけ見ておけば十分だと思います。値動きの説明は後からいくらでも付きます。
今夜の注目点
日本時間の深夜2時に米20年債入札があります。日本の20年債が過去最高の需要を集めた直後なので、長いところの需要が国際的に戻っているのかを確認する意味があります。需要が強ければ金利低下とリスクオンにつながりやすい、という見方が出ています。
ロンドン時間には英中銀とECBの要人発言。今日の英CPI上振れを受けて、11月利上げへの言及があるかどうか。明日朝(日本時間)にはメタ、テスラ、テキサス・インスツルメンツの決算が出ます。スペースXの流れが続けば、ビットコインがレンジ上限を試す材料になり得ます。
暗号資産固有では、ソラナのAlpenglow(Votor)が日本時間23時50分ごろにメインネットで発動予定です。確定時間が12.8秒から150ミリ秒へ短縮される設計変更で、過去のアップグレードと比べても大きい変更です。詳しくはソラナの解説記事にまとめています。発動直後は価格が素直に反応するとは限りません。
そして来週、10月27〜28日にFOMCがあります。先週の週間まとめで触れた通り、ここまでのビットコインは8万1,000〜8万3,000ドルの狭いレンジです。会合前に8万4,000ドルを取り戻せるかが一つの目安だという見方も出ています。もっとも、節目を超えたかどうかで資産配分を変える必要はありません。
なお、ビットコインの下落局面が歴史的な長さに近づいているという指摘もあります。ある調査会社は9月30日時点で弱気局面が359日続いており、2011年以降の過去3サイクルの361日・377日・411日に迫っていると整理しています。短期保有者が持つ割合は16%で、2023年1月以来の低さだとも。売り手の余力が減っているという読みですが、「だから上がる」とまでは言えません。長さが近いことは、終わりの保証ではありません。
情報の出典(2026年10月21日確認)
- CoinMarketCap(BTC・ETH・SOL・XRP・ZEC価格、時価総額、ドミナンス、建玉、資金調達率、清算額、恐怖・強欲指数/21日18時台時点)
- CoinDesk「Bitcoin hovers around $83,000 as AI earnings revive tech, ZEC jumps 11%」(アジア株、スペースX・スーパーマイクロ、ZECのNU7、弱気局面の日数、短期保有者比率)
- 英国統計局(ONS)「Consumer price inflation, UK: September 2026」(英9月CPI)
- FXStreet(英CPIとイングランド銀行11月会合の見方、ブレント水準)
- OANDA証券「WTI原油見通し」2026年10月21日(WTI終値100.166ドル、米イラン協議の状況)
- 楽天ウォレット Daily Report(NADA NEWS掲載)(20年債入札、今夜の米20年債入札、ビッグテック決算、原油とBTCの関係)
- 外為どっとコム マネ育チャンネル「今日のドル円」2026年10月21日(米住宅指標、10月FOMC追加利上げ観測、ドル円水準)
- Bloomberg「20年国債入札、応札倍率は過去最高」
- 財経新聞「日経平均は3日ぶり反発」2026年10月21日
- Solana Compass(Alpenglow発動予定時刻)
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